『!マークじゃ足りない感情』
今はお盆の期間だ。
ご先祖さまや亡くなった家族が帰ってくるとはよく聞く。
よく聞くけれど...
「やっ!また会えたね!」
つい先月亡くなったいとこが
こっちに帰ってくるなんて誰が予想しただろう。
それも俺にしか見えてない。
「いやーお盆って本当に帰って来れるんだね。
なんでかこっちだけど(笑)」
そう言っていとこはまるで生きてるかのように陽気に話す。
こっちは聞きたいことが山ほどあるって言うのに...
「とりあえずお母さんたちに...」
「言っても信じてくれないでしょ(笑)このままでいいよ。」
いとこはそう言って俺の周りをぐるぐると回る。
いやほんとに聞きたいことがあるんだ。
俺のお父さんがいとこのお母さんとデキてたこととか
今も俺の両親がそれについてこっそり喧嘩してることとか...
いとこがこっちに帰ってきたことで
全ての疑問が確信に変わった気がした。
外は入道雲が低い声で唸っている。
もうすぐ嵐が来そうだ。
いとこが嵐に飛ばされないか心配だ。
語り部シルヴァ
『君が見た景色』
君からの手紙を開く。
"これを読んでるということは私は..."
そんな冒頭から始まる手紙。
内容は私が記した場所に向かって欲しいとのこと。
早速出かける準備をする。
玄関を出て、角を曲がって、
いつもの駄菓子でアイスを買って...
そのまま真っ直ぐ、商店街を突き抜けて公園へ。
そこで休憩をして学校の正面の道を通って
3つ目の信号を曲がって...
田んぼに挟まれた
緩やかな曲線を描いた道をふちに沿って歩いく。
その先の十字路を曲がって、横を向けば...
「帰ってきちゃったぞ...?」
手紙を読み直したが間違ってはいない。
次のページがあり読んでみる。
"おかえり。私が君と見た景色。綺麗だったよ。
私との思い出を糧に前に進めますように。"
...帰って食べようとしてたアイスも
ドロドロに熔けてしまった。
君と一緒に食べていたアイスクリーム。
君との時間と同じようにもう元には戻らないだろう。
それでも...君の分まで俺は進まないと。
荷物を降ろしてもう一度アイスを買いに玄関を飛び出した。
語り部シルヴァ
『言葉にならないもの』
気になる人が出来た。
告白しようと校舎裏に来てもらって
告白しようと思ったが言葉が詰まった。
そんな俺を見てその人はクシャっとした笑顔で
友達から始めよと言ってくれた。
その人はクラスのマドンナ...というほどでは無いが
人脈があって気さくなく人と関われる。
こんな恋愛漫画の相手みたいな人を気になった時点で
もう自分の負けな気がする。
さっさと諦めたらいいのにそれを
自分の中にある何かが許してくれない。
その笑顔をずっと見たいとか
二人で遊びに行ったりとか
そういうありきたりな思いの奥深くにある感情は
どうにも表せれない。
モヤモヤ?イライラ?
君ならわかるのかな。
友達と話してる君を見ていると
視線に気付いたのか君は笑顔で手を振ってくれた。
語り部シルヴァ
『真夏の記憶』
いつもの通学路に屋台が並ぶ。
制服姿の友達はみんな私服や浴衣を着ている。
空は屋台の煙が薄く伸ばされ提灯がぼんやりと照らし、
雲が近くまで降りてきているようだ。
カステラ、焼けた鉄板に引かれた油、
虫除けの匂いがどこかしらから匂う気がする。
...昔の夏の思い出。
それだけで早く覚めたい気分だった。
「やっぱり人がいっぱいだよね。」
限りなく再現された声が聞こえて振り向く。
鮮やかな紅色の浴衣を着た君が隣に立っていた。
隣に映える赤い華。
この夢に咲く自分の罪。
語り部シルヴァ
『こぼれたアイスクリーム』
「私...あと一ヶ月の命なんだ。』
唐突に彼女が告白する。
エイプリルフールにしては早いよ!?
とか
しっかりしろ!エアコンとアイスを食べた我々ならまだ...!
とかふざけた方がいい。
なのにいつも軽く弾む口は全く動かない。
おい、彼女が暗い話をしてるんだ。笑わせろ。
笑顔にさせるためにこのムードを...!
いや...無理だ。彼女の真剣な表情を俺には崩せない。
「ねえ、大丈夫?」
彼女の言葉にはっとする。
すごく、ものすごく時間が止まっていたようだった。
さっきまで手に持っていたターコイズグリーンに
茶色が混ざった宝玉はドロドロに溶けて俺の腕から滴る。
「どうやら...アイスにも刺激が強すぎたみたいだ。」
結局、君を困った顔にしか今の俺には出来なかった。
語り部シルヴァ