語り部シルヴァ

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7/31/2025, 10:45:34 AM

「眩しくて』

ギラりと睨む太陽。
光という光を反射する波。
楽しそうな悲鳴が耳を通り抜ける。
友達に誘われて海に来た。
...はずなのにほぼ全員ドタキャンしてしまった。

クラス内の男女三人ずつの予定だったのに
俺と女の子一人まで減ってしまった。
あまり会話したこともなく、
また人数が集まった時にしようと提案したものの、
女の子が「私は行けたら嬉しいなあ」と
少し楽しみな顔を見せてきたので断れず...

そして今に至る。
今は女の子が準備をしてくる間に
場所を取って海を眺めていたところだ。
「お待たせ...」

女の子の声がして振り返る。
普段見ない姿に思わず声が詰まる。
制服で隠れていた部分が露になるのが
これほど衝撃だったとは...

「あの、大丈夫?」
心配してくれているのに申し訳ないな...

「ごめん...眩しすぎて見れない。
...あと水着似合ってる。」

女の子の嬉しそうな「ありがと」が耳元で聞こえた。
これが夏...なんだな。

語り部シルヴァ

7/29/2025, 10:56:13 AM

『タイミング』

朝から急な雨に降られた。
授業に必要な教科書と弁当を忘れた。
そして夕方に...チンピラに絡まれた。

何かと運が悪い。こう...もっとタイミングが合えば...
なんて言ったってあとの祭り。
ボロボロになった体を起こして裏道から出る。
周囲の人間は俺を少し見て声をかけることなく
流れるように去っていく。
当然だ。みんな厄介事を避けたいのだから仕方ない。

痛む体にぎこちない歩き方になってしまう。
帰ったらまた親に心配かけちゃうなあ...

「ね、大丈夫?」
ヨタヨタと歩いていると後ろから声をかけられた。
振り返るとさっきのチンピラと似たような格好の人がいた。
「あぁ...さっきの人のお友達?
悪いけど今日はサンドバッグになれないよ。」

「あー、やっぱり?アイツらなら
俺がボコボコにしてやったよ。
明日からは平和に過ごせるよ。」

じゃーねー。お大事に。と足早に去っていった。
出来たらもっと早くに助けてに来ても良かったのに...
なんて一日運の無かった自分を
慰めながら帰路を再び目指した。

語り部シルヴァ

7/28/2025, 10:54:44 AM

『虹のはじまりを探して』

昔、虹のはじまりにはお宝が眠っていると
どこかで聞いて冒険に出たことがある。
リュックにジュースとお菓子を詰め込んで
友達と一緒にお宝を目指したことがあったっけ。
今じゃただの散歩の距離だけどあの頃は大冒険だった。
学校の通学路を超えて、自分の太ももくらいの
高さの雑草をかき分け、流れる川を一枚の板を使って渡って...

家から遠くなればなるほど不安が募って怖かった。
けどそれ以上に友達と一緒に遠くを歩く。
なんだかどこまでも行けそうな気がした。

結局のところ虹のはじまりには
辿り着けず暗くなる頃に帰った。
お宝は見つけれなかったけど、
あの頃のドキドキとか蝉の声とか
空に映えていた入道雲をよく覚えている。

臭い話、あれがお宝ってことにしている。
あの頃にはもう戻れない。
そんな二度と手に入らないお宝の話。

語り部シルヴァ

7/27/2025, 10:49:50 AM

『オアシス』

「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」
とりあえず目に着いた隅っこのテーブル席に座る。
ソファに体重を預けるとしっかりと受けて止めて少し沈む。
暗すぎず明るすぎない落ち着いた空間は
冷房がしっかりと効いていてさっきまでの
外の猛暑が嘘のようだ。

特に用事も無く外に出るもんじゃなかった。
外に出たいけどやることがなくそこら辺を
ぶらぶらと歩いていると思った以上に遠くまで
歩いてしまい帰り道まで体力が持たない状況のところに
カフェを見つけて避難した。

普段出勤時以外は通ることが無く、こんなところに
カフェがあるなんて知らなかったし仕事帰りは
寄るような時間帯でも無いから気にしてなかったのだろう。
すごい偶然だがその偶然に感謝だ。

せっかく休憩に来たんだからコーヒーでも...
とメニューを開くとコーヒーは全てホットで来るようだ。
それでもコーヒーの気分だったので渋々コーヒーを頼んだ。
少し離れた所で豆をひく音が聞こえてくる。
うるさかったセミの鳴き声が聞こえず
物音ひとつひとつが響くような静けさだ。

眩しい外を窓から眺めているとコーヒーが運ばれてきた。
息を吹きかけ少し冷まして一口。
熱い。...けどこれはこれで喉が潤う。
この熱さが逆に冷房の冷たさを引き立たせてくれる。

なんて穴場を逃していたんだろうか。
まるで砂漠に生えたオアシスのようで、酷く救われた。
これからはメニューを頼む必要も
なくなるかもしれないな。

語り部シルヴァ

7/26/2025, 10:35:10 AM

『涙の跡』


荷物をまとめて帰る準備をする。
表彰式に出る理由もなくなった今
ここにいる必要はあまりない。
あと1回勝てば準準優勝まで行けたのに...
負けてしまった。
帰ったら反省会だな...

メンバーが全員集まったかを確認する。
...キャプテンがいない。
「ちょっと探してきますね。」
試合に訪れたこのアリーナは中が広く
探すのは骨が折れた。
エントランス...いない。
観客席...広い。けど居なさそうだ。
キョロキョロと見回しながら
キャプテンを探しているとトイレから出てきた。

「わっ、やっと見つけましたよ。
...もう全員準備出来てます。
皆さんには伝えておきますので
焦らず荷物をまとめてください。」

キャプテンは「いつもすまないな。」
と急ぎ足で自分の荷物を取りに行った。
部活動で着ているTシャツの一部が少し濡れていた。
背負いすぎなことがあるキャプテンのことだ。
きっとトイレで泣いていたのだろう。

みんなにはあと少しだけ待っててもらおう。

語り部シルヴァ

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