『真昼の夢』
目を覚ますとやけに冷房の効いている教室だった。
移動教室だったのか教室内には誰一人とおらず、
俺は完全にサボり扱いだろう。
だが焦りも後悔も無かった。
別にこのままもう一度寝てやろうとまで思っている。
机が冷房によってひんやりとしている。
机に触れている部分が冷たくて心地よい。
冷たい...外の暑いはずの日差しが教室の冷たさによって
緩和されて暖かく感じる。
うとうとしてきた...このままもう一度...
目を瞑ると意識ごと体が引っ張られるような感覚に
意識は戻される。
目が覚めたのは見慣れたベッド、乾いた喉。
仮眠のはずが思い切り寝てしまったようだ。
エアコンも扇風機も自動運転が切れて外からの熱で
部屋が蒸し暑くなっていた。
「あっづ...」
懐かしいような記憶に無いような夢を見た気がする。
どんな夢かを思い出すよりも今は
重い体を動かして水分補給しなければと冷蔵庫へ向かった。
語り部シルヴァ
『2人だけの。』
"今日は部活早めに終わりそう"
"それじゃあいつもの場所で待ってるね。"
部活が終わり待ち合わせ場所に向かう。
視聴覚室や家庭科室とか
普段授業あまり使わない教室が集まった第2棟。
そこの最上階の視聴覚室前は特に人が来ない。
簡単な秘密基地のようで集まるにはうってつけだ。
四階もあって階段を登るのはすごく大変だけど...
登りきった景色はすごく綺麗で夕焼けの下走る車や
夕日を反射するビルのガラスがキラキラしている。
息を整えてる間に見るには絶景だ。
こんな素敵な景色をふたりじめなんて贅沢な話だろう。
だけど...
「ごめん、待った?」
振り返るとさっきの僕と同じように息が上がった君がいた。
君とふたりじめできるなら悪くない。
僕と君と、2人だけの秘密の場所。
語り部シルヴァ
『夏』
照りつける太陽に焼かれた
アスファルトの上を歩いて三十分ほど。
大人しく電車を使えば良かったと後悔している。
目的地まであと一駅のところを何を思ったか
歩けばいいと考え今に至る。
その一駅がかなり遠く地図アプリで確認してみると、
なんと歩いて50分ほどだった。
先に確認すればよかったと後悔しつつも
足を進めないとこの灼熱地獄から
抜け出せないから歩き続ける。
ここら辺はなぜか自販機が全く見当たらず、
ここまで飲み物の補充はできていない。
唯一所持していた駅を出る前に買った
ペットボトルのコーラを口に運ぶ。
...ぬるい。三十分も日に当てられたらぬるくなってしまうか。
ため息をついて地図アプリでルートを再確認する。
目的地まであと25分。
流れる汗がジリジリと太陽に焼かれる感じがした。
語り部シルヴァ
『隠された真実』
別れた元カノから手紙と一緒に花が来た。
紫色のトゲトゲした花びらにトゲトゲした茎...
花に疎い俺が知る訳もなく付き合ってた頃も
花についてよく喋っているのを聞き流していた。
「なーにそれ〜?」
彼女が俺の肩から顔を出して荷物の中身を覗く。
「お別れの手紙と花だよ。後で捨てる。」
頬にキスと頭を撫でて機嫌取りをして彼女を剥がす。
彼女は「重すぎて笑っちゃうね」と
悔しそうに言いながら飲み物を取りに行った。
捨てる前に手紙の内容を見る。
「今までありがとう。あなたのことは忘れない。」
もっと書いてるかと思ったけどこれだけか。
あと花も調べるか...
花の写真を撮って検索にかける。
"アザミ"という花らしい。
全部スッキリしたから手紙も花もゴミ箱に捨てた。
語り部シルヴァ
『風鈴の音』
窓際に吊るした風鈴が風に吹かれる。
少し値段が張ったものの、
なんとなく市販より透明な音に感じる。
つんざくような音でも鈍い音でもない調度良い音。
気が付けば目を閉じて聞いてしまうくらいには
素敵な音だと思う。
この風鈴、些細な風でも綺麗な音が出るから
今日みたいなほんとにそよかぜでも音を出してくれる。
クーラーを止めて扇風機と桶に張った水に
足を突っ込みながら感じる風鈴の音は
日本の夏と言える風情ある音ものなのだろう。
今は太陽が一番照りつける時間だが暑さも
少しはマシになった気がする。
氷が溶けた麦茶をゆっくり飲む。
結露した水がズボンに垂れたが
それすら冷たくて気持ちいいと思う真夏日のお昼時。
語り部シルヴァ