語り部シルヴァ

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5/14/2025, 11:26:04 AM

『酸素』

俺が迫ったときアンタは察してぎゅっと目を瞑ってくれる。

始めたてはまだ恥ずかしいのか強ばる肩が
どんどん力が抜けていくのを見ていると愛らしく感じる。
してる最中に手を握ると強く握り返してくれる。
すればするほど苦しくなってくるはずなのに、
その苦しさが愛と思えるのは俺だけかな。

普段は俺からが多いけど、だからこそアンタから進んで
してくれる時なんか我慢できなくなっちまうのは反省だな...

そんなことを思ってるとアンタがチラチラこちらを見てる。
「...おいで。」
両手を広げると早足でアンタがこっちに来る。
頭を撫でると口元がニヤケてるの隠してるけどバレてるぞ。

あーもう、可愛いなあ。
今日はアンタのペースに合わせれるかな。

語り部シルヴァ

5/13/2025, 10:30:26 AM

『記憶の海』

眠れなくてふと近くの砂浜へ足を運ぶ。
優しい砂の感触とさざなみの音が
深夜の不安な気持ちを和らげる。
片手をそっと海に浸けて数回かき混ぜるように動かす。
砂煙が舞い、落ち着く頃にぼやっと一枚の写真のように
映し出されたのは僕と家族が笑っているワンシーン。

家族の一番の思い出だ。
今は環境が変わったり色々あって
家族の笑顔は全く見なくなった...

そんな時夜中に海で遊んでいると
波が思い出を映し出すことを知ってからは
眠れない時はここで昔の笑顔を見せてもらって
不安を和らげる。

このままいっそ海に潜ってみるのも悪くないかもしれない。
そう考えるも戻って来れなさそうでやめた。
絶対この中は心地いい。
過去の幸せな記憶の僕たちはいつの笑顔だから...

きっと過去に飲まれて戻って来れなくなるだろう。

語り部シルヴァ

5/12/2025, 10:17:52 AM

『ただ君だけ』

君と話すと世界が明るく感じる。
君が笑うと体温が二、三度上がる気がする。
君が他の人と心が痛む。

君に振り回されてばかりだ。
...まぁ、私が勝手に一喜一憂してるだけだけど...
それでも責任取って欲しいくらい。

何回か君を忘れようと色んなことを試してみた。
マッチングアプリだったり恋愛から離れてみたり...
そしたら世界は色を失ったみたいに面白くなくなった。

君が、ただ君だけが私の世界を鮮やかに変えてくれた存在だ。
今日も君を一日中見ていた感想を手紙にして送るね。

語り部シルヴァ

5/11/2025, 10:33:22 AM

『未来への船』

出航の汽笛がまた鳴る。
また誰かの未来が決まったようだ。
ここは未来への行き先を決める港。
夢を見つけた人を見送る場所。

ここを旅立つ人はみんな希望に満ち溢れた顔で船に乗り、
その人を港にいる人たちが声援を送ったり
クラッカーを鳴らしたりなど色んな方法で見送る。

人は"希望の港"なんていつしか呼ぶようになっていった。
それを皮肉だと言う人も一部居た。
やりたいことが見つかっていない、見つけたけど
技量不足で船に乗れなかったなど理由は様々あった。

僕もその一人だ。
やりたいことを小さい頃から探したがここに来るまで
結局見つからなかった。
だから僕はここで受付をして夢を見つけた人を見送っている。
僕の分まで頑張れと勝手に期待しながら...

「...では、夢に向かって頑張ってください。」
笑顔で見送り、少し経った後で船の汽笛が鳴る。
頑張れ。夢を見つけた貴方ならきっと素敵な未来になる。

そう思うとなんだか自分が余計に惨めに感じるだけだった。

語り部シルヴァ

5/10/2025, 10:25:59 AM

『静かなる森へ』

今日の天気は大雨だ。
風も拭いて嵐のような天気。
それなのにここの空間は静かすぎる。

ここは少し暗めの森。
子供たちが度胸試しで夜に来たり幽霊が出ると噂されたり
化け物が住んでると言い伝えがあったり...
少し暗めな雰囲気が外観から溢れてるような森。

思わず雨宿りのために入ってしまったが、すごく静かだ。
走ってきた僕の荒い息だけしか音がない。
雨の音は聞こえるが遠くからしか聞こえない。
僕が濡れているのがおかしいくらいだ。

けもの道をまっすぐ歩くが獣がいる気配がない。
雨粒も空を隠すほどの葉が受け止め地面が乾いているほどに...

静かで不気味だ...
雨が止んだらさっさと帰ろう。
少し大きめの木にどかっと座り込み息を整える。
静かで恐怖を覚えるくらいの空間なはずなのに、
遠くから聞こえる雨音がどこか安心感を与えてくれる。

...当分雨が止まないで欲しいなと思う自分がいた。

語り部シルヴァ

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