語り部シルヴァ

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5/9/2025, 11:01:40 AM

『夢を描け』

「んー...」
紙と睨み合いをしてどれだけ経っただろうか。
腕を組み続けて疲れているのに
気が付かなかったほど時間が過ぎていた。

進路希望調査。
誰もが一度はつまづくところだろう。
第一希望から第三希望まであるが...
どれが一番とかじゃなくてそもそも
どこへ行きたいかすら決まっていない。
それなのに進路希望を聞かれても答えれるわけがない。

これを渡された時の先生の言葉を思い出した。
「夢は自由に描けます。
好きなことが思わぬ進路になったり...」
残念だ。僕の夢のキャンパスは真っ白だ。
ここから筆が進む気がしない。

「考えるのやーめた。」
悩んでても仕方がない...
これについてはまた明日考えるとしよう。

語り部シルヴァ

5/8/2025, 10:41:08 AM

『届かない......』

「えいっ...」
投げたボールは相手の前で三回ほど跳ねて転がっていく。
ダメだ...上手くいかない。
球技は苦手だ...ボールが思った方向へ行かないことが多い。
しかも今日は一番嫌いなソフトボール。
キャッチボールですらこの有様だ。

「ごめーん。届かなかった〜。」
「大丈夫だよ。じゃいくよー」
相手の投げたボールは高く飛び
私が想像しているよりも頭上を行く。
頑張ってボールがグローブに着地するよう調整しても...

「あだっ」
「おーい。大丈夫?」
ボールが頭に着地した。硬くて痛い...

「お節介かもだけどー!もっとボールをよく見てみてー!
あと投げる時はボールと一緒に体を前にして
投げるんじゃなくてボールを腕をメインに
体全体で押すイメージでやってみて!」
遠くから相手の声が聞こえて腕で丸を作り
わかったのジェスチャーをした。
相手が構えたのでアドバイス通りにやってみる。

「投げる時に体を前にしてボールを...えいっ!」

さっきよりも大きく弧を描いて飛ぶ。
そしてゆっくりと落ちていって...
また相手の前で跳ねて転がった。

「いい感じ!ナイスボール!」
届かなかったけど相手がフォローしてくれる。
恥ずかしいような悔しいような感情が込上げる。

あぁ...早く終わって欲しい。
そう思いながらもまた相手からのボールを
キャッチするためにグローブを構えた。

語り部シルヴァ

5/7/2025, 11:48:36 AM

『木漏れ日』

晴れた空に優しい風。
木の葉が風でカサカサと擦れ合う音が妙に落ち着く。
道場の端っこで目を瞑りながら耳に入る情報に集中する。
この時期のご飯を食べたあとの休憩時間はこれをする。

優しい温かさに眠気を誘われ、
仲間たちの楽しげな雰囲気と自然の音を聞くのが好きだ。
そのまま寝てしまうのもよし、
音を聞くために頑張って起きているのもよし。

春は花粉症になってないのもあるがこれができるのが好き。
...そろそろかな。
十分耳からの情報を受けて目を開く。
仲間たちの笑顔や青い空。揺れる木漏れ日。
先に耳だけ情報を入れることであとから
視覚の情報を入れたとき、より綺麗な視界になる。

...気がするだけかもしれないが私はいつもやっている。
ルーティン的なやつだろう。
よし、昼からも頑張ろう。

ゆっくりと立ち上がり大きく伸びをして練習を始めた。

語り部シルヴァ

5/6/2025, 10:31:42 AM

『ラブソング』

野外ライブをしている人を見つけた。
特に急ぎでも無いから足を止めて歌を聞いてみる。
聞いたことも無い曲で調べても出てこなかったから
オリジナルのようだ。

素人目線だがありきたりな歌詞を
淡々と並べているような曲であまり刺さらない...
歌声でカバーしているようで足を止める人たちは
歌声の事ばかり話している。

有名な曲を歌えばそれこそ人気になれそうだ。
このオリジナルにこだわる理由は
歌ってる人にしか分からないだろう。
そう考えるとこの歌もあの人の思いを綴った歌なんだろうか。

応援したくなったので財布から小銭を取り出す。
あまり持ち合わせがないのが申し訳なかったが
頑張れと念を込めて500円玉を投げ込んだ。

語り部シルヴァ

5/5/2025, 10:31:24 AM

『手紙を開くと』

「手紙...?」
仕事帰りにポストを開けると見知らぬ封筒が入っていた。
封筒...の割には厚みがある。
ストーカーからの手紙の線はない...
人気者になれるほど自分はモテない。

「...?」
宛名は...無い。
なのに僕の住所を知っているのなら家族ぐらいだろう。
だが家族なら実家の住所を書くはず...
部屋に戻って封筒を適当なところに置いてことを済ませる。
ご飯や家事...お風呂を終わらせたあと、
本でも読もうかと手を伸ばす。

視界の先にさっきの封筒が入る。
...することも無いから開けてみる。

押し込められていたかのように中身から手紙が溢れてくる。
溢れ出した中からやっと一枚目を見つけた。

「差出人は...俺?」
"拝啓 数年前の俺へ"から綴られた文章が
そこから始まっていた。
始まりの挨拶に自分しか知らないことばかり
書かれていたから詐欺の類でも無さそうだった。

ちゃんとした自分からだと信じて
手紙を読み始めた。

語り部シルヴァ

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