語り部シルヴァ

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3/29/2025, 10:44:19 AM

『涙』

夕日が咲いた桜たちを照らしながら沈んでいく。
この時間に散歩するのが日課になった僕たちは
今日も一日楽しかったと振り返りながら
オレンジ色に染まりつつある公園を歩く。

昔は好きじゃなかった夕焼けも
君と一緒だからか好きになってきた。
そんな君となら、
これからもお互い幸せになれるかもしれない。
そう思い今日はちゃんと伝える日だ...。

散歩道の折り返し地点。
少し高い位置にあるここは人通りが少ない。よし...

「あのさ。」
「うん?」
「これからもずっと一緒に散歩したりしてくれないかな?」

そう言いながら結婚指輪を見せる。
君は口を覆い驚いていた。次第に目が滲んでいく。
「そんなに泣く!?」
驚いていると君は目を擦りながら答える。

「違うの、花粉症今来たっぽい。」

語り部シルヴァ

3/28/2025, 11:53:03 AM

『小さな幸せ』

・うっすらと虹が見えていた。
・野良猫が私にニャーと鳴いた。
・買い物したとき会計がピッタリ二千円だった。

そんな些細な良いことがあれば「良いことリスト」に
内容を書いて百円貯金する。

私の密かな楽しみ。
自慢じゃないが私はあんまり運が良くない。
だからこそ些細な幸せを見つけては
それを形にすることにした。

どれだけ運が悪くても、
どれだけ嫌なことがあっても忘れることは難しい。
ならその分見える形で小さな幸せをコツコツと集めていく。
これくらい良いことあったなら明日もきっと...
なんて願いを込める。

もし小さな幸せを見つけたらここに共有しよう。
あなたの小さな幸せにまた百円。

チャリンと幸せが貯まる音。

語り部シルヴァ

3/27/2025, 12:10:08 PM

『春爛漫』

目が覚めて時間を確認する。
...遅刻だ!
慌てて布団を押し退けベッドから飛び降りる。

やけに静かな朝に体を止めて一旦冷静になる。
そうだ。もう学校は終わってしまった。
卒業式も数週間前に終わったはずなのに
未だに生活習慣が身体に刻まれている。

洗面台で顔を洗ってテレビをつける。
見慣れないテレビ番組がやっていたが
面白くなかったからすぐ消した。
ここ最近時間を持て余している。
学校に行くことが無いと思うと
こうも暇になってしまうんだなと思う日々が続いている。

少し考えて外に出る準備をした。
外は眩しいくらいに輝かしく、
春の香りと桜や他の花が綺麗に咲いていた。
「...暖かい。」

暇を求めるくらいに毎日を充実できるよう頑張ろう。
着々と進んでいく季節に置いていかれないように、
僕も1歩ずつ進むことにした。

語り部シルヴァ

3/26/2025, 11:25:38 AM

『七色』

赤...いちごか。
オレンジはオレンジ。まんまだ。
黄色...パイナップル。
緑...グリーンアップルか。
青...ブルーハワイ?なんか珍しいな。
藍...ぶどうだ。

「七色飴」という面白い飴が売られていて
思わず買ってしまった。
後でわかったことだが、
なんと人によって味や形が違うという。
七色に収まらない不思議な飴だ。

他の人とシェアして他にどんな味があるか見てみたいものだ。
...残念ながら友達はいないので
一人でもうひとつ買うことにした。

後日。もうひとつの中身は1つ目と全く同じ中身で、
別の人が買わないと中身が変化しない仕組みに気付き
膝から崩れ落ちた。

きっと僕の体は真っ白になっていただろう。

語り部シルヴァ

3/25/2025, 10:37:27 AM

『記憶』

今年の桜は気持ち早めに咲き始めた。
春の陽気と桜の雨。雲ひとつない青空をピンク色で
染めてしまいそうなほどに花びらは宙を舞う。

君の今にも泣き出してしまいそうな声が聞こえそうだ。
残念ながら桜にはいい思い出がない状態だ。
と言っても僕が余計なことを言ってしまったからだ。

高3の頃、、昼休みに教室を出て桜を見ていた。
その時の恋人が僕の背中を追いかけてきて一緒に桜を見た。
高3だから「この桜を見るのも最後だね。」
と言うと君は
「来年も見ようよ。絶対。」
なんて泣きそうな声で言っていた。

僕らはそっと手を繋いで春の陽気に当たって見ていた。
片方は地面にしかれたピンクのカーペットを、
片方は青空を覆うピンクのカーテンを。

でも、二人の視界にはピンク色なんて
見えていなかっただろう。
どっちもブルーな感情に塗りつぶされていたから...

あの日君が言った約束も守れなかった、
僕の不甲斐ない記憶の一欠片。
その記憶の一欠片が日常で見かけるものを嫌いにしていく。

あぁ、早く春が終わって欲しい。

語り部シルヴァ

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