語り部シルヴァ

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『記憶』

今年の桜は気持ち早めに咲き始めた。
春の陽気と桜の雨。雲ひとつない青空をピンク色で
染めてしまいそうなほどに花びらは宙を舞う。

君の今にも泣き出してしまいそうな声が聞こえそうだ。
残念ながら桜にはいい思い出がない状態だ。
と言っても僕が余計なことを言ってしまったからだ。

高3の頃、、昼休みに教室を出て桜を見ていた。
その時の恋人が僕の背中を追いかけてきて一緒に桜を見た。
高3だから「この桜を見るのも最後だね。」
と言うと君は
「来年も見ようよ。絶対。」
なんて泣きそうな声で言っていた。

僕らはそっと手を繋いで春の陽気に当たって見ていた。
片方は地面にしかれたピンクのカーペットを、
片方は青空を覆うピンクのカーテンを。

でも、二人の視界にはピンク色なんて
見えていなかっただろう。
どっちもブルーな感情に塗りつぶされていたから...

あの日君が言った約束も守れなかった、
僕の不甲斐ない記憶の一欠片。
その記憶の一欠片が日常で見かけるものを嫌いにしていく。

あぁ、早く春が終わって欲しい。

語り部シルヴァ

3/25/2025, 10:37:27 AM