語り部シルヴァ

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2/14/2025, 11:18:27 AM

『ありがとう』

残業続きで目が痛い。
けれどこれを終わらせたらやっと休みだ。
上司が俺の事を気遣ってか明日から三連休。
ゲームしてお出かけして昼寝いっぱいして...
やりたいことをとことんするぞ。

「...よし。」
ファイルを保存したのを確認すると思い切り伸びをする。
終電...はもう無いか。
荷物をまとめて帰ろうとすると、
給湯室から明かり漏れていた。

こんな時間に...?
そっと覗くと先輩がコーヒーを飲んでいた。

「お?お疲れ〜。思った以上に早かったな。」
「お疲れ様です。ってなんでいるんですか?」
「いやいや、君と同じく残業だ。
君より少し先に早く終わったからコーヒーをと...
席が近いのに集中しすぎて気づかなかったのか...」

全然わからなかった。それに独り言を聞かれていると思うと恥ずかしくなってきた。
「にしても先輩、先に帰らなかったんですね。
もうこんな時間なのに...」
「なんだ〜?君はこんな時間に女ひとりを
帰らせるつもりか〜?」
「あー...なるほど。近くまで送りますよ。」

それでいい。と少し満足気に先輩は笑う。
「あ、これお礼の先払いね。」
そんなこと言いながら先輩は何かを投げてくる。

「うわぁっととと...これって...」
「ハッピーバレンタイン。いつも頑張る君に選別だ。」

よし、やることもやったし帰るか〜
と先輩は1人歩き出す。
そんな先輩を見て慌てて背中を追いかける。

ホワイトデーは何十倍にして返そう。
もちろん尊敬と感謝という意味で。
勝手にセルフツッコミを入れつつ
足早な先輩に追いつくために早足になった。

語り部シルヴァ

2/13/2025, 10:53:07 AM

『そっと伝えたい』

優しくノックしてお風呂空いたよ〜とドア越しに伝える。
...返事がない。
もしかしてと思いそっとドアを開ける。

部屋の中の光景は予想通り。
パソコンをつけっぱなしにして机に突っ伏して寝ていた。

「また〜...ねえ〜お風呂空いたよ〜?」
体を揺すっても起きそうにない。
この人はまた疲れ果てて寝落ちしたっぽい。
お仕事頑張ってるのはわかってるけど...
でもそんな頑張り屋さんがこの人のいい所。

ブランケットを持ってきて肩にかける。
「頑張りすぎて無理しないでね。お疲れ様。」
優しく語り掛けて頭を撫でる。大きい犬みたい。
静かにドアを閉めてリビングに戻った。


...ドアの閉まった音聞いて数秒待ってから体を起こす。
寝落ちしてしまったところを
彼女に優しくしてもらったようだ。
撫でられた頭を自分の手で抑える。
あんなふうに自然とイケメンなことできる人が彼女に
なってくれた俺は幸せなんだろうと同時に
あまり心配かけないように気をつけないとと思った。

あと数分したらリビングに降りてお礼を言いに行こう。
今は...口角が上がってるからきっとバレる。

語り部シルヴァ

2/13/2025, 10:36:38 AM

『未来の記憶』

煙が空を覆い夕焼け空は赤く燃える。
土埃が汗で付いて棒になった足を引き摺るように歩く。
どうしてこうなった。まるで別の世界に来たようだ。
国は戦争を始めた。

それぞれの地域が食料や富を求め争い始めた。
外の国からすればツマミが欲しくなるような
エンタメ劇だろう。

銃の知識も戦闘経験も無いまま僕は戦場に駆り出された。
この戦争が避けられないものだったとしたら...
銃の知識や戦闘経験を積んでおくべきだったのか...

近くの死体の山に潜り手榴弾を取り出す。
ピンを抜いて静かに目を閉じた。


お腹周りが爆発の衝撃を受けたような気がして跳ね起きた。
夢...?の割には随分とリアルだったようだ。
テレビでも見て気分を変えようと
リモコンのスイッチを押した。

「えー、最近我が国では争いが絶えなくなってきました。
中では宣戦布告をした地域もあります。
このまま我が国はどうなってしまうのでsy...」

気分がより悪くなりテレビを消す。
最近の国の状況とさっき見た夢...
避けられないものなのかもしれない。
...ネットで色々と調べて準備を始める。

未来から託された夢で描かれた記憶を塗り替えるために。

語り部シルヴァ

2/11/2025, 10:26:37 AM

『ココロ』

「もう...いいよ。さよなら。」
そう言って友達は遠く離れていく。

"また"だ。また僕の選択肢は間違っていたようだ。
僕は人の心がわからない。
人のためにやったことが間違ってばかり。
それでも諦めずに理解しようとしてきたけど、
このままわからずに終わっちゃうのかな...

そんな思いを馳せながら日々を過ごしていると、
ある噂を耳にした。

「北に住む魔女に何かを代償に、
願いを叶えてもらえるらしいぞ。」

心を貰える分の"何か"を持っているのだろうか。
不安になりつつも旅の準備を始める。

体の交換パーツ、サビ防止のオイル...
軋む膝は先にメンテナンスしてもらった方が
いいのかもしれない。

僕の心を手に入れる旅が、今始まった。

語り部シルヴァ

2/10/2025, 10:12:52 AM

『星に願って』

今日は流星群が見れるらしい。
何座とかまでは知らないけど、とにかく流星群が見れる。
そんな些細なことを最近気になる相手に送ってみた。
雑談でもお話出来ると嬉しいから...

今よりもっと仲良くなれたらいいな...
そう思っていると携帯が鳴る。
メッセージの着信音だ。

「ねえ、今ちょうど見れるよ!」


気になる人から流星群が見れると聞いた私は
急い上着を羽織って窓を開ける。
目を凝らしてみるとひとつ、
ふたつとキラキラしたものが緩く弧を描き飛んでいく。

流星群だ!
携帯を取り出し急いでメッセージを送る。

流星群を見たならやることはひとつしかない。
両指を組み、目を瞑る。


((...あの人ともっとなかよくなれますように。))

あの人は何を願ったんだろうか。
後で聞いてみよう。

俺と同じ願いだったら嬉しいな...
私と同じ願いだったら嬉しいな...

語り部シルヴァ

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