語り部シルヴァ

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『ありがとう』

残業続きで目が痛い。
けれどこれを終わらせたらやっと休みだ。
上司が俺の事を気遣ってか明日から三連休。
ゲームしてお出かけして昼寝いっぱいして...
やりたいことをとことんするぞ。

「...よし。」
ファイルを保存したのを確認すると思い切り伸びをする。
終電...はもう無いか。
荷物をまとめて帰ろうとすると、
給湯室から明かり漏れていた。

こんな時間に...?
そっと覗くと先輩がコーヒーを飲んでいた。

「お?お疲れ〜。思った以上に早かったな。」
「お疲れ様です。ってなんでいるんですか?」
「いやいや、君と同じく残業だ。
君より少し先に早く終わったからコーヒーをと...
席が近いのに集中しすぎて気づかなかったのか...」

全然わからなかった。それに独り言を聞かれていると思うと恥ずかしくなってきた。
「にしても先輩、先に帰らなかったんですね。
もうこんな時間なのに...」
「なんだ〜?君はこんな時間に女ひとりを
帰らせるつもりか〜?」
「あー...なるほど。近くまで送りますよ。」

それでいい。と少し満足気に先輩は笑う。
「あ、これお礼の先払いね。」
そんなこと言いながら先輩は何かを投げてくる。

「うわぁっととと...これって...」
「ハッピーバレンタイン。いつも頑張る君に選別だ。」

よし、やることもやったし帰るか〜
と先輩は1人歩き出す。
そんな先輩を見て慌てて背中を追いかける。

ホワイトデーは何十倍にして返そう。
もちろん尊敬と感謝という意味で。
勝手にセルフツッコミを入れつつ
足早な先輩に追いつくために早足になった。

語り部シルヴァ

2/14/2025, 11:18:27 AM