語り部シルヴァ

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2/13/2025, 10:53:07 AM

『そっと伝えたい』

優しくノックしてお風呂空いたよ〜とドア越しに伝える。
...返事がない。
もしかしてと思いそっとドアを開ける。

部屋の中の光景は予想通り。
パソコンをつけっぱなしにして机に突っ伏して寝ていた。

「また〜...ねえ〜お風呂空いたよ〜?」
体を揺すっても起きそうにない。
この人はまた疲れ果てて寝落ちしたっぽい。
お仕事頑張ってるのはわかってるけど...
でもそんな頑張り屋さんがこの人のいい所。

ブランケットを持ってきて肩にかける。
「頑張りすぎて無理しないでね。お疲れ様。」
優しく語り掛けて頭を撫でる。大きい犬みたい。
静かにドアを閉めてリビングに戻った。


...ドアの閉まった音聞いて数秒待ってから体を起こす。
寝落ちしてしまったところを
彼女に優しくしてもらったようだ。
撫でられた頭を自分の手で抑える。
あんなふうに自然とイケメンなことできる人が彼女に
なってくれた俺は幸せなんだろうと同時に
あまり心配かけないように気をつけないとと思った。

あと数分したらリビングに降りてお礼を言いに行こう。
今は...口角が上がってるからきっとバレる。

語り部シルヴァ

2/13/2025, 10:36:38 AM

『未来の記憶』

煙が空を覆い夕焼け空は赤く燃える。
土埃が汗で付いて棒になった足を引き摺るように歩く。
どうしてこうなった。まるで別の世界に来たようだ。
国は戦争を始めた。

それぞれの地域が食料や富を求め争い始めた。
外の国からすればツマミが欲しくなるような
エンタメ劇だろう。

銃の知識も戦闘経験も無いまま僕は戦場に駆り出された。
この戦争が避けられないものだったとしたら...
銃の知識や戦闘経験を積んでおくべきだったのか...

近くの死体の山に潜り手榴弾を取り出す。
ピンを抜いて静かに目を閉じた。


お腹周りが爆発の衝撃を受けたような気がして跳ね起きた。
夢...?の割には随分とリアルだったようだ。
テレビでも見て気分を変えようと
リモコンのスイッチを押した。

「えー、最近我が国では争いが絶えなくなってきました。
中では宣戦布告をした地域もあります。
このまま我が国はどうなってしまうのでsy...」

気分がより悪くなりテレビを消す。
最近の国の状況とさっき見た夢...
避けられないものなのかもしれない。
...ネットで色々と調べて準備を始める。

未来から託された夢で描かれた記憶を塗り替えるために。

語り部シルヴァ

2/11/2025, 10:26:37 AM

『ココロ』

「もう...いいよ。さよなら。」
そう言って友達は遠く離れていく。

"また"だ。また僕の選択肢は間違っていたようだ。
僕は人の心がわからない。
人のためにやったことが間違ってばかり。
それでも諦めずに理解しようとしてきたけど、
このままわからずに終わっちゃうのかな...

そんな思いを馳せながら日々を過ごしていると、
ある噂を耳にした。

「北に住む魔女に何かを代償に、
願いを叶えてもらえるらしいぞ。」

心を貰える分の"何か"を持っているのだろうか。
不安になりつつも旅の準備を始める。

体の交換パーツ、サビ防止のオイル...
軋む膝は先にメンテナンスしてもらった方が
いいのかもしれない。

僕の心を手に入れる旅が、今始まった。

語り部シルヴァ

2/10/2025, 10:12:52 AM

『星に願って』

今日は流星群が見れるらしい。
何座とかまでは知らないけど、とにかく流星群が見れる。
そんな些細なことを最近気になる相手に送ってみた。
雑談でもお話出来ると嬉しいから...

今よりもっと仲良くなれたらいいな...
そう思っていると携帯が鳴る。
メッセージの着信音だ。

「ねえ、今ちょうど見れるよ!」


気になる人から流星群が見れると聞いた私は
急い上着を羽織って窓を開ける。
目を凝らしてみるとひとつ、
ふたつとキラキラしたものが緩く弧を描き飛んでいく。

流星群だ!
携帯を取り出し急いでメッセージを送る。

流星群を見たならやることはひとつしかない。
両指を組み、目を瞑る。


((...あの人ともっとなかよくなれますように。))

あの人は何を願ったんだろうか。
後で聞いてみよう。

俺と同じ願いだったら嬉しいな...
私と同じ願いだったら嬉しいな...

語り部シルヴァ

2/9/2025, 1:37:59 PM

『君の背中』

「ね、ねぇ。もういいよ?」
「ダメです。先輩足を痛めてるんですから
少しでも負担かけないようにしないとです。」
「重いでしょ?それに恥ずかしいよ...」
「先輩軽いので大丈夫ですよ。
恥ずかしいのは...我慢してください。」

数メートル進む度にこのやり取りをしてる気がする。
さっき後輩とご飯に行った帰り道で
つまづいて足を痛めてしまった。
大丈夫と押し切ろうとしたけど、
ぎごちない歩き方を見てか後輩は私をおぶると言い出した。

周囲の目も気になると言ったけど
折れない後輩に負けておぶってもらうことになった。

「そういえば先輩、
今日は靴がいつもよりオシャレでしたね。」
「え?うん、あんまり履きなれてない靴で
来ちゃったからのもあるんだろうなあ...
ちょっとこれから買うのも考えものだなー...」

「確かに先輩いつもスニーカーとかですもんね。
でも今日の靴可愛かったからちょっと残念ですね...」
何気ない会話の中、
この後輩は平気でこういうことを言える。
下心がある訳ではなく、純粋に思ったことを言う人だ。

咄嗟に私をおぶろうとしたり、サラッと褒めてくれる。
...私の気も知らないで。
少し強めにしがみつく。優しい温もりが心地よい。
君の背中ってこんな頼れる大きな背中だったんだ。
私の行動に後輩は少し慌てた様子で
どうしたんですか!?と聞いてくる。

「ちょっと寒いだけ。あともうちょっと頑張ってね。」
後輩は「は、はい!」と答えて進む。

暑いくらいの熱を後輩の背中と私の顔から感じた。

語り部シルヴァ

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