語り部シルヴァ

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『君の背中』

「ね、ねぇ。もういいよ?」
「ダメです。先輩足を痛めてるんですから
少しでも負担かけないようにしないとです。」
「重いでしょ?それに恥ずかしいよ...」
「先輩軽いので大丈夫ですよ。
恥ずかしいのは...我慢してください。」

数メートル進む度にこのやり取りをしてる気がする。
さっき後輩とご飯に行った帰り道で
つまづいて足を痛めてしまった。
大丈夫と押し切ろうとしたけど、
ぎごちない歩き方を見てか後輩は私をおぶると言い出した。

周囲の目も気になると言ったけど
折れない後輩に負けておぶってもらうことになった。

「そういえば先輩、
今日は靴がいつもよりオシャレでしたね。」
「え?うん、あんまり履きなれてない靴で
来ちゃったからのもあるんだろうなあ...
ちょっとこれから買うのも考えものだなー...」

「確かに先輩いつもスニーカーとかですもんね。
でも今日の靴可愛かったからちょっと残念ですね...」
何気ない会話の中、
この後輩は平気でこういうことを言える。
下心がある訳ではなく、純粋に思ったことを言う人だ。

咄嗟に私をおぶろうとしたり、サラッと褒めてくれる。
...私の気も知らないで。
少し強めにしがみつく。優しい温もりが心地よい。
君の背中ってこんな頼れる大きな背中だったんだ。
私の行動に後輩は少し慌てた様子で
どうしたんですか!?と聞いてくる。

「ちょっと寒いだけ。あともうちょっと頑張ってね。」
後輩は「は、はい!」と答えて進む。

暑いくらいの熱を後輩の背中と私の顔から感じた。

語り部シルヴァ

2/9/2025, 1:37:59 PM