語り部シルヴァ

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2/8/2025, 11:13:36 AM

『遠く...』

人として進んでいると実感するのは君が見ていた景色を見た時だ。
人として怒る時、意見を述べる時、別れを切り出す時。
あの日々の中で君が僕にしたことやしてくれたことを僕がする側になるといつもそう感じる。

なぜなら君は僕よりずっとずっと大人だったから。
そりゃもう人生のお手本のようなレベルで...

あの時の君はこんな感情だったんだ とか
あの頃の僕はどれだけ子供だったんだ とか。
フィードバックするには遅すぎる。
それなのに君が現れてはどれだけ大きな存在か、君と僕の人としての差がどれだけあったかを痛感する。

君は大人すぎて僕は子供すぎた。
そりゃずっとは続かないだろうけど、もっと一緒にいれると思ってた。...こういう所だろうな。君と僕の違いは。

君は僕よりも進んで僕は君との過去の為立ち止まって...
いざ進み始めたとしても君との距離はどんどん広がっていく。

だから君が見ていた景色を僕が見た時、いかに君が大きくて遠い存在だったのか、君のような人に近づいているのかと思うのだろう。

君のような人間性を目指しているけど、
その目標がどれだけ遠くにあることか...

数年経った後でも知れたのは成長なんだろうか。

語り部シルヴァ

2/7/2025, 10:59:56 AM

『誰も知らない秘密』

携帯を持ち上げて内カメラで確認しつつ微調整をする。
いい感じに決めてシャッターボタンを押す。
撮れた写真を確認して加工する。
肌白く、色を鮮やかに、周りのものが見えないように
モザイク。

2、3度確認して文章を打ち込む。
「新しい服早速着てみた。可愛い〜」っと。
投稿してものの数秒でいいねが来る。

数分もすればコメントが何個か来る。
「新しい服いいね!」
「可愛い!」「こういう彼女が欲しかった...」
この1枚で何がわかるのかわからないけど、
沢山褒めて貰えると嫌な気分にはならない。

満足して通知をミュートにする。
リアルだとあんまり褒められない容姿が
この世界だとうんざりするほど褒められる。
だからこっちの世界の方が私は好きだ。

何も知らない人達からのいいねやコメントが暖かくて
居心地がいい。
リアルにも、もちろんこの人たちにも本性は絶対に教えない。
この世界は私という私を
誰も知らないからこそ輝ける秘密の世界。

語り部シルヴァ

2/5/2025, 11:29:05 AM

『heart to heart』

「待って!」
文化祭以降どことなく素っ気ないクラスメイトに
いい加減嫌になって俺を置いてどこかへ行こうとする
クラスメイトを呼び止める。

「...何?」
だるそうに振り向くクラスメイトに怖気付くも
言葉を腹から引っ張り出す。

「俺!ちゃんと話がしたいんだよ!」
「やっても無駄だと思うから話をしないんだよ。」

聞く耳を少しでも持ってくれるなら...
「文化祭でのバンド良かったよ!
これからもやっていこうよ!」
「...結局ごっこ遊びみたいなレベルじゃん。
俺はもっと本気でやりたいんだよ。」
「なら!もっと本気でやり込んで楽しみながらやろうよ!」
「本気...?やったことも無いくせに知ったような口を...!」

「あぁそうさ、バンドなんて文化祭前が初めてだった。
けど知ったんだ。お前と演奏したあの曲がずっと
心に残ってる...!お前もそうだったはずだろ?」

その言葉にクラスメイトは顔を伏せる。
確かにあの時完璧とは言えなかったけど
あの時のクラスメイトの顔は満たされていた。
あの顔をもっかい見たいんだ...!

「本気で...俺もやってみたい。連れてってくれよ。
本気の先にある景色を...」

言いたいことは言った。
恐る恐る顔をあげる。

ため息をついて頭をガシガシしながら...
「...無理だと思ったら放っていくからね。」

差し出された手を勢い握り「上等だ」と返す。

語り部シルヴァ

2/4/2025, 11:24:23 AM

『永遠の花束』

「これからも...そばにいてくれませんか?」
そう言いながら結婚指輪と共に不思議な感じの花束を
差し出される。
花束のことについて聞いてみたいけど、
今喋れば鼻声になっちゃうし嬉しいで胸がいっぱいだ。

「こちらこそよろしくお願いします...!」

12本の青いバラの花束。
魅力的で神秘的。
それから私たちはすぐに結婚し、子供も産まれた。
大きくなった子供が私に問いかける。

「ねーねー。このお花ってお父さんがくれたんだよね?」
「そうだよ〜。パパがくれた時からずっとこのままだよ〜。」
「枯れないの?」
「これはね。プリザーブドフラワーっていうお花を
枯れないようにした不思議な花束だよ。」

永遠に誓い、変わらない愛らしい。
...不器用で大好きな夫だ。

語り部シルヴァ

2/3/2025, 10:46:40 AM

『やさしくしないで』

「...はぁ。」

どうしようもない感情がため息になって零れる。
行き場のない感情がドロドロになって喉を詰まらせてる感覚。
休憩中だからいいけど...使ってない会議室で沈んだ気分を
何とかしようとする。
仕事中なのに...早く平常心に戻さないと...。

目を瞑り深呼吸。もういっかい...よし、いこう。
「お、もう気分はどう?」
持ち場に戻ろうとすると僕を待っていたように
先輩が壁にもたれてスマホをいじっていた。

先輩は仕事もできて周囲からの尊敬もある。
...もちろん彼氏もいる完璧な人だ。
そして数少ない僕の素性を知っている人だ。
おそらく僕を見かけて待っていてくれたのだろう。

僕は表面上明るい性格と言われるがあくまでも仕事上だ。
気分が沈んでて、ネガティブ。それが本当の僕だ。

さっきみたいに気分が沈んだときに先輩に見つかってからは
世話焼きの先輩は声をかけてくれるようになった。

「私の前では無理しなくていいよ。」
僕の素性を知っても優しくしてくれる先輩に甘えてばかりだ。
先輩もきっと仕事上接してくれているだけだろうけど...

前は別にいいかと向き合おうとしてなかった。
それだと先輩の迷惑だ。
だから少しでも気分が沈まないようにしている。

先輩に迷惑をかけないように。
先輩に優しくされないように。
...依存しないように。

語り部シルヴァ

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