語り部シルヴァ

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『やさしくしないで』

「...はぁ。」

どうしようもない感情がため息になって零れる。
行き場のない感情がドロドロになって喉を詰まらせてる感覚。
休憩中だからいいけど...使ってない会議室で沈んだ気分を
何とかしようとする。
仕事中なのに...早く平常心に戻さないと...。

目を瞑り深呼吸。もういっかい...よし、いこう。
「お、もう気分はどう?」
持ち場に戻ろうとすると僕を待っていたように
先輩が壁にもたれてスマホをいじっていた。

先輩は仕事もできて周囲からの尊敬もある。
...もちろん彼氏もいる完璧な人だ。
そして数少ない僕の素性を知っている人だ。
おそらく僕を見かけて待っていてくれたのだろう。

僕は表面上明るい性格と言われるがあくまでも仕事上だ。
気分が沈んでて、ネガティブ。それが本当の僕だ。

さっきみたいに気分が沈んだときに先輩に見つかってからは
世話焼きの先輩は声をかけてくれるようになった。

「私の前では無理しなくていいよ。」
僕の素性を知っても優しくしてくれる先輩に甘えてばかりだ。
先輩もきっと仕事上接してくれているだけだろうけど...

前は別にいいかと向き合おうとしてなかった。
それだと先輩の迷惑だ。
だから少しでも気分が沈まないようにしている。

先輩に迷惑をかけないように。
先輩に優しくされないように。
...依存しないように。

語り部シルヴァ

2/3/2025, 10:46:40 AM