『永遠の花束』
「これからも...そばにいてくれませんか?」
そう言いながら結婚指輪と共に不思議な感じの花束を
差し出される。
花束のことについて聞いてみたいけど、
今喋れば鼻声になっちゃうし嬉しいで胸がいっぱいだ。
「こちらこそよろしくお願いします...!」
12本の青いバラの花束。
魅力的で神秘的。
それから私たちはすぐに結婚し、子供も産まれた。
大きくなった子供が私に問いかける。
「ねーねー。このお花ってお父さんがくれたんだよね?」
「そうだよ〜。パパがくれた時からずっとこのままだよ〜。」
「枯れないの?」
「これはね。プリザーブドフラワーっていうお花を
枯れないようにした不思議な花束だよ。」
永遠に誓い、変わらない愛らしい。
...不器用で大好きな夫だ。
語り部シルヴァ
『やさしくしないで』
「...はぁ。」
どうしようもない感情がため息になって零れる。
行き場のない感情がドロドロになって喉を詰まらせてる感覚。
休憩中だからいいけど...使ってない会議室で沈んだ気分を
何とかしようとする。
仕事中なのに...早く平常心に戻さないと...。
目を瞑り深呼吸。もういっかい...よし、いこう。
「お、もう気分はどう?」
持ち場に戻ろうとすると僕を待っていたように
先輩が壁にもたれてスマホをいじっていた。
先輩は仕事もできて周囲からの尊敬もある。
...もちろん彼氏もいる完璧な人だ。
そして数少ない僕の素性を知っている人だ。
おそらく僕を見かけて待っていてくれたのだろう。
僕は表面上明るい性格と言われるがあくまでも仕事上だ。
気分が沈んでて、ネガティブ。それが本当の僕だ。
さっきみたいに気分が沈んだときに先輩に見つかってからは
世話焼きの先輩は声をかけてくれるようになった。
「私の前では無理しなくていいよ。」
僕の素性を知っても優しくしてくれる先輩に甘えてばかりだ。
先輩もきっと仕事上接してくれているだけだろうけど...
前は別にいいかと向き合おうとしてなかった。
それだと先輩の迷惑だ。
だから少しでも気分が沈まないようにしている。
先輩に迷惑をかけないように。
先輩に優しくされないように。
...依存しないように。
語り部シルヴァ
『隠された手紙』
恋人が謎の死を遂げた。
恋人の両親から連絡を受けた時は
受け入れることが出来なかった。
葬式の時、そんな私を見てか恋人の両親は
恋人の遺品整理を手伝ってくれと頼んできた。
私でいいのかと尋ねると、
「もし欲しいものがあれば遠慮なく持ってってね。」
と日頃の信頼もあってか抵抗は無さそうだった。
久しぶりに恋人の部屋に入れたというのに
静かでとても寂しい。
居た形跡はあるのに恋人はいない...
センチメンタルになるも
頼まれたことをやろうと頬を叩き作業を始める。
学生時代のノート、デートに来てくれた服、
趣味のアンティークもの...
正直全部持ち帰りたいくらいだ。
さすがにそれはダメだなとセルフツッコミを
心でやっていると、机の引き出しの奥底に手紙があった。
手紙でのやり取りは少しあったが
見たことの無い便箋に入れられている。
誰とのやり取りだろうか、
恋人に忘れたくない人でもいたのだろうか。
恐る恐る手紙を開く。
恋人が書いたわりにはかなりの殴り書きで、
「これを読んだ人、
私はこの手紙を読まれた時には
いないかもしれない。
両親の言葉を信じないで。殺される。」
と書かれていた。
最後まで読みながら目を通したあと、
2月の寒い部屋の中なのに動悸と冷や汗が収まらなくなる。
この手紙はなんだ。恋人は何をされた?恋人の死は...
とりあえず逃げた方がいいかもしれない。
手紙をポケットに入れ、部屋を出ようとする。
「おや、整理はもう終わったのかい?」
いつもの口調なのに
どこか圧を感じる声色が背後から聞こえる。
振り向こうとした瞬間、
後頭部に強い衝撃を受け意識を失った。
語り部シルヴァ
『バイバイ』
正月、新年のイベント...
31日もあった俺の役目は終わった...
あっという間だった...
毎年俺の役目は1番最初だからいつも緊張する...
だが俺が頑張ってこそ次に託すことができる。
俺はこんだけ頑張った。次は頼んだぞ。って。
もう...時間が来た。
思い切り伸びをしてると足音が聞こえて振り返る。
「1月は行く...早かったねえ。」
「まあ、いつものことだよ。」
「だね。あとは任せて。」
時刻は0時。
薄れていく意識の中頼れる背中を見つめながら目を閉じた。
語り部シルヴァ
『旅の途中』
「ふぅ...」
重い荷物と腰を下ろして近くの大木に体を預ける。
ここは自分の知らない場所。
家からどれだけ歩いてきたか、
どれだけ経ったかもほとんどわからない。
それにゴールも全く見えない。というか定めてない。
ただひとつの目的は"自分が満足するまで"。
それが満たされるまではこの旅を終わらせない。
人に話せば笑われたこともあった。
「そんなんで見つかりっこない。」
「時間も人生も無駄にしてる。」
好きに言え。これは自分の人生だ。
見つからずとも、人生を棒に振ろうとも
自分がやりたいことを今やっているだけ。
何も知らなさそうな澄んだ空に不満をぶつけつつ
重い荷物と腰を今度は持ち上げる。
さ、旅を続けよう。
休憩に使わせてもらった大木に軽く一礼して歩き始めた。
旅はまだまだ続く。
語り部シルヴァ