『バイバイ』
正月、新年のイベント...
31日もあった俺の役目は終わった...
あっという間だった...
毎年俺の役目は1番最初だからいつも緊張する...
だが俺が頑張ってこそ次に託すことができる。
俺はこんだけ頑張った。次は頼んだぞ。って。
もう...時間が来た。
思い切り伸びをしてると足音が聞こえて振り返る。
「1月は行く...早かったねえ。」
「まあ、いつものことだよ。」
「だね。あとは任せて。」
時刻は0時。
薄れていく意識の中頼れる背中を見つめながら目を閉じた。
語り部シルヴァ
『旅の途中』
「ふぅ...」
重い荷物と腰を下ろして近くの大木に体を預ける。
ここは自分の知らない場所。
家からどれだけ歩いてきたか、
どれだけ経ったかもほとんどわからない。
それにゴールも全く見えない。というか定めてない。
ただひとつの目的は"自分が満足するまで"。
それが満たされるまではこの旅を終わらせない。
人に話せば笑われたこともあった。
「そんなんで見つかりっこない。」
「時間も人生も無駄にしてる。」
好きに言え。これは自分の人生だ。
見つからずとも、人生を棒に振ろうとも
自分がやりたいことを今やっているだけ。
何も知らなさそうな澄んだ空に不満をぶつけつつ
重い荷物と腰を今度は持ち上げる。
さ、旅を続けよう。
休憩に使わせてもらった大木に軽く一礼して歩き始めた。
旅はまだまだ続く。
語り部シルヴァ
『まだ知らない君』
今日も生徒会長の周りは親衛隊が道を作る。
毎日この光景だ。最初こそ動揺したがもはや
いつもの景色になり慣れてしまった。
しかし何をすればこんなに人をまとめてこんな
小さい国みたいな状態まで築き上げれるのかが不思議だ。
...とても中学から知り合った親友とは思えない。
当時の親友は僕と同じくらいの平凡な人くらいの感じだった。
趣味が合い価値観が合う。
だったんだけどなあ...
高校からデビュー成功もあって今の地位に至る。
そう考えれば人知れず努力した結果とも言えるだろう。
ぼーっとしているといつの間にか親友が目の前まで来ていた。
親衛隊に「おい!道を開けろ!生徒会長のお通りだぞ!」
とリアルで聞くことあるんだと思うようなセリフを吐かれたが
親友がそれを止める。
「騒がしくて済まない。また今度お茶でも行こう。」
周囲がザワつくのを感じる。
親友はこんなくさいセリフも言えたのか...
尊敬と同時にまだ親友の知らない部分を知れると思うと同時に
俺の高校生活も悪くないなと感じた。
語り部シルヴァ
『日陰』
帰ろうとすると教室の中心よりやや窓寄りに
人が集まっているのが見えた。
またアイツが中心になっているんだろう。
足を止めることなく教室のドアを閉めて校門まで歩く。
門を過ぎたあたりで後ろから声をかけられる。
「おーい。待ってくれよ。」
「待ってって言われたってお前はみんながいるから
別にいいだろ。」
「幼馴染だろ〜。もっと仲良くしようぜ〜。」
こんな風にヘラヘラしながら
接してくるコイツには正直イライラする。
いつも陽気でいれて、クラスもみんなに好かれる。
それでいて地味で影の薄い俺に声をかけてくる。
住む世界が違う。と言えばいいんだろうか。
昔はもっと離れても磁石のようにくっついてくる奴だった。
それがわかっていこう離れるのは諦めて
自分勝手にしようと決めた。
「なぁなぁ〜、コンビニ寄ろうよ〜。お菓子奢るからさ〜。」
陽気で人気者なコイツに奢ってもらうのだけは気分がいい。
後で罪悪感が湧いてくると思うけど、
それは後の自分に任せよう。
日陰者は日陰者らしく、陰気臭い生き方を。
語り部シルヴァ
『帽子かぶって』
「あ...もうない。」
作業の休憩にお昼にしようと
カップ麺の箱をゴソゴソと漁ったが掴めたのは虚無。
まだあると思っていたが、前に食べた分が最後だった。
仕方ない...今日の分は近くのコンビニに買いに行こう。
嫌々身支度を始める。
部屋着から外に出る用に着替えて、日除け用の帽子を被る。
洗面台の鏡で身だしなみを確認する。
よし、行こう。
ドアを開けると、冬のくせに太陽がギラギラしてる上に
気温が低いのか刺すような寒い風が吹いてる。
ドアを開けて数秒固まったあと、ドアを閉めて部屋に戻る。
もう...ご飯抜きでいいか。
それか高いけどデリバリーを頼もうかな...
帽子をポールハンガーへ雑に放り投げ、
服を脱衣所にポイッと投げる。
今日の天気は出不精の自分にとっては
死んでしまうから仕方ない。
そうやって自分を納得させゲーミングチェアに座って
作業を再開した。
語り部シルヴァ