語り部シルヴァ

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1/31/2025, 10:10:46 AM

『旅の途中』

「ふぅ...」
重い荷物と腰を下ろして近くの大木に体を預ける。
ここは自分の知らない場所。
家からどれだけ歩いてきたか、
どれだけ経ったかもほとんどわからない。

それにゴールも全く見えない。というか定めてない。
ただひとつの目的は"自分が満足するまで"。
それが満たされるまではこの旅を終わらせない。

人に話せば笑われたこともあった。
「そんなんで見つかりっこない。」
「時間も人生も無駄にしてる。」
好きに言え。これは自分の人生だ。
見つからずとも、人生を棒に振ろうとも
自分がやりたいことを今やっているだけ。

何も知らなさそうな澄んだ空に不満をぶつけつつ
重い荷物と腰を今度は持ち上げる。

さ、旅を続けよう。
休憩に使わせてもらった大木に軽く一礼して歩き始めた。

旅はまだまだ続く。

語り部シルヴァ

1/30/2025, 10:57:04 AM

『まだ知らない君』

今日も生徒会長の周りは親衛隊が道を作る。
毎日この光景だ。最初こそ動揺したがもはや
いつもの景色になり慣れてしまった。
しかし何をすればこんなに人をまとめてこんな
小さい国みたいな状態まで築き上げれるのかが不思議だ。

...とても中学から知り合った親友とは思えない。
当時の親友は僕と同じくらいの平凡な人くらいの感じだった。
趣味が合い価値観が合う。

だったんだけどなあ...
高校からデビュー成功もあって今の地位に至る。
そう考えれば人知れず努力した結果とも言えるだろう。

ぼーっとしているといつの間にか親友が目の前まで来ていた。
親衛隊に「おい!道を開けろ!生徒会長のお通りだぞ!」
とリアルで聞くことあるんだと思うようなセリフを吐かれたが
親友がそれを止める。

「騒がしくて済まない。また今度お茶でも行こう。」
周囲がザワつくのを感じる。
親友はこんなくさいセリフも言えたのか...

尊敬と同時にまだ親友の知らない部分を知れると思うと同時に
俺の高校生活も悪くないなと感じた。

語り部シルヴァ

1/29/2025, 10:27:33 AM

『日陰』

帰ろうとすると教室の中心よりやや窓寄りに
人が集まっているのが見えた。
またアイツが中心になっているんだろう。

足を止めることなく教室のドアを閉めて校門まで歩く。
門を過ぎたあたりで後ろから声をかけられる。
「おーい。待ってくれよ。」
「待ってって言われたってお前はみんながいるから
別にいいだろ。」
「幼馴染だろ〜。もっと仲良くしようぜ〜。」

こんな風にヘラヘラしながら
接してくるコイツには正直イライラする。
いつも陽気でいれて、クラスもみんなに好かれる。
それでいて地味で影の薄い俺に声をかけてくる。

住む世界が違う。と言えばいいんだろうか。
昔はもっと離れても磁石のようにくっついてくる奴だった。
それがわかっていこう離れるのは諦めて
自分勝手にしようと決めた。

「なぁなぁ〜、コンビニ寄ろうよ〜。お菓子奢るからさ〜。」

陽気で人気者なコイツに奢ってもらうのだけは気分がいい。
後で罪悪感が湧いてくると思うけど、
それは後の自分に任せよう。

日陰者は日陰者らしく、陰気臭い生き方を。

語り部シルヴァ

1/28/2025, 10:52:21 AM

『帽子かぶって』

「あ...もうない。」
作業の休憩にお昼にしようと
カップ麺の箱をゴソゴソと漁ったが掴めたのは虚無。
まだあると思っていたが、前に食べた分が最後だった。
仕方ない...今日の分は近くのコンビニに買いに行こう。

嫌々身支度を始める。
部屋着から外に出る用に着替えて、日除け用の帽子を被る。
洗面台の鏡で身だしなみを確認する。
よし、行こう。

ドアを開けると、冬のくせに太陽がギラギラしてる上に
気温が低いのか刺すような寒い風が吹いてる。

ドアを開けて数秒固まったあと、ドアを閉めて部屋に戻る。
もう...ご飯抜きでいいか。
それか高いけどデリバリーを頼もうかな...

帽子をポールハンガーへ雑に放り投げ、
服を脱衣所にポイッと投げる。
今日の天気は出不精の自分にとっては
死んでしまうから仕方ない。

そうやって自分を納得させゲーミングチェアに座って
作業を再開した。

語り部シルヴァ

1/27/2025, 10:39:04 AM

『小さな勇気』

席に座って下を向く。
暖房が効いているせいか中で汗をかいている。
それとも緊張しているのだろう...なぜなら...

目だけ少し上を見る。
少し前から乗ってきたおばあちゃんは
まだ僕の前で立っている。
少し揺れる車内はおばあちゃんを右へ左へとよろめかせる。

このおばあちゃんに席を譲りたい...
少し小っ恥ずかしい思いをするだけだ...!
そう思い勢いよく立ち上がる 。
周囲に視線が気にならないように目を瞑って声を出す。

「あ、あ、あの!良ければ座ってください!」

しんと静まり返る車内。ガタンゴトンと
線路と線路の隙間を踏む音だけが体に響く。
恐る恐る目を開ける。

おばあちゃんはキョトンとした顔をすぐ笑顔に変え
「ありがとう」と言って僕の座っていた席に座る。

自分が降りる駅までに言えてよかった...
アナウンスが自分の降りる駅名を呼び上げる。

降りないと...
そう思いドア付近まで行こうとすると
おばあちゃんに止められた。

「さっきはありがとうね。これよかったらどうぞ。」
そう言って黒飴をくれた。

受け取った黒飴は少し暖かく、
おばあちゃんがずっと握っていたように思えた。

語り部シルヴァ

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