『あの夢のつづきを』
ガバッと勢いよく起きる。
外はまだ開けることのなさそうな暗い空。
時間を確認する。午前3時。
なんで起きたから数秒考える。
そういえば夢を見た気がする。
高校の誰もいない場所であの人と...
そんな懐かしい夢を見た気がする。
今日も仕事。それなのにさっきまで見ていた夢を
もう一度見れないかと悩んでしまう。
とりあえずトイレを済ませて水を飲んで...
布団を整えてもう一度寝る準備をする。
懐かしい夢をまた見たい。余韻に浸りたい...
迫ってくる眠気に意識を持っていかれながらも
夢を見れるように願った。
語り部シルヴァ
『あたたかいね』
バスが来るまでまだ時間がある...
くそ...席に座りたいからって早く来すぎた。
日が昇る中屋根の下は随分と冷える。
寒そうにしていると、同じクラスの友人に声をかけられた。
「お疲れ、随分と寒そうだね。」
「お疲れ。あーバス停の屋根のせいで寒くてね。」
そういうと友人はカバンからココアを取り出して渡してくる。
「ほい、これで少しは紛れそう?」
「え、嬉しいけど貰っていいのか...?」
「まーた買ってくるから大丈夫!
明日購買でなにか奢ってくれたらいいよ!」
「ありがとう。ってそれ購買目的だろ。」
バレた。と笑う友人。
こんなやり取りをしているだけでも温まるのだが...
話すと笑われそうだから言わないでおこう。
じゃーねーと友人は帰っていった。
ココアを開けて1口飲む。...思った以上にぬるいな。
ココアがぬるくても、友人の優しさが暖かいものだったから気にしないことにした。
明日好きなものを奢ろう。
語り部シルヴァ
『未来への鍵』
また...またダメだった。
自分の夢を掴むためにアイドルになったのに、
テレビ番組として出演するとどうも上手く話せない。
正直もうダメかもしれない。
ここまで来たけど結局一般人より
少し顔が知れてる程度にしかなれなかった。
私の未来はここで閉じて残りの人生を
のんびり生きた方がいいのかもしれない...
みんなには申し訳ないけど...
そう考えアイドルグループのみんなに話した。
後輩が何か言いたげそうな顔をしているので聞いてみた。
すると後輩は涙を浮かべ
「私がここまでこれたのは皆さんや先輩のおかげです!
今度は私たちが先輩を支える番です!先輩の目指す未来のために私たちが力になります!」
可愛い後輩からの頼もしい言葉に私まで涙が流れる。
この子たちが私の未来への鍵...
この子達のためにも私がしっかりしないと...!
「ごめんなさい...私弱気になってた。私もっと頑張るね!」
私の夢はいつまにか私"たち"の夢へと変わっていた。
そう...みんなで未来を掴むんだ。
語り部シルヴァ
『星のかけら』
満点の星空を見る度に昔を思い出す。
小さい頃の僕は結構な泣き虫だった。
泣いた理由はいっぱいあった。
学校で飼っていた金魚が死んだ、友達と喧嘩した、
テストで納得のいく点が取れなかった。
そんなことがある度1人部屋の隅っこで泣いていた。
親に心配かけないように1人息を殺して...
ある日の夜いつものように
泣いて窓越しに夜空を見ていると、おじいさんが空からやってきた。
「どうしたんだい。
なんだか悲しそうな顔をしているじゃないか。」
物腰柔らかそうに尋ねてくるおじいさんを不審者とは思えず
泣いていたこと、泣いた理由を伝えた。
するとおじいさんは優しく笑いながら
星空を摘むように指を動かす。
そのまま僕の前に持ってくると星空は小さな飴になった。
「ほら、星空からもらった飴だよ。
これで元気を出しなさい。」
言われるがままに飴を口に運ぶ。
甘いけどなんの味かわからない。
それでも今まで食べた飴のどれよりも美味しかった。
「それじゃあね。可愛い泣き虫さん。」
おじいさんはそう言って僕の頭を撫でると
すうっと消えていった。
今思えば夢かもしれない。
それでもあの星空の飴のことは忘れられないし、
今でも寂しい夜に元気をくれる魔法になった。
お礼を言いそびれたからまた会えたらな...
少しセンチメンタルになった心に冷えた風が視界を滲ませる。
「おやおや、泣き虫さん。どうしたんだい?」
聞き覚えのある優しい声が夜空から聞こえた。
語り部シルヴァ
『Ring Ring...』
携帯をちらっと見る。
残念ながら携帯は微動だにしない。
いや、今日も来ないのかもしれない。
最近彼女から一向に連絡が来ない。
元々嵐のような人だがその嵐がずっと静まりかえっている。
普段は飽きない日々だなと思う反面、
いざ来ないと寂しく感じる。
おかげで勉強も進まない。
でもこっちから連絡するにせよ話題も無い...
勉強も手付かず、悩んでいるとついに携帯が
バイブレーションで揺れながら携帯が鳴る。
呼出音の一回目が終わる前に出る。
「も、もしもし...?」
携帯から聞こえる声はクスクスと笑いながら...
「やっほー。ずっと待ってたでしょ?」
どうやら彼女は僕のことについてはなんでも
おみとおしのようだ。
語り部シルヴァ