語り部シルヴァ

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1/7/2025, 10:32:09 AM

『追い風』

汗の匂い、冷たい風。
背景から聞こえる声援。
試合終了まで残りあとわずか、
このままだとこっちが負ける。
空気が完全に押されている。

まずい...

体もそろそろガタが来ている。
それでもまだ持ってくれ...

汗は冷や汗に変わっていく気がした。
もし負けたら...なんて先に1人反省会を開きそうになる。
でもそんなことしている場合じゃない。

すると後ろからキャプテンの声が聞こえる。
「お前らー!まだまだこっからだぞー!」

怒った様子じゃなくとても楽しそうな声。
そうだ。そうじゃないか。まだまだ楽しめるじゃないか。
強ばっていた口元が緩くなって笑顔になった気がする。

こんな状況だからこそ楽しくぶつかり合わないと。
俺と同じ気持ちなのか仲間全員前へと走り出した。

残り2分。追い風に乗る勢いで審判のホイッスルが鳴り、
ボールを託された俺はゴール目掛けて走り出した。

語り部シルヴァ

1/6/2025, 10:35:23 AM

『君と一緒に』

今日も乗り越えた。
片付けも終わり今から帰るところだ。
去年まではゆるい部活だったが、
顧問の先生が変わった途端ガチ勢のようなキツさになった。

部室の掃除、ラケットなどの備品の点検は毎日。
顧問の先生が来るまでに準備運動、ストレッチを終わらせる。
試合に全力で挑む学校は当たり前かもしれない。
それでも今までゆるゆるだった僕らからすれば
地獄の日々へと変貌した。

確かにキツイ、初日の翌日は筋肉痛で大変だったし、
まあまあ仲の良い仲間はあっさりやめてしまった。
僕もやめてしまいたいと何度も思った。

それでも...

「や、お疲れ様。今日も厳しかったねえ」
ヘトヘトな僕の隣に疲れたーと楽しそうな君が来る。
同じクラスで2人で部活に入ろうと決めた時から
仲良くしてくれる君。

最初は僕よりも上手く先生にもよく褒められていた。
そんな姿がかっこよくて魅力的だった。
だから僕も必死に努力して君と並べれる強さになった。
今じゃ部活内では強いタッグと呼ばれるほど。

君となら、どんなに厳しくても一緒に乗り越えられる。
君も同じように思ってくれていると嬉しいな...

雑談混じりでコンビニで買った肉まんを分け合いながら
明日も頑張ろうと意気込んだ。

語り部シルヴァ

1/5/2025, 10:39:36 AM

『冬晴れ』

寒い澄んだ空。
雲ひとつない青空の下は風を浴びるにはまだ早い。
マグカップを持つ手は手のひらは暖かいものの、
手の甲側は冷たい風が刺さる。
あかぎれや指が割れそうだ。後でハンドクリームを塗ろう。

今日みたいな日は外を歩けば風は寒く日差しは暑いだろう...
寒いと外に出たくない出不精の自分には関係ない話だ。
必要な時以外外に出てないから正月と相まって
運動不足がすごいことになっている。

いい加減...動かないとね。
そう思いつつ明日からにしようと頭は既に
引きこもる選択をしていた。

今日は...やることもないからマグカップと一緒に
ベランダで白い息でも吐いて寒さを楽しもう。

語り部シルヴァ

1/4/2025, 11:02:31 AM

『幸せとは』

仕事の休憩中、どデカいため息をついた。
仕事疲れとかそんなのじゃない。もっと...
「どうした?大丈夫か?」
背中から声をかけられ振り向くと上司がいた。

「あ!お疲れ様です!すみません見苦しい所を...」
「気にすんなよ。で、なにかあったのか?」
上司に問われなんでもないというのも
失礼かと思い心情を打ち明けた。

「特にこれ!って訳じゃないんですけど、
帰ってお風呂にご飯食べて寝てまた出勤...
充実はしてるんですけど、もっとこう...
幸せなことないかなって。」

「あー...確かにわかるな...趣味とかないのか?」
「あるにはあるんですけど、
ゲームとかそんなのしかなくて。」
「自分の趣味をそんなの扱いするな。
お前の趣味はお前しか理解できないんだから
もっと趣味を誇らしく持つんだ。」
「じゃあ...家に帰ったらゲーム三昧でも...?」
「自分の趣味に没頭できるってことじゃないか!
素晴らしいことだ!」

そう言いながら軽く背中を叩いてくる上司に
気分が少し晴れる。
「じゃ、私もお昼にしてくる。お互い昼から頑張ろうな。」
そう言って離れる上司に思わず問いかける。

「あの!上司にとって幸せってありますか!」
一瞬足を止めた上司は
「お前みたいに悩んでるやつに笑顔になってもらうことだ」
と言ってこちらを振り向かず歩いていった。

語り部シルヴァ

1/3/2025, 10:30:03 AM

『日の出』

やけに眩しくて目を覚ます。
部屋は暗いけどカーテンの隙間から
日差しが直接差し込んでいるようだ。

確か友達に誘われて丸1日ゲームしていたはず...
途中でみんなして寝落ちしていたようだ。
マルチプレイができるゲーム機の画面は
どれも真っ暗になっている。
かなりのどんちゃん騒ぎになって我ながら珍しく
はしゃいだ気がする。

みんなの寝顔を見つつ昨晩のことを思い返すと
自然と笑顔になれる。
…と思ったが1人足りない。
キョロキョロと見渡すとトイレから物音がした。
どうやら1番じゃなかったようだ。

「お。起きた起きた。おはよう。」
「あー、おはよう。あけおめだね。」
「うん、ことよろ。」
他を起こさぬように小声で新年の挨拶を済ませて
軽く雑談する。

今年の年末もこんな風に過ごせれたらいいな。
そんな話をしつつ2人でベランダに出て差し込む陽の光が
部屋に入らないようにカーテンをしっかりと閉める。

日の出の光はねぼすけたちにはお預けだ。

語り部シルヴァ

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