『今年の抱負』
正月にやることをあらかた終わらせいつもの日常が顔を出し始める頃、あることを忘れていた。
今年の抱負だ。
やはり今年の抱負があってこそ一年が計画的になれるものだ。
早速机に向かい紙とペンを出して姿勢を正す。
...数分経っても白紙のままだ。
色々ありすぎて何を書こうか迷ってしまった。
一旦ペンを置いて腕を組む。
思えば去年も似たようなことをした覚えがある。
確か去年はいっぱいあるからその日思ったことをやろうと
計画性が微塵もない抱負だった気がする。
...今年もそれでいいか。
こうやってグダグダな1年が始まる。
よくいえば自分らしいものだ。
語り部シルヴァ
『新年』
寝ぼけ眼で河川敷を登る。
普段起きる時間より数時間も早いとさすがに眠い。
冬の刺さるような寒さよりも今眠気が強い気がする。
今日は仕事も休み。
寝正月でも良かったけどたまにはこういう正月も
いいんじゃないかと張り切って早起きしてみた。
晴れているのに薄暗い空はまだ寝静まっているようで、
起きるのには早すぎたかと思わされる。
スマホで時間を確認する。
間違えてしまったか...?
そう思いながらスマホを確認していると
頭から暖かさを感じる。
急いで顔を上げると、ちょうど太陽が顔を出し始めていた。
いつも見ている太陽が新年一発目だから、日の出だから。
そんな理由で特別感があるのは少々変な気分だ。
けれどそんな気分も眠気も元旦の太陽は覚ましてくれる。
あけましておめでとう。
心の中で念じ太陽に背を向ける。
眠気も取れて寒さを感じるようになってきたから
帰ってココアでも飲もうかな。
語り部シルヴァ
『良いお年を』
テレビの中の渋谷はカウントダウンが始まる。
周辺に何も無い。車の走る音しか聞こえない。
それに比べてテレビの中はずっと賑やか。
会社帰りのサラリーマン、友人で来た女の子たち、
初々しいカップルと街のインタビュワーは心情を聞いている。
僕もカウントダウンを友達と一緒に行ってみたかったものだ。
残念ながらそんなお誘いをできる友人はいない。
来年はそんな友人を作ることを
目標に入れてもいいかもしれない。
コーヒーで温まりつつテレビをぼーっと見ていると
スマホが鳴る。
誰だろうか。誰かに見られている訳でもないのに
平静を装いつつスマホを見る。
...クーポンのお知らせだったのでスマホを
ベッドにポイッと捨てる。
今年も変わらず1人で過ごすことになりそうだ。
「...良いお年を。」
誰かに言う訳でもないのに独り言がポロッと出た。
やはり...来年は隣に言えるような存在が
できることを努力しよう。
語り部シルヴァ
『一年を振り返る』
日記を書き終え、大きく伸びをする。
明日も仕事だから年末感はそんなにない。
さて寝ようか...と思ったがふと気になって
日記をペラペラとめくってみる。
あの出来事が1月だった、あんなことが7月にあった...
早足でめくってみるも半分以上が大変な日だったことが
書かれていて思わずふっと笑ってしまった。
波乱万丈...だけど、飽きない1年だった。と思う。
来年はどんな年になるんだろうか、
楽しい一年になるだろうか...
不安と期待が混ざってとても楽しみだ。
時計を見るともう寝る時間をとっくに過ぎていた。
まずい。明日も仕事だ。
日記をすぐに閉じベッドに飛び込むように潜った。
語り部シルヴァ
『みかん』
手がかじかむ。
あかぎれになりそうな指にみかんの汁が染みる。
口内炎ができてるから口の中も染みるんだろうなあと
思いつつみかんを剥き続ける。
あっという間に指は黄色になっていく。
地元で取れたみかんを農家の方がおすそ分けしてくれた。
コタツにみかん。うん、冬って感じ。
みかんは好きだがこの手でスマホやら布団やら触るのは
イヤだからそういうところだけは苦手かもしれない。
食べる分剥き終わったから早速1口。
果汁の優しい酸味と引き立つ甘みが最高だ。
地元はドが付くほどの田舎だがこのみかんだけは
どこの場所でも引けを取らないと思える。
けれど口内炎が染みる。
あー染みる。早く治ってくれ。
みかんを最大限楽しめないじゃないか。
それでも口に運ぶみかんのスピードは変わらない。
コタツにみかんの組み合わせは口内炎ごときに
止められないんだ。
語り部シルヴァ