『仲間』
アビリティの確認、キャラも立ち回り確認。
今日も好きな武器を拾えたらいいなとつぶやくと
「お前のキャラとその武器は合わん(笑)」と
笑われるもなんだかんだあったら教えてくれる。
今日は何時まで遊べるかな。
僕は友達に恵まれた。
だからこうしてメンバーを必要とするゲームで
友達と遊べるのはありがたい話だ。
マイクの位置を調整して深呼吸。
このマッチが始まった瞬間がドキドキする。
「じゃ、チャンピオン目指すぞー!」
「敵は見つけ次第ちぎって投げるぞ〜」
元気のいい声につられて「おー!」と返す。
ちなみに上手い訳では無いので
敵にボコボコにされたのは言うまでもない。
語り部シルヴァ
『手を繋いで』
夕焼けを見ることも少なくなった午後4時半頃。
そろそろ帰ろうと伝えるもまだ帰りたくなさそうに
頬を膨らます歳の離れた妹。
また明日もここに来て遊ぼう?
そう言うとどこで学んだか仕方ないなあと
砂埃をはたきながら立ち上がる。
寒い時期なのに公園の砂場で遊ぶ姿はまだまだ若さを感じる。
水道の水で手を洗い、しっかりとハンカチで手を拭く。
よくできた妹だ。
感心していると帰る準備ができた妹が手を差し出してくる。
まだまだ甘えん坊さんでそこがまた愛おしい。
自分の手のひらで包み込める小さな手からは
優しい温もりが伝わってくる。
もう1日が終わるのに妹は今日のこと、
明日のことずっと話し続ける。
元気だな。そんな元気な妹の顔を見てると
こっちまで元気になってくる。
明日も手を繋いで帰れるといいな。
珍しく見えた夕方に妹と共にはしゃいでいた。
語り部シルヴァ
『ありがとう、ごめんね』
「...っ」
今回の仕事のアイデアが浮かばずもう三日も経ってしまった。
締切はまだまだ先だが、
三日も無駄に過ごしてしまうと焦燥感が募る。
仕事中はパートナーに部屋に入らないでくれと
伝えている分心配をさせているだろう...
風呂やトイレはさすがに部屋から出るが
それでも話すことは少ない。
何も無いがひたすら頭を捻る。捻り出すものが出てこない。
どうしたものか...
悩んでいるとドアからノックが聞こえてくる。
「ごめん入るね。」
俺の返答を聞かずにパートナーが入ってくる。
「詰まってそうだから、
リラックス出来そうなもの良かったらどうぞ。」
そう言って机の空いたスペースに
いい香りがする紅茶とチョコが置かれた。
普段は仕事の最中にここまですることはない。
それほどパートナーに心配をかけさせていたのか...
「じゃ、お仕事頑張ってね。」
「待ってくれ!」
そう言って部屋を出ようとするパートナーを引き止める。
「ありがとう。それと...心配かけてごめん。」
俺の言葉にパートナーはニコッと笑い
「大丈夫だよ。応援してる。」と応援してくれて部屋を出た。
紅茶の香りとチョコの甘さが脳内をスッキリさせてくれた。
今なら行ける気がする。
滞った分を巻き返して、パートナーにお礼をするんだ。
そう思うとさっきまでの停滞が嘘のように進み出した。
語り部シルヴァ
『部屋の片隅で』
何もすることがなくて床に寝転がり天井を見つめる。
いや、やることやりたいことはあるが
それらがぶつかり合って何もする気力が無い。
ちらっと視界に入ったギターもやりたいことの一つだ。
最初はワクワクしながらいじっていたのに日が経つ事に
触れる時間が減っていき最終的にはケースから
出さなくなってしまった。
ケースも遠目から見てもわかるくらいホコリを被っている。
いつも行動力はなく、やっと動いてもこのザマだ。
重い腰をあげて手をつけてはすぐに冷める...
そんな繰り返しでやる気が微塵も起きなくなる。
...まだ日は昇っている。
時間はまだまだある。
けれど、こうやって堕落して時間を浪費していく。
変わらなきゃ。
わかってはいるはずなのに瞼は重くなり、
世界は真っ暗になった。
語り部シルヴァ
『逆さま』
刹那。時間が止まったようにゆっくりに感じた。
恐怖で顔が歪む君。暗くなり始める真っ赤な空。
なんだ。案外綺麗なもんじゃないか。
だからといってまだ生きたかったなんて思わないけど。
下から上に吹く風は冷たくて乾いている冬の風。
もう体を冷やさないか心配する必要もないって思うと
気が楽だ。
天と地がひっくり返ったかのような世界は
人生の最後にしか見れない絶景だ。
目をつぶれば素敵な華を咲かせれるだろうか。
最後に君の脳裏に焼き付けれるだろうか。
痛いのは一瞬だけ。
そう願いながら目を瞑るとコンセントが抜けた
テレビのように何かがプツンと切れた。
語り部シルヴァ