語り部シルヴァ

Open App
12/7/2024, 12:52:42 PM

『部屋の片隅で』

何もすることがなくて床に寝転がり天井を見つめる。
いや、やることやりたいことはあるが
それらがぶつかり合って何もする気力が無い。

ちらっと視界に入ったギターもやりたいことの一つだ。
最初はワクワクしながらいじっていたのに日が経つ事に
触れる時間が減っていき最終的にはケースから
出さなくなってしまった。
ケースも遠目から見てもわかるくらいホコリを被っている。

いつも行動力はなく、やっと動いてもこのザマだ。
重い腰をあげて手をつけてはすぐに冷める...
そんな繰り返しでやる気が微塵も起きなくなる。

...まだ日は昇っている。
時間はまだまだある。
けれど、こうやって堕落して時間を浪費していく。

変わらなきゃ。
わかってはいるはずなのに瞼は重くなり、
世界は真っ暗になった。

語り部シルヴァ

12/6/2024, 11:44:20 AM

『逆さま』

刹那。時間が止まったようにゆっくりに感じた。
恐怖で顔が歪む君。暗くなり始める真っ赤な空。

なんだ。案外綺麗なもんじゃないか。
だからといってまだ生きたかったなんて思わないけど。
下から上に吹く風は冷たくて乾いている冬の風。
もう体を冷やさないか心配する必要もないって思うと
気が楽だ。

天と地がひっくり返ったかのような世界は
人生の最後にしか見れない絶景だ。
目をつぶれば素敵な華を咲かせれるだろうか。
最後に君の脳裏に焼き付けれるだろうか。

痛いのは一瞬だけ。
そう願いながら目を瞑るとコンセントが抜けた
テレビのように何かがプツンと切れた。

語り部シルヴァ

12/5/2024, 11:13:57 AM

『眠れないほど』

冬の静けさが異様に気になる。
普段なら嫌という程襲いかかる眠気も今日は非番のようだ。
コーヒーも飲んでない。
いつもの寝る前のルーティンも欠かさなかった。

なのに全く寝れない。
どうしたものか...とりあえず寝れない理由を整理してみた。
まず、仲良くしてくれる相手から遊びの誘いが来たこと。
何して遊ぶか、ご飯はどうするか話が順調に進んだこと。
予定が決まって相手がすごく喜んでくれたこと。

...まあ思い当たることしかない。
にしても前日から浮かれすぎではないだろうか。
あまり人とこういう経験をしてこなかったのもあるが、
なるほど...こういう気持ちになるんだな。
今の自分はすごくだらしない顔になっているかもしれない。

明日はきっと楽しい1日になるだろう。
静かで真っ暗な天井を見上げながら心の奥底にある
暖かい感情がゆっくりと眠気を誘ってくれた。

語り部シルヴァ

12/4/2024, 10:40:48 AM

『夢と現実』


「いい加減にしろ!
自分が何やったか話せばいいんだ!
さっさと話せ!」

最近よく夢を見る。
今日は刑事さんと取調室で話をしている。
ものすごく怒鳴られていて、よほど自分が
大罪を犯したかを思い知らされる。

でも、僕は夢の中で何をしたんだろうか。
夢の中で自分が何したかなんて覚えてないけど...

ついに感極まった刑事さんが胸ぐらを掴んできた。
やけにリアルな夢だな...
刑事さんの気迫が凄まじい。
でも所詮は夢だ。あーあ、早く覚めて欲しい。


「あの人、今日もだんまりですね。」
「あぁ、検査の結果夢を見すぎて
今この空間を夢だと思い込んでいるらしい。」

語り部シルヴァ

12/3/2024, 10:38:53 AM

『さよならは言わないで』

道中に左右に道が別れてその間に看板が立てられている。
「どうやら、僕らはここまでのようだね。」
看板の行き先を確認した仲間が伸びをしながらつぶやく。

俺たちは目的までの道中が同じで
一時的に仲間になって旅をしていた。
遺跡を巡ったり途中の街で飯を食ったり
パーティメンバーのような仲になった。
これからもっと2人で面白いことと
出会うんじゃないかと内心期待していたが...

俺たちを分ける道がついに来てしまった。

「ここまで長いようであっという間だったね。」
看板の近くで休憩を取りながらだべる。
半年ぐらいだろうか。1年の半分というのは
本当にあっという間だった。

「せっかく仲良くなったのになあ...寂しくなるが
お互いの目的を達成するには仕方ないな。」

「だね。もしかしたらまた出会うかもしれないけど。」

それもそうか。と返しながら空を見上げる。
仲間というのも悪くないかもしれない。
そう思わせてくれるような仲間でよかった。
休憩はあっという間に終わり、出発の時間になった。

「じゃ、お互い頑張ろうか。」
「あぁ、ありがとな。また。」
うん、またね。

手は振り来た道を振り返らず歩き続ける。
またどこかで出会えるだろう。
不思議とそう感じるからさよならは言わなかった。

語り部シルヴァ

Next