語り部シルヴァ

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11/5/2024, 10:17:18 AM

『一筋の光』

お先真っ暗。
今の自分に相応しい言葉。
お金もあまりない。職も安定しない。
恋人もいない...

友達が充実している生活をSNSに投稿しているのを見かけると
自分にはどうしてなにもないんだろうと思うばかり。
友達を妬む暇があれば自分を磨けばいいのもわかっている...
けど結局何も得れないから諦める。

...ひとつ。希望のようなものがあるとするなら。
通知音が鳴りスマホを確認する。
趣味の界隈で人気者の人と連絡を取りあっている。
何気ない会話も自分の生きる力になる。

きっと僕なんかただのモブに見られているだろう...
それでも...勝手に縋らせて欲しい。

君の通知でにやける僕は傍から見てもきっと惨めだろう。
そんなことが気にならないくらい君の存在は大きいんだよ。

語り部シルヴァ

11/4/2024, 10:22:15 AM

『哀愁を誘う』

「...」
朝から違和感があった。
目覚めたときの喉の乾き具合、妙に冷えた体。
...無臭で冷たい風。

外に出たときに答え合わせができてしまった。
近くに金木犀が咲いていて、
散歩の始まりを秋風と一緒に背中を押してくれていた。

そんな金木犀の香りはしなくなっていた。
金木犀は冬へと変貌した風にほとんどたたき落とされていた。
小さくて愛らしい花だから余計に悲しく感じる。

一輪つまみあげる。
...もう香りはしないが、綺麗な花だ。
今年も香りと愛らしい花を咲かせてくれてありがとう。

花を仲間たちの所へと戻し、寂しくなった世界を歩き始めた。

語り部シルヴァ

11/3/2024, 10:29:29 AM

『鏡の中の自分』

夜中にふと目が覚めた。
トイレに行ったあとに洗面台で手を洗う。
ふと気になって鏡をじーっと見つめる。

寝ぼけただらしない顔。
明日も学校と考えるとだるい。
余計に脱力してだらしない顔に...
鏡の自分もだらしない顔に。
鏡の中の自分が羨ましい。

そう思いながらベッドに戻ろうと鏡に背を向けると、
コンコン。と固いものをノックする音が聞こえた。

振り返ると鏡から手が伸びてて、寝巻きの胸ぐらを掴まれた。
「なら、入れ替わってやるよ。
俺が鏡の前に来ない限りお前は存在しなくなるけどな。」

不気味な声で喋りながら僕は
ゆっくり鏡の中に引きずり込まれた。
それと同時に僕そっくりの何かが
鏡の外へ出て言ったような気がした。

鏡の中に完全に入った瞬間、意識がプツンと切れた。

語り部シルヴァ

11/2/2024, 12:32:31 PM

『眠りにつく前に』

日記も書いた。
明日の準備も終わらせた。
今日やることは全部済ませた。

あとは...
窓を開けて外の夜風を浴びる。
ひんやり冷たく、どこからか金木犀の匂いがする。
この時期の夜風はいわゆる期間限定だ。
ちょっと寒いけど、気がつけば終わってしまうから
1日たりとも欠かさず浴びる。

それに布団が暖かく感じて眠りにつきやすい...
ずっと吹いていて欲しいが、
金木犀の咲いてる期間はとてつもなく短い。

あの匂いが無くなった日の夜風はとても寂しく感じるだろう。
そんな寂しさが増すように
今日も金木犀を纏った夜風を浴びる。

体が芯まで冷えていく。
よし、そろそろ寝ようかな。
寝間着が凍るような冷たさと金木犀の香りを
夜風からおすそ分けしてもらった。

今日もよく眠れそうだ。

語り部シルヴァ

11/1/2024, 11:20:40 AM

『永遠に』


今日はなんて日なんだろうか。
朝早くから彼女にプレゼントを貰って日中は
授業も無く彼女の家で夜までのんびり。
夜に贅沢にピザを出前で頼んでパーティ。
お風呂に入って2人でベッドを温める...

自分がただ生まれただけなのに
これほど幸せなことがあっていいんだろうか。
天井を不安そうに眺めているのを勘づかれたか、
彼女は眠たそうな声で「幸せになっていいんだよ。」
と囁いた。

お礼に頭を撫でると彼女は直に寝息をついた。
すぅすぅと可愛い寝息。
愛らしいその顔を見ていると不安も晴れていく。

きっと誕生日じゃなくても彼女は
こう答えてくれていただろう。

もう主人公の時間は終わる。
残りは彼女の温もりを感じながら過ごすことにした。
永遠に...こんな幸せがずっと続くことを願って...

語り部シルヴァ

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