語り部シルヴァ

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『哀愁を誘う』

「...」
朝から違和感があった。
目覚めたときの喉の乾き具合、妙に冷えた体。
...無臭で冷たい風。

外に出たときに答え合わせができてしまった。
近くに金木犀が咲いていて、
散歩の始まりを秋風と一緒に背中を押してくれていた。

そんな金木犀の香りはしなくなっていた。
金木犀は冬へと変貌した風にほとんどたたき落とされていた。
小さくて愛らしい花だから余計に悲しく感じる。

一輪つまみあげる。
...もう香りはしないが、綺麗な花だ。
今年も香りと愛らしい花を咲かせてくれてありがとう。

花を仲間たちの所へと戻し、寂しくなった世界を歩き始めた。

語り部シルヴァ

11/4/2024, 10:22:15 AM