紅茶の香り
ずっと前から気になっていた同僚と
ついにお茶をすることが出来た。
折角なら私の行きつけの場所にしようと言い
相手の行きつけのカフェに行くことになった。
静かな雰囲気だが優しい日差しが差し込み、
入っただけでも落ち着く...
相手はシフォンケーキを、僕はチーズケーキを頼んだ。
前日まで話題や身振りを予習したはずだけど、
どうも緊張して全部上手くいく気がしない。
緊張して黙々とケーキを食べていると
相手が話を振ってくれた。
「ここ...最初は気付かなかったんです。
仕事で無性に落ち着ける場所が欲しい...
そう考えながら気晴らしの散歩の途中に見つけたんです。
顔見知りもいないので伸び伸びとケーキと紅茶を
楽しめるのが心地よくて好きなんですよね。」
「そうなんですね...
そんな穴場みたいなのを僕に教えてもいいんですか?」
「大丈夫ですよ。
だってあなたにずっと教えたかったんですから。」
ふふっと照れくさそうに笑いながら相手は
一緒に頼んだアールグレイを少し冷まして1口飲む。
ふんわり香るアールグレイが似合う相手に心臓がうるさくて
ケーキも紅茶も味がしない。
強いて言えば...恋の味がこういうのなんだろうと
無理やり解釈した。
語り部シルヴァ
愛言葉
「だよねー...ってもうこんな時間か...明日大丈夫?」
「あ、ちょっとまずいね。ごめん、そろそろ寝るよ。」
時間は既に日付を跨ごうとしていた。
明日もお互い仕事で朝も少し早い。
いつも
電話が楽しくてついつい話し込んでしまう。
さすがに一晩中話すことも電話をずっと繋げるのは
明日に支障が出た場合を考えるとできない。
また明日の夜。
明日も電話できるが、待ち遠しいしそれまで寂しい。
だから...
「「また明日。今日もありがと。」」
声が重なってお互い笑いながら
おやすみを言い合って電話を切った。
僕らのあいことば。
明日の夜のために僕らは頑張れる。
語り部シルヴァ
友達
「ねえねえ!今日は一緒に遊ぼ!」
「ごめん...今日は別のお友達と
あそぶ予定があるからまた明日ね!」
「わかったぁ。ばいばい!」
ばいばい!と手を振りながら走り出す。
校門を出てすぐ左に。
まっすぐ走って山をめざす。
山の神社近くをぐるっと回った先の大きなほらあな。
立ち入りきんしの札の前で立ち止まり、
辺りをキョロキョロ見渡す。
だれもいないことをかくにんしてほらあなに入る。
私の足音と水がはねる音。
遠くからいびきしか聞こえない...
少し歩いてボソッとつぶやく。
「こんにちはねぼすけさん。」
私の声に反応していびきは止まり、
まっくらな奥からモゾモゾと何かが動く。
すでに私の目の前に来ていて大きな体をすりつける。
ザワザワしてて柔らかい毛並み。
「今日もといてあげるね」
ランドセルから少し大きめのクシを取り出してそれに近づくと頭っぽい部分を私の手元に寄せて
さっきのいびきより優しい鼻いきをもらす。
水がはねるの音、やさしい鼻いき、
くらいけどあたたかいひざ...
クシで毛並みを整えているこのしゅんかんが今の楽しみ。
私しか知らない友達とのこの時間が大好きだ。
語り部シルヴァ
行かないで
私は幸せだ...彼氏が向かいに居て
今欲しいものが向こうから流れてくる。
もうお腹いっぱいなのにそれでも体が求めてしまう。
手が勝手に動いて取ってしまう。
そんな私を見て彼が笑う。
あー...すごく眩しい。
でもさすがに次流れて来たら最後にしよう。
さすがに...苦しいや。
幸せすぎるのも苦しいんだ...。
そう思いながら手を伸ばしたが...
タイミングがズレてしまった。
欲しかった"それ"はそのまま流れて行ってしまった。
待って...!!行かないで...!!
私の情けない姿を見て彼はまた笑う。
「回転寿司に来てここまで一喜一憂する人初めて見たよ。」
語り部シルヴァ
どこまでも続く青い空
旅路の途中に茶屋を見つけた。
団子と茶を頼み縁台に腰掛ける。
思っていたよりも足は疲れていたらしく
座った途端足に重みを感じた。
次で宿を探そう。そう思いながらも空を見上げる。
雲ひとつない空はとても綺麗で手に取れるんじゃないかと
思うくらい青い。山がなければ永遠と続いていそうだ。
山が化粧づいてきて綺麗な山吹色になっている。
あと少しすれば紅葉が映えるだろう。
「お待たせ致しました。」
来た団子を1口。程よい甘さと弾力が頬を溶かすようだ。
お茶も苦みが団子と合わさって美味い...
さて、もうひと歩きだ。
宿を目指すのもいいがこの青い空の終点を
見つけるのも面白いかもしれない。
青い空、吹き抜ける風、色付く景色。
秋を噛み締めながら歩き始めた。
語り部シルヴァ