紅茶の香り
ずっと前から気になっていた同僚と
ついにお茶をすることが出来た。
折角なら私の行きつけの場所にしようと言い
相手の行きつけのカフェに行くことになった。
静かな雰囲気だが優しい日差しが差し込み、
入っただけでも落ち着く...
相手はシフォンケーキを、僕はチーズケーキを頼んだ。
前日まで話題や身振りを予習したはずだけど、
どうも緊張して全部上手くいく気がしない。
緊張して黙々とケーキを食べていると
相手が話を振ってくれた。
「ここ...最初は気付かなかったんです。
仕事で無性に落ち着ける場所が欲しい...
そう考えながら気晴らしの散歩の途中に見つけたんです。
顔見知りもいないので伸び伸びとケーキと紅茶を
楽しめるのが心地よくて好きなんですよね。」
「そうなんですね...
そんな穴場みたいなのを僕に教えてもいいんですか?」
「大丈夫ですよ。
だってあなたにずっと教えたかったんですから。」
ふふっと照れくさそうに笑いながら相手は
一緒に頼んだアールグレイを少し冷まして1口飲む。
ふんわり香るアールグレイが似合う相手に心臓がうるさくて
ケーキも紅茶も味がしない。
強いて言えば...恋の味がこういうのなんだろうと
無理やり解釈した。
語り部シルヴァ
10/27/2024, 11:44:53 AM