きらめき
小さい頃、仕事で忙しかった親が
遊園地に連れていってくれた。
夕方眠くなってウトウトとしてきた頃に
お母さんが見て見てと指を指した。
その先には暗くなっていく世界とは別で優しい明かりを
いっぱいつけたパレードカーが列を作ってゆっくり進む。
その上でキャラクターが踊ったり、ピカピカと何色もの色が
交互に光ったりする光景は眠気を飛ばし今からもう一度
遊園地で遊びたいと思わせてくれた。
大人になった今でもあの日と似た夕焼けを見ると思い出す。
闇の中に優しく輝いていたあのパレードを、
親が忙しい中くれた思い出を...
あのきらめきは、一生忘れないだろう。
語り部シルヴァ
些細なことでも
君がメッセージに顔文字を付けないと機嫌が悪いのかと思ってしまう。
君が素っ気ない返事をすると元気がないのかと思ってしまう。
君がゲームをしないと疲れてるのかと思ってしまう。
君の小さな変化を見つけてしまったら君に何かあったんじゃないかと思ってしまう。
過保護かもしれないし、余計なお節介かもしれない。
君のことが好きだから、少しでも何かあったなら力になりたいから...
そんな気も君はきっと知らないだろう。
君は僕と性格が真逆で楽観的だから。
そんな君が好きだからそのままでいて欲しい。
だから君が困るようなことは言わないつもりだ。
それも君のいいところだと好きになりたい。
語り部シルヴァ
心の灯火
手術は無事成功した。
あとは...こいつ次第だ。
静かに眠る友人を見つめながら今日も祈る。
友人は優しい。それが故に自己犠牲を躊躇わない性格だ。
今回も車に轢かれそうな子供を庇って
自分が轢かれてしまった。
打ちどころが悪く、手術が必要なくらい重症だった。
医者の腕と友人の体力があったのもあって
手術は成功したものの、一向に目が覚める気配がない。
バイタルサインにはしっかりと
心臓が動いていることを表すグラフが動いている。
看護師に許可を貰ってそっと手を握る。
自分の手は冷たいと言っていた友人の手は暖かい。
自分勝手かもしれない。わがままかもしれない。
でも目が覚めたらこいつとやりたいことがいっぱいある。
伝えたいことも...
だから命よ枯れないでくれ。
その灯火を絶やすことなく目覚めてくれ。
語り部シルヴァ
開けないLINE
"大事な話があるの。"
LINEのトーク一覧の1番上。
固定されたトークにはそう書かれていた。
ついさっきまで楽しくお話していたはず。
急に温度差の激しいメッセージが来たと感じる。
大事な話があると言ってロクなことが無かった僕からすれば
ほぼ呪いの呪文のようなものだ。
スマホを持つ手は震えるし目の焦点は若干合わなくなる。
呼吸も浅くなる。
仲良くお話していた君とも今日でお別れなのかもしれない。
それならいっそこのままで...
は未読無視してしまうのは明日学校で会うと気まずい。
深呼吸をしてため息のように息をはく。
よし。もうなるようになれ。
勇気を振り絞って開けなかったトークを押して
"どうしたの?"と返した。
返ってきたLINEに僕は驚愕するのはあと数分後の話...
語り部シルヴァ
不完全な僕
どんな事があっても守れるように力を手に入れた。
死ぬことがなく永遠に生きれるように体を捨てた。
どんな予測もできるように脳にCPUを搭載した。
感情に振り回されないように心を消した。
僕はより完全な生き物になるために今の人間が欲しいであろうものを全部搭載した。
おかげで災害に会った人を守れた。
愛する人を最後まで見届けれた。
突然の出来事にも対応出来た。
常に平常心でいれるようになった。
俺は完璧だ!完全体だ!
私は人の理想だ!
...違うよ。
どこからともなく声が聞こえた。
誰だ?
君が消した心だ。
今更何の用だ?
君は完全体じゃない。
力に嫉妬しているのだろう。
聞く耳を持たずに無視していると、強い声が聞こえた。
「君は...人の心を失った。人の体を失った。人であることを辞めたんだ。君は...不完全だ。」
消したはずの感情にもやがかかる。
僕は...俺は...私は...どうすれば良かったんだ。
語り部シルヴァ