一尾(いっぽ)in 仮住まい

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3/21/2025, 3:51:10 PM

→君は青と表現し、私は緑だと言うことが度々ある。

ところで、私と君の見ている景色が一緒だという確証は、どこにあるんだろうね?

試しに答えてよ。
目の前の信号、何色?

テーマ; 君と見た景色

3/20/2025, 10:51:20 PM

→意固地・解凍

負けるもんかと独り相撲
固く結んだ拳を振り回して
周りなんか見る余裕もなく踏ん張って
今日までやって来た

「そんなに必死にならなくてもいいんだよ」
骨が白く浮き立つ僕の指を一つずつ
あなたは丁寧に優しく解いた
久しぶりに五指の離れた掌に風

握るもののなくなった僕の手に
あなたの手が重なる
あなたはのんびり歩き出す
僕の手を引いて
「ちょっとゆっくり散歩でもしようよ」

あなたの体温が雪解けのように
僕の意固地を解かしてゆく
僕の肩から片意地が落ちた
突き出しすぎていた顎が下がった

勝ち負けではなく二人で
繋ぎ合わせた手の温かさ
目に映るものをしっかり見て
今日から歩き出そう


テーマ; 手を繋いで

3/20/2025, 9:20:08 AM

→短編・短編迷子

「どこ?」
 坂道の途中で、幼い声が私の足を止めた。質問の意味を求めて声の主を見遣る。
 おかっぱ頭の少女が小首を傾げて私を見ている。知らない顔だ。私たちの視線が交わると同時に、彼女は再び「どこ?」と同じ質問を繰り返した。
「何か探し物かな?」
 取り合う義理もないが、無視するのも気が引ける。不完全な問いに対して私はなるたけ優しく問い返した。
 少女は頭を振った。おかっぱの髪が揺れる。
「ここ、どこ?」
 幼年者独特の澄んだ瞳が、縋るように私を凝視する。そうか、迷子か。
 さて、どうしたものか。まずは、ここがどこかを教えて、彼女がとこから来たのか、誰と来たのかを訊いてみよう。
「うん、ここは、ここ……?」
 ここは坂道? いや、階段坂? ドクンと心臓が大きく震えた。あれ? 私はどこにいるんだ? 
「坂道の途中」しか解からない。都会か田舎か住宅街か、文字の情報はほとんどない。え? 文字?? 文字の情報?
「ここはどこ? わたしはだれ? あなたはだれ?」
 おかっぱの少女。しかしそれしか解らない。身体については書かれていない。つまり生首。
 圧倒的に描写の足りていない小説で、辺りは穴だらけ。
 坂道と生首だけの奇々怪々の世界で、私は自分を確認しようとしたが、何もなかった。私に関する記述は、何もなかった。

テーマ; どこ?

3/18/2025, 4:37:14 PM

→短編・本気と書いてマジと読む(キリッ)。もしくは昼飯時のカオス。

 弁当に目線を落とす男。主菜、副菜、薄紅色の飯のバランスが素晴らしい弁当だ。
「俺、ゆかりのこと、本気で好きかも」
 片や、菓子パンに食らいつく男。友人の弁当をチラッと横見する。
「マジか!」
「マジで。どうやったら両思いになれるかな?」
「……シソふりかけと付き合うって? お前、それ、マジでヤバいだろ……」
 その忠告を聞き流したのか聞き入ったのか、男はシソ風味飯を無言で食べ始めた。もう一人も無言でパンを食べる。
 ゆかりの上品な香りが微かに漂い二人を包んだ。


テーマ; 大好き

3/18/2025, 2:51:57 AM

→ゴミ。
 
「捨てちまえよ、そんなもん」

自分の中の呆れた声。

夢を諦める線引きを見誤って、途方もない遠くまで来ちまって、いまさら引き返せやしない。

昔は新鮮で輝いていた。そのうち生ゴミになって腐って、今じゃスッカラカンの粗大ゴミだ。
もはや腐敗はしないが、場所は取るし重量もある。

心にも許容範囲はある。ゴミが散らかったままでは塩梅が良くない。
だから心の声は囁くんだ。
「捨てちまえよ、そんなもん」

そうだな、そうして心の断捨離ができりゃ、夢を思い出に酒の肴にできるかもな。熟成年度だけはハンパねぇから、スルメ並に噛みしめられるんじゃないかな。

そんな新しい第一歩を踏み出してぇなぁ。
でも、できないんだよ。

ゴミになった夢でも、日によっては眩しくってさ。手を伸ばそうとしちまうんだよ。
愚か者だよなぁ。
笑えねぇや。

テーマ; 叶わぬ夢

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