一尾(いっぽ)in 仮住まい

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12/18/2024, 6:06:30 AM

→閑話・『行列の二人』

 ごきげんよう。
 とりとめもない話量産コンテストがあるなら、グランプリを取る自信のある一尾(いっぽ)でございます。
『行列の二人』が、とうとう第4話まで進んでしまいました。意味不明すぎて、なんでこんな話を書こうと思ったのかナゾ。それを続けようとしているのもナゾ。
 作中で彼らの名前に触れることは、おそらくない(あってもラストのみ)ですので、一応人物紹介しておくと――
・ツッコミ 田辺 凛太郎
・ボケ   西脇 真琴
・毎回居合わせるお姉さん 矢萩 沙織
 ザ・行列の2人は高校2年生で、矢萩さんは社会人です。
 第4話が折り返しで後半に入ります。このペースで行くと終わるのは来年ですかね? 
  あ~、恐ろしい! 来月のことを来年と表現できる12月! 遠かった来年が、あっという間に目の前だ。
 6月からアプリを始めて早や半年。テーマ書きに軽ぅい繋がりを勝手に感じて心地良くなっております。皆さまと出会えたことに感謝です。
 あざーす² !!

・小話〜矢萩さん〜
 有名パン屋でパンを買おうと並んでいる。ひとりなのでスマートフォンと時間つぶし。けっこうな時間、ショート動画を追っていると思ったが、待ちの列はさほど進んでいない。
―ショート動画沼、深く濃い。
 動画をやめて、SNSにそう打ち込んだ。とりとめないこんな呟きだから、私のフォロワーは友人くらい。
 始めたキッカケは手持ち無沙汰対策。何もできないけど完全に暇ではない、でも暇〜ってヤツね。例えば行列の待ち時間とか。
 しかし最近は、列に並ぶと思わず彼らを探してしまう。ザ・行列の2人、ボケくんとツッコミくん。
 会えたらラッキー。隠れなんとかみたいな? たまたまが続いているだけで、いつか会わなくなるんだろうなぁ。
「目指せ!!高級パン屋の日常使い!!」
 おっ! 上場企業の目標発表みたいな気合のこもったこの声は!
「ムダに声デケェし!」
 ピシャリと打ち切る冷静な合いの手!
 これはもしかして……、ザ・行列!
 しかし、制服姿の2人は、並ぶことなく通り過ぎていった。
 そっかぁ〜、そうだよなぁ、ここのパン、高校生が買うには高いもんなぁ〜。
 私は歩きゆく2人の背中を見送った。

テーマ; とりとめもない話

12/17/2024, 2:06:40 AM

→短編・お年頃病

「『子どもはカゼの子、元気な子』のカゼってさぁ、ずっと病気の風邪だと思ってたわ」
「あ~、ありがちなヤツ」
「それな」
 今日の耳にした、通りすがりの中学生の会話が不思議だったので、食卓の会話に乗せてみようと思った。
 ちょうど娘は彼らと同年代だ。
「なぁ? 『子どもはカゼの子、元気な子』のカゼは病気の風邪だって思ってたりするか?」
「は?」
 反抗期真っ盛りの彼女は、話しかけられることが苦痛とばかりに鼻にシワを寄せた。
 どうやら今日は機嫌が宜しくない、若しくはこの会話は意に沿わないらしい。
 妻はやれやれとあらぬ方を向いた。
「そんなの、決まってんじゃん」
 娘は夕食をかき込むように終わらせ立ち去った。
 会話を失敗したことも気になるが……。
「どっちだったんだ?」
 普通に回答も気になった。
「さぁ?」と、苦笑した妻は肩をすくめた直後、バタン!とダイニングの扉が開いた。
「カゼって言ったらカゼだし! それとお父さん! 私よりも先にお風呂に入らないで!」
「はいはい」
「はい、は1回!」
 再びバタン!と扉が閉まった。
 結局、回答は回答にならず。
 夫婦二人で笑いを噛み殺す。かまってほしいんだが、ほっといてほしいんだか……。
 風邪よりも正体不明の、娘のお年頃病はもう少し続きそうだ。

テーマ; 風邪

12/16/2024, 3:18:00 AM

→短編・雪を待つ。〜行列の二人・4〜

 昨晩から降り出した雪は、日が昇っても止むことなく降り続き、都市の交通インフラを混乱させていた。
 通勤通学時間、電車のホームは人であふれかえり、まったく役に立たなくなった時刻表を当てにすることなく、電車が来るのを辛抱強く待っている。
 そして私もそのひとり。乗換駅で電車を持っているのだが、おそらく仕事の始業時間には間に合わないだろう。かなり早くに家を出たんだけどなぁ。ホームに蔓延する空気感は諦めと苛立ちの両方が入り乱れている。
「雪、止まねぇな」
 後ろから、呆れたような諦めたような声が聞こえた。あれ、この少し低い冷静な声、聞き覚えがあるぞ。もしかして、ザ・行列(私命名)のツッコミくん?
「俺、気合いで止ませてみようか?」
 そして、もう一人のイケボなのにアホっぽい返答は、ボケくんだ!
「雪よ! 止め!」
 力強く響く迫力のある声が雪に命令した。あっ、これ、天に向かって言ってるわ。安定のボケ。
「おまっ! こんなところで変な動きすんな! 恥ずかしいだろ!」
 ツッコミくんの焦る声。
 二人のやりとりにクスクス笑い広がりだした。笑いから逃れようと咳払いする人までいる始末だ。
 くそぉ〜、彼らの後ろに並びたかった! しかし振り向くってのも不審者っぽいし。
「え? でも、やっぱ呪文に動きは必須じゃん」
「混雑してるところで手ぇ振んなって! そもそも呪文なんて使えねぇだろ!」
「でも、俺、今日の雪にちょっと関係あるからなんとかしたいんだよね……」
 急にボケくんのしんみり声。ど、どうした? 天然超えての電波!? 
 二人を中心に何となく静かになる。周囲が完全に二人の会話にロックオン。
 ボケくんの声、本当によく通るし、人を惹きつけるんだよなぁ。声優とかVTuberとかやれば人気出そう。
「小学校の時の書き初めが何書いてもイイ系だったから……、俺、何も考えず……『雪を待つ。』って書いちゃってさぁ! 今日のこれ、絶対アレが叶っちゃったんだよ!」
 ボケくんの罪悪感と、周囲の「すーん」感の乖離が甚だしい。時間差!というツッコミ感が漂っている。
「……言うことは、それだけか?」
 唯一この場を収めることのできるツッコミくんが、振り絞るような声で己の使命に立ち向かった。
「罪深いだろ?」
 ボケくんの哀愁を誘う雪よりも静かな声は、覚悟に立ち向かう意志を感じる。まるで自分の責任を果たそうとする勇者のようだ。
「能力系漫画の読みすぎ! 目ぇ覚ませ!」
 スパーンと音がした。
「痛っ!」
 後ろで何が起こったのかは見なくてもわかる。
 素晴らしい、ボケとツッコミをありがとう。声優でもなくVTuberでもなく、二人で芸人養成所に行ってください。今から推します。
 あっ、電車待ってるの忘れてた。

テーマ; 雪を待つ

〜行列の二人〜
 ・10/26 一人飯(テーマ; 友達)
 ・11/1 展覧会(テーマ; 理想郷)
 ・11/13 良い子も悪い子も真似しないでね。
      (テーマ; スリル)

12/15/2024, 8:29:42 AM

→月とか、渋滞中の車道とか、イルミネーションとか……

 通常は光の輪郭がきっちりと見えるんよね?
 私は乱視なので、自家製エフェクトでエエ塩梅に見えます。
  キラキラ反射。常に映え写真、みたいな? 何となくお得な気がするのは、私が貧乏性だからでしょうか? それとも、関西人だからでしょうか?
 

テーマ; イルミネーション

12/13/2024, 4:54:49 PM

→短編・ひとり酒

 ハート型ボトルのウィスキーが実家から送られてきた。親父がゴルフコンペのニアピン賞でもらってきたものらしい。実家は全員下戸なので、唯一酒の呑める俺に回すことにした、と母親はそう説明した。
 コロンとしたハートがなんとも可愛らしいボトルだ。ミニサイズを想像しがちだが、実はフルボトル。しかもラベルに「愛」の文字入り。ファンシーさとイカツイさを併せ持ったボトルだ。
 そして20代独身男の部屋に微妙な哀愁をもたらしてくれている。
 早々に終わらせたいのだが、ウイスキーのフルボトル、なかなか減らんのよ。
「う〜ん」
 一声唸って、ボトルのウイスキーをグラスに注ぐ。気合いの入った達筆の「愛」の強烈な存在感がすごい。同じ愛なら人間の愛がイイ。
「愛を注いで、愛を求める……、なぁんてね、ハハ」
 破れかぶれな独り言が辛い。
 ヤバい、マジで人恋しくなってきた。マッチングアプリ、登録しようかなぁぁ。

テーマ; 愛を注いで

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