一尾(いっぽ)in 仮住まい

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→短編・お年頃病

「『子どもはカゼの子、元気な子』のカゼってさぁ、ずっと病気の風邪だと思ってたわ」
「あ~、ありがちなヤツ」
「それな」
 今日の耳にした、通りすがりの中学生の会話が不思議だったので、食卓の会話に乗せてみようと思った。
 ちょうど娘は彼らと同年代だ。
「なぁ? 『子どもはカゼの子、元気な子』のカゼは病気の風邪だって思ってたりするか?」
「は?」
 反抗期真っ盛りの彼女は、話しかけられることが苦痛とばかりに鼻にシワを寄せた。
 どうやら今日は機嫌が宜しくない、若しくはこの会話は意に沿わないらしい。
 妻はやれやれとあらぬ方を向いた。
「そんなの、決まってんじゃん」
 娘は夕食をかき込むように終わらせ立ち去った。
 会話を失敗したことも気になるが……。
「どっちだったんだ?」
 普通に回答も気になった。
「さぁ?」と、苦笑した妻は肩をすくめた直後、バタン!とダイニングの扉が開いた。
「カゼって言ったらカゼだし! それとお父さん! 私よりも先にお風呂に入らないで!」
「はいはい」
「はい、は1回!」
 再びバタン!と扉が閉まった。
 結局、回答は回答にならず。
 夫婦二人で笑いを噛み殺す。かまってほしいんだが、ほっといてほしいんだか……。
 風邪よりも正体不明の、娘のお年頃病はもう少し続きそうだ。

テーマ; 風邪

12/17/2024, 2:06:40 AM