→短編・別れ変速機
学校帰り、連れがこんなことを言い出した。
「この前、別れギアにさぁ」
「ん? ちょっと待った。なんて?」
「別れギア。あー、もしかしてギアじゃなくてギヤ?」
「何、ちょっと恥ずかしそうにしてんだよ。そもそもギアでもギヤでもねぇわ」
「え? マジで? でも、別れをギアチェンジするんだよな? よっ!って別れるときと、うぇ~いって別れるときあるじゃんよ。空気読めや感、重要じゃね?」
「お前、よく高校までやってこれたな」
何でそんな「ヘヘ、止せやい」みたいな照れ笑いしてんだよ。褒めてねぇわ。
結局、あまりのことにヤツの会話は宙ぶらりんのままになった。はぁ、全く! 別れ変速機って何だよ……。
……。
…………。
ダメだ……。めっちゃどうでもいいのに、どうしようもなく気になってきた。
アイツ、どんなギアで誰とどんな別れをしようとしてたんだろう?
テーマ; 別れ際に
→短編・雨降って地固まる。
通り雨だと解っていて、彼女は彼を呼び出した。
「駅前の喫茶店で雨宿りしてるの。早く傘を持ってきて」
通り雨だと知っていて、彼は彼女に「うん」と答える。
「すぐに行くよ、少し待っていて」
彼が喫茶店に着く頃、彼女はパフェを注文した。二人はテーブルのパフェを挟んで向かい合う。
「僕の好きなヤツだ。ありがとう」
彼がぎこちなく礼を口にし、それを受ける彼女もまた固い顔で、ポツリと謝罪の言葉を口にした。「話の途中で飛び出してってごめんなさい」
「こっちこそごめん。一方的に言いたいことだけ言っちゃって」
「お互い、感情的になりすぎたわね」
「引くに引けないって不毛な空気、バシバシだったよね」
苦笑した彼はパフェを二人の間に滑らせた。
どちらともなくスプーンを手に取る。生クリーム、アイスクリーム、フルーツ……。他愛もない会話とともに。
スプーンがコーンフレークに進む頃、二人の緊張は解れ、寛いだ様子に変わっていた。
「雨、止んだね」
「通り雨だもの」
短い雨の後、太陽が顔を覗かせる。濡れた地面に陽光が反射する。キラキラと美しく輝く。
喫茶店を後にした二人は、普段よりも固く手を繋いで帰路についた。
テーマ; 通り雨
→しりとりに挑戦
秋🍁
↓
🍄きのこ
↓
🌼コスモス
↓
🌾ススキ
↓
🍇巨峰(品種)
↓
📣運動会
↓
🌾稲穂
↓
🍏豊水(品種)
↓
🍠芋
↓
🍁もみじ
↓
📖じっくり読書❣️
↓
🍎陽光(品種)
↓
🐰うさぎof🎑
↓
↓
うーん……うさぎの「ぎ」にするか、お月見の「み」にするか……、まぁ、もうイイや!
兎にも角にも、「み」のり(実り)の秋🍁だ!!
🌰栗も🐟️サンマも🎃かぼちゃも美味い! 天高く馬肥ゆる秋🍁
秋の味覚、万歳🎉
テーマ; 秋🍁
→短編・窓の景色で気分上々
話の流れで友人と遊ぶことになった。駅のコンコースで待ち合わせ。
彼女の姿を探すも、まだ到着してはいないようだ。通りに飛沫をあげる雨が降っている。思わずため息。吹き抜けのコンコースに雑踏と雨の音が反響する。
どんより曇天、雨の空。足元は濡れるし、湿度で髪はうねるし、あまり宜しい気分ではない。
街行く人も何処となく沈んで見える。
「ごめんごめん、待った?」
「いま来たところ」
そんなやり取りもそこそこに私たちは通り向こうの商業ビルに行くことになった。雨を避けて遊ぶにはちょうどいい場所だ。消極的な消去法。
雨の下、二人で傘の花を咲かせる。
私は友人の傘が新調されていることに気がついた。「それって……」
彼女は傘の柄をぐるっと回した。「懐かしいっしょ?」彼女のパステルカラーの傘には、一角だけビニールの窓がついていた。
傘の視界不良を防ぐための窓付き傘は、子ども用こそ見たことがあるが、大人用は初めて見た。
「しかもこの窓、見て」
私は友人の傘に顔を突っ込んで窓から向こうを覗く。「世界がピンクだー」
ビニール窓は仄かにピンクで、曇天も相まって、私にくすんだピンク色の世界を見せた。
いつもの景色が古い映画のよう。雨はフィルムのノイズで、通りを行く人も雨に光る歩道も物語の世界みたい。
私もこの物語の一部だと思うと、何か気分が上がってきた。
「何かちょっとキュンってならない?」と、友人に問いかけられて私は大きく首を縦に振った。
「なるなる! この窓を通して動画を撮れないかなぁ?」
「おっ! やる気ですなぁ。そこの公園で踊って、動画をバズらせますぅ?」
目的地変更。積極的に攻めて行こう!
流行ってる曲とかダンスを相談しながら、意気揚々と私たちは公園に向かった。
テーマ; 窓から見える景色
→短編・平屋暮らしの二人?
「ちょいとそこの新聞を取っておくれよ」
テーブルの上、彼の手の届くあたりに新聞が投げ出される。
「近頃はメガネがねぇとなぁんにも見えやしねぇ」と愚痴ると、頭の上から老眼鏡が降ってくる。
こじんまりとした居間に丸テーブルとテレビ、茶箪笥が一つ。部屋の窓や間仕切りの襖障子は開け放たれ、爽やかな少し冷たい空気が方々を抜けてゆく。
経済、地方欄……、新聞をめくっていた彼の手がスポーツ欄で止まった。
「カーッ!」と不満の叫び声と共に、彼はピシャリと片手で額を打った。「不甲斐ねぇなぁ! 見てみろよ、この点差!」
トントンと指で示す記事は、野球の試合結果だ。彼の応援するチームはこのところ連敗している。彼は不機嫌にテーブルから新聞を持ち上げた。
「今シーズンは絶望的だな、こりゃ」
テーブルに熱い湯呑みが置かれる。チラリと横目にそれを見て、彼は相好を崩した。
「ありがとよ、いつもすまねぇなぁ」
彼がこの平屋に移り住んで2年ほどが経つ。築60年を超す木造の平屋は所々にガタがきており、隙間から風やら虫やらがやってくる。
住み始めた当初は何とかしようと苦闘したものだが、防げないと悟るや否や、来るものは拒まずの境地に達して今に至る。
そして、有形でも無形でも受け入れてしまえば、後は気軽なもので、そこそこ仲良くやっていける。風や虫、或いは……。
新聞を読み終えた彼は居間をくるりと見回した。風の気配が消えている。いつの間にやら窓が閉まっていた。窓に小雨が雨だれを作り始めている。
テーブルの上の照明が何度か瞬いて居間を照らす。
彼はそれをぼんやりと目で追った。
「アンタの声、聞いてみてぇなぁ」
一人暮らしの平屋の居間で、彼はポツリと呟いた。
テーマ; 形の無いもの