きらの。

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5/15/2024, 10:27:26 AM

後悔


安定した職につきたい。
そう言って私は彼女の誘いを断った。
彼女と私は高校の時、一緒に軽音楽部に所属していてバンドを組んでいた。毎日のように歌っていた。
私は彼女のギターに合わせて歌うのが大好きだった。
高校を卒業し、同窓会で久々に会った時、一緒にバンドを組まないか。と言われた。
私は高校のときを思い出し首を縦に振ろうとしたが両親の顔が頭をよぎった。
学力の高い大学に行きたいと言う私の願いを聞いて、高い学費をずっと払ってくれていた。
私は彼女の目を見ることなく首を横に振った。
彼女は、無理やり笑ったような顔をし、「そうだよね。急にごめんね。」といいその場を去っていった。


そんな彼女との次の再会はテレビ越しだった。
お昼のニュースで彼女の顔写真が出る。交通事故で彼女は不運にも操作不能となった車に轢かれて亡くなってしまった。正直その時私はなんの言葉も出せず考えもまとまらなかった。
しばらく経ってから彼女は一人暮らしをしていた事が分かり、尋ねてみることにした。
インターホンを鳴らすと、クマができやつれた顔の彼女の母が出迎えてくれた。
「お久しぶり。今日は来てくれてありがとう。」
彼女の母は私を机に座らせるとキッチンの方へ向かい、お茶の準備を始めた。
彼女の家に入るのは実は初めてなのでキョロキョロと辺りを見回していると、見慣れたギターの横に楽譜が置かれていた。
私はその楽譜に近寄り、一つ一つの音符を眺めるように見た。
その曲は高校の時に飽きるほど一緒に演奏した曲のアレンジバージョンだった。私は懐かしむように軽く微笑んでいると右上に彼女の名前が書かれていることに気づいた。
そこには、彼女の名前と共に私の名前も書かれており、その横には「ボーカル」と書かれていた。
私はその文字を見た瞬間ゆっくりと膝から崩れ落ちた。後悔したって遅い。そう分かってはいるものの涙が止まらない。私は目の前にあるギターを優しく撫でながら「ごめん。」と呟いた。

5/5/2024, 12:37:08 PM

君と出逢って

僕が君と出会った時にはもう遅かった。既に君は死んでいて幽霊として僕の部屋に住み着いていたのだから。
同級生にはいじめられ、親からも見捨てらてた僕にとっては生きている人間より君の方がすごく美しく見えた。さらさらとした黒髪に真っ黒な垂れ目。
そんな彼女の姿に僕は徐々に惹かれていった。そんな僕の気持ちに君も気づいたのだろう。お互いが意識し始めながらも僕たちの間には分厚い壁があった。
決して触れることはできない。彼女は言葉を発しないので喋れるのかは分からないが僕は君に毎日プロポーズをした。
彼女はその度に僕から視線を外した。それはまさにNOという意味だった。
けど、ある日彼女にいつものようにプロポーズすると、彼女はゆっくりと小さく頷いた。と、同時に彼女は徐々に消えていった。成仏したのだ。
僕はその状況を上手く呑み込めず、ただ泣きながら見つめることしか出来なかった。
彼女は最後に微笑みながら言った。
「まだまだ長生きしてね。ずっと待ってるから大丈夫だよ。」

5/4/2024, 3:02:27 PM

耳を澄ますと

三階の窓から美しい歌声が聞こえてくる。
放課後の外の校舎沿いの道には多くの生徒が歩き回っている。ザワザワと常に音が聞こえる空間で、耳を澄ますと合唱のハーモニーしか耳に入ってこなかった。
一気に高音で盛り上げたところで、急に静かになり美しく細いが芯がある1人の歌声が聞こえ始める。
毎日その声を聞くために、放課後毎日この道を通っていた。顔も見たことなければ名前も知らない人のその歌にとても惹かれていたのだ。



「〜♩〜♩〜〜♩」
まだ眠たげに目を擦り、ベットから状態を起きあげると学生の頃と全く変わらない歌声が聞こえてくる。リビングにパジャマのまま行くと、キッチンでその鼻歌を歌っていた少女はゆっくりと振り返る。
「おはよう。」

4/25/2024, 8:12:13 AM

ルール

ルールがなくなったらどうなるか。
そんな授業に俺はもう飽き飽きしていた。
どうせこの世に浸透してしまったルールなんて変わるわけもない。考える意味もない。
家族とは結婚できない。俺と義妹はそんなルールの世界で生まれた。
絶対に結ばれてはいけない。ルールなのだから。
そうやって俺は今日も自分に言い聞かせた。

4/13/2024, 4:03:53 PM

快晴

高校を入学してからしばらくがたった。自分はまだグループに入れてなく、常に孤独を感じる。
いつも考えることは中学校時代の友達だった。
(誰だよ。高校は楽しいとか言ったやつ。全然楽しくない。)
一人ぼっちでお昼を食べ、受けたくもない授業を聞き流す毎日飽き飽きとしている。
(なんか辛いな。)
ふとそう思い、空を見上げる。
ウンザリするほど綺麗な快晴だった。
何も今の状況は変わってないが少しスッキリした気がした。

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