沈む夕日
この村では昔からの言い伝えにより、今でも生贄という事を続けている。
言い伝えによると、毎年決まった日時に1人若い娘を生贄として神に渡さないと、その日の夜には村が滅ぶというものらしい。
1度どけ、生贄を神に受け渡すところをこっそりと見たことがある。
滝が流れているところに大勢の大人が並び、先頭に立っている白い服を着た生贄がたっている。笛の音が鳴ったと思ったら、生贄の女の人が滝に飛び降りていった。
それを見た瞬間、僕は悟った。
(生贄なんかじゃない。殺されるんだ。)
幼い頃見た光景が走馬灯のように蘇る。
今、僕は今年の生贄として選ばれた幼なじみの手をひき、ひたすら逃げている。
この先、どうなってもいい。ただ彼女さえ救えたら。
「はぁ、はぁ、ここが村の端だ、、。」
彼女はまだ不安げな表情をし、村の方をちらちらと見ている。
「大丈夫。僕が絶対君を守るから。」
そういうと彼女は糸が切れたように泣き始めた。
沈む夕日を見ながら、村へは振り返らず2人歩き始めた。
君の目を見つめると
ある日、少年はメデューサと恋をした。中世ヨーロッパ、町外れの村の貧乏な少年は山でひとりぼっちのメデューサの女の子を見つけた。
女の子は服がボロボロで目に布を巻き付けている。
少年はその姿を不思議に思いながらも家に連れて帰り、一緒に生活を共にした。
成長していくと共に2人はお互いに恋に落ちた。
「私メドューサなのよ。」
そう聞いた時、少年は少し驚いたが受け入れ、共に生きていくことを選んだ。
けれど、それを村の人は許さなかった。メドューサの事を恐れ、2人の住む家に火をつけた。
燃えていく家の中で2人は抱き合う。
少年はメドューサに言った。
「君と一緒にいられてよかった。」
メドューサはその言葉を聞くと「私もよ。」と言い、目隠しを外した。
メドューサの目は輝く綺麗な青色だった。少年は石になり、メドューサはその石に抱きつきながら炎の中に消えていった。
今でも石になった少年は村はずれに1人たたずんでいる。
星空の下で
「今日、10年に1回の流星群らしいよ。」
大人2人で並ぶと少し狭いくらいのベランダでココアを飲みながらそう呟いた。
「だから今日、珍しくベランダに出ようだなんて言ってきたんだね。」
彼も同じようにココアを飲みながら言った。
キラキラと輝く星空の下、2人空を見上げながら手を繋いだ。
(10年後もまた2人で同じように見れますように。)
私は彼の横顔を見た。彼の目にうつる星空は何よりも綺麗だと思った。
幸せに
「私、今が1番幸せかも。」
「私だって同じ。」
そう言って私たちは車の中で寝っ転がりながら、手を繋いだ。
私たちの出会いはついこの間だ。とあるサイトでの集いで繋がり、そこから実際に会って話していくうちにどんどんお互いに打ち解けていった。
「今だから言うけど、あなたみたいなすごく綺麗な人が私のように死にたいって思ってるなんて驚いたよ。」
そういうと彼女は吹き出したように笑いだした。
「そんなの私だって同じだわ。あなたみたいな素敵な人、、、」
そこまで言うと彼女は真剣な顔で私の目を見た。
「来世で私達また会えるかな。」
私は彼女の手を強く握って微笑みながら言った。
「もちろん。」
そういうと私たちは涙を流しながら意識を手放していった。
何気ないふり
「お兄ちゃんが好き。」
そういうとお兄ちゃんは何気ないふりをしてにっこりと微笑み返した。
私はそんなお兄ちゃんを見て絶望を感じた。
私はお兄ちゃんが好きだ。血が繋がってるけど、だけどそれがなんだ。と自分に言い聞かせてきた。
今日やっと勇気を振り絞って告白したのに彼は断った。
笑顔で誤魔化してるつもりだろうけど、私わかるよ。はっきりとお兄ちゃんは私と兄弟でいたいと思ってること。
(思ってること丸わかりだよ。だってお兄ちゃんの妹だもん。)