千年先のあなたへ
千年先も
風は名前を持たずに吹き
誰かの祈りを
そっと運んでゆくのだろう
千年先も
海は深く息をして
忘れられた涙さえ
やわらかく抱きしめるだろう
千年先も
人は誰かを想い
誰かを失い
それでも歩くのだろう
そして
千年先のあなたが
もしも孤独に震える夜があれば
この言葉が
かすかな灯りとなるように
――千年の時を越えて
あなたの心に
静かに触れる詩でありますように
眞白あげは
勿忘草
風の隙間に
そっと揺れる青のひかり
名を呼べば
返事のように震える花びら
忘れないで、と
誰よりも小さな声で
春の土に根を張り
空の色を映しながら咲いている
手のひらにのせれば
すぐにこぼれてしまうほど儚くて
それでも
心の奥では消えずに残る
別れのあとに
静かに芽吹くものがあるなら
きっとそれは
勿忘草のような
やさしい記憶なのだろう
眞白あげは
ブランコ
風の手に
そっと背中を押されて
空へゆらりと浮かび上がる
地面と空のあいだを
行ったり来たりするたびに
胸の奥の小さな不安が
ひとつずつほどけていく
遠ざかる景色は
昨日の悩みのように淡く
近づく空は
まだ知らない未来の色をしている
足を伸ばせば
もう少しだけ高く
もう少しだけ自由に
世界が揺れて見える
降りるとき
ほんの少し名残惜しいのは
あの一瞬だけ
自分が風になれた気がするから
眞白あげは
旅路の果てに
風が背を押すたびに
私は少しずつ 誰かを置いてきた
砂に埋もれた約束
雨に流れた言葉
それでも 歩みは止まらなかった
見送る背中に 言えなかった「ありがとう」
振り返るたび 胸に残る「ごめんね」
旅路の果てに 何があるのか
誰も知らないまま それでも進む
地図のない道を選んだのは
誰かのためじゃなく
私自身のためだった
そして今
ひとりで立つこの場所に
静かな誇りが そっと芽吹いている
眞白あげは
あなたに届けたい
あなたに届けたい
言葉になる前の
胸の奥のあたたかさを
朝の光に溶けていく不安も
夜の静けさに沈む願いも
ひとつ残らず拾いあげて
そっと手のひらにのせたい
強くなくていい
完璧じゃなくていい
ただ、あなたがあなたでいることを
まっすぐ抱きしめられるように
この声が
あなたの明日を少しでも照らせるなら
それだけで
私は十分に幸せだ
眞白あげは