街へ
街へ向かう
まだ夜の名残をひきずった空気のなか
信号の青が
ひとり歩く私を
そっと押し出す
アスファルトに落ちた影は
昨日より少しだけ
まっすぐで
少しだけ
強がっている
開きはじめた店の灯りが
胸の奥の不安を
ひとつずつ拾い上げて
温めてくれるようで
私は今日も
街へ向かう
誰かの声に触れるため
誰にも触れられない私を
確かめるため
街はいつも
私の知らない顔をして
それでも
私を迎え入れてくれる
だから私は
また歩き出す
街へ
まだ見ぬ私へ
眞白あげは
優しさ
ひとさし指でそっと押す
閉まりかけたドアの隙間
誰かのために開けておく
それだけで、風が通る
言葉にしない気づかいは
空気のように見えないけれど
呼吸のたびに沁みてくる
心の奥に、静かに灯る
優しさは、強さじゃない
でも、折れない
優しさは、光じゃない
でも、照らす
誰かの涙に触れたとき
自分の手が、あたたかいと知る
それだけで、世界は
少しだけ、やさしくなる
眞白あげは
ミッドナイト
真夜中は
世界がそっと息をひそめ
時計の針だけが
静かに時を削ってゆく
闇の底で
ひとつだけ灯る思いが
胸の奥を
淡く照らし返す
眠れぬ夜に
耳を澄ませば
遠くで揺れる
未来の気配
ミッドナイト
誰にも見えない場所で
わたしは今日の続きを
そっと抱きしめている
眞白あげは
安心と不安
不安は
胸の奥で小さく震える影のように
名前のない未来を
そっと揺らしてくる
安心は
その影のとなりに座る
あたたかな灯りのように
手のひらを静かに照らしてくれる
どちらも
わたしの中に住んでいて
行きつ戻りつしながら
今日という道を歩かせている
不安があるから
一歩をためらい
安心があるから
その一歩を踏み出せる
影と光が
同じ場所に落ちるように
わたしは
安心と不安のあいだで
やっと自分になれる
眞白あげは
逆光
君の輪郭だけが
白くほどけていく夕暮れに
言葉は影となり
足もとへそっと落ちた
触れようとすればするほど
光は遠ざかり
指先には
あたたかさだけが残る
見えないものほど
確かにそこにあると
逆光の中で
ようやく知った
君の顔は見えなくても
君がいることだけは
まぶしさの向こうで
はっきりとわかる
眞白あげは