安心と不安
不安は
胸の奥で小さく震える影のように
名前のない未来を
そっと揺らしてくる
安心は
その影のとなりに座る
あたたかな灯りのように
手のひらを静かに照らしてくれる
どちらも
わたしの中に住んでいて
行きつ戻りつしながら
今日という道を歩かせている
不安があるから
一歩をためらい
安心があるから
その一歩を踏み出せる
影と光が
同じ場所に落ちるように
わたしは
安心と不安のあいだで
やっと自分になれる
眞白あげは
逆光
君の輪郭だけが
白くほどけていく夕暮れに
言葉は影となり
足もとへそっと落ちた
触れようとすればするほど
光は遠ざかり
指先には
あたたかさだけが残る
見えないものほど
確かにそこにあると
逆光の中で
ようやく知った
君の顔は見えなくても
君がいることだけは
まぶしさの向こうで
はっきりとわかる
眞白あげは
こんな夢を見た
こんな夢を見た
夜の端っこがほどけて
そこからこぼれた光が
私の名前を呼んだ
触れようとすると
指先より先に
心のほうが震えて
夢と現実の境目が
薄い膜みたいに揺れた
知らないはずの景色なのに
懐かしさだけが先に立って
歩くたびに
昔の私が足元でさざめく
目が覚めたら
全部消えてしまうのに
胸の奥だけは
まだ夢の温度を握っている
こんな夢を見た
忘れたくないものほど
朝の光に溶けていく
それでも私は
その欠片をそっと拾い集めて
今日を始める
眞白あげは
タイムマシーン
時間の継ぎ目に
そっと置かれた銀の箱
触れた指先が震えるのは
未来よりも
過去のほうが重いから
ひとつ蓋を開ければ
忘れたはずの声が
埃のように舞い上がり
胸の奥で
まだ名を呼んでくる
進むために
戻りたくなる夜がある
戻らないために
進みたくなる朝もある
タイムマシーンよ
もしも私を運ぶなら
昨日でも明日でもなく
“いま”の少し手前へ
心が追いつける場所へ連れていけ
そこに置き忘れた
小さな勇気を拾ったら
私はまた
今日を始められるから
眞白あげは