愛染

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9/6/2025, 3:37:23 PM

誰もいない教室

時計の音だけが響く世界に
取り残された淡い想い出が
私の中を曖昧に揺らしては
右から左に通り過ぎてゆく

机の小さな遊び心が
椅子に残る誰かの体温が
薄く反射する黒板の言の葉が
今日の記憶をなんとなく紡いでいる

一年未満の短い物語を
素知らぬ顔で眺めている

私だけが映る面白みのないひとコマも
文句も言わず記録している

何年も何年もただひたすらに
多少の変化を見守っている

何回目かもわからない
ありきたりなシチュエーションを
永遠に繰り返しては
誰かに特別を作り出している

もうきっと飽きてしまったでしょうね

8/5/2025, 2:50:22 PM

泡になりたい

ゆらゆらと踊る光に魅せられて
透明な世界へと沈んでゆく
境界線がじわじわと溶けて
わからなくなってゆく

開いた口からは
命の宝石がぷかぷかと溢れ出ている
それは吸い寄せられるかのように
光への道を迷いなく進んでゆく

あぁ、綺麗だ

無数に瞬く星のように
底をも照らす青を飾ってゆく
朝に輝く星は
手をすり抜けては消えてゆく

このまま

このままずっとここにいたら

きっと

わたしも


6/12/2025, 3:09:16 PM

I love

きっと、甘いのでしょう
きっと、恋しくてたまらないのでしょう

溺れてしまいそうなほどの愛情と
ほんの少しのいじらしさを込めて
ずっと注ぎ続けるのでしょう

ひとくち、またひとくちと
誰かの愛を艶やかに舐めとるのは
それはもう幸せなことでしょう

目が眩んでしまいそうね
虜になってしまうわね
ほらほら、たんとお食べなさい

ぽぽぽと色付くまんまるほっぺに
熟れた果実の小さなお口に
ずっと夢中なままなのでしょう

あなたをことこと見つめるうちに
私のよくばりが甘く煮詰まって
あなたを食べたくなるのでしょう

愛に飢えた獣のように
甘美に酔いしれるなんて
性に合わないのでしょう

それでも、食べてしまいたいわ
飲み干してしまいたいわ
溶かしてしまいたいわ

6/8/2025, 2:54:50 PM

君と歩いた道

隣を歩いて良いのかわからないから
少し後ろを歩いてみるの

もうすこし、あとすこし
1歩先のあなたに追いつけない
手を伸ばしたら届くのに
小さな背中に怖気付く

おいていかないで、ふりむいて
てをとって、つれていって
私の手は
私の腕は
あなたをずっと待っているのに

私を置いて消えるあなたが
ちょぴり寂しいなんて言うのね
私を気にしていないようなあなたが
来るのが遅いって頬を膨らますのね

あぁなんて罪深い人かしら
わたし、あなたがわからないわ

あなたの背中ばかりを見ていて
何も楽しくないというのに
何かを期待させるあなたは
愛らしくて憎たらしい

わたし、あなたを嫌いになりそう

6/1/2025, 3:50:53 PM

雨上がり

私が見据えた空は
泣いていた

無我夢中で飛び込み
空よ空よと共鳴す
ぼろぼろと溢れ出したそれは
次第にうごめく雷(いかずち)となりて
思考を溶かし、刃となる

おもいのままに我を忘れ
叫び全てを燃やせばいい
空の涙に消されるほどの
ちっぽけな熱など流されてしまえ

涙を拭っただけのまばらな
光に喧嘩をふっかけた

細くも強かな燦々たる光は
ただ一点に降り注ぎ
私の大きな不安を曝け出し
私の小さな背を照らした

隠れられるのならしてみろと
言わんばかりの空を睨み
燃やし続けた中心を
その空へと掲げて見せた







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