誰もいない教室
時計の音だけが響く世界に
取り残された淡い想い出が
私の中を曖昧に揺らしては
右から左に通り過ぎてゆく
机の小さな遊び心が
椅子に残る誰かの体温が
薄く反射する黒板の言の葉が
今日の記憶をなんとなく紡いでいる
一年未満の短い物語を
素知らぬ顔で眺めている
私だけが映る面白みのないひとコマも
文句も言わず記録している
何年も何年もただひたすらに
多少の変化を見守っている
何回目かもわからない
ありきたりなシチュエーションを
永遠に繰り返しては
誰かに特別を作り出している
もうきっと飽きてしまったでしょうね
泡になりたい
ゆらゆらと踊る光に魅せられて
透明な世界へと沈んでゆく
境界線がじわじわと溶けて
わからなくなってゆく
開いた口からは
命の宝石がぷかぷかと溢れ出ている
それは吸い寄せられるかのように
光への道を迷いなく進んでゆく
あぁ、綺麗だ
無数に瞬く星のように
底をも照らす青を飾ってゆく
朝に輝く星は
手をすり抜けては消えてゆく
このまま
このままずっとここにいたら
きっと
わたしも
I love
きっと、甘いのでしょう
きっと、恋しくてたまらないのでしょう
溺れてしまいそうなほどの愛情と
ほんの少しのいじらしさを込めて
ずっと注ぎ続けるのでしょう
ひとくち、またひとくちと
誰かの愛を艶やかに舐めとるのは
それはもう幸せなことでしょう
目が眩んでしまいそうね
虜になってしまうわね
ほらほら、たんとお食べなさい
ぽぽぽと色付くまんまるほっぺに
熟れた果実の小さなお口に
ずっと夢中なままなのでしょう
あなたをことこと見つめるうちに
私のよくばりが甘く煮詰まって
あなたを食べたくなるのでしょう
愛に飢えた獣のように
甘美に酔いしれるなんて
性に合わないのでしょう
それでも、食べてしまいたいわ
飲み干してしまいたいわ
溶かしてしまいたいわ
君と歩いた道
隣を歩いて良いのかわからないから
少し後ろを歩いてみるの
もうすこし、あとすこし
1歩先のあなたに追いつけない
手を伸ばしたら届くのに
小さな背中に怖気付く
おいていかないで、ふりむいて
てをとって、つれていって
私の手は
私の腕は
あなたをずっと待っているのに
私を置いて消えるあなたが
ちょぴり寂しいなんて言うのね
私を気にしていないようなあなたが
来るのが遅いって頬を膨らますのね
あぁなんて罪深い人かしら
わたし、あなたがわからないわ
あなたの背中ばかりを見ていて
何も楽しくないというのに
何かを期待させるあなたは
愛らしくて憎たらしい
わたし、あなたを嫌いになりそう
雨上がり
私が見据えた空は
泣いていた
無我夢中で飛び込み
空よ空よと共鳴す
ぼろぼろと溢れ出したそれは
次第にうごめく雷(いかずち)となりて
思考を溶かし、刃となる
おもいのままに我を忘れ
叫び全てを燃やせばいい
空の涙に消されるほどの
ちっぽけな熱など流されてしまえ
涙を拭っただけのまばらな
光に喧嘩をふっかけた
細くも強かな燦々たる光は
ただ一点に降り注ぎ
私の大きな不安を曝け出し
私の小さな背を照らした
隠れられるのならしてみろと
言わんばかりの空を睨み
燃やし続けた中心を
その空へと掲げて見せた