泡になりたい
ゆらゆらと踊る光に魅せられて
透明な世界へと沈んでゆく
境界線がじわじわと溶けて
わからなくなってゆく
開いた口からは
命の宝石がぷかぷかと溢れ出ている
それは吸い寄せられるかのように
光への道を迷いなく進んでゆく
あぁ、綺麗だ
無数に瞬く星のように
底をも照らす青を飾ってゆく
朝に輝く星は
手をすり抜けては消えてゆく
このまま
このままずっとここにいたら
きっと
わたしも
I love
きっと、甘いのでしょう
きっと、恋しくてたまらないのでしょう
溺れてしまいそうなほどの愛情と
ほんの少しのいじらしさを込めて
ずっと注ぎ続けるのでしょう
ひとくち、またひとくちと
誰かの愛を艶やかに舐めとるのは
それはもう幸せなことでしょう
目が眩んでしまいそうね
虜になってしまうわね
ほらほら、たんとお食べなさい
ぽぽぽと色付くまんまるほっぺに
熟れた果実の小さなお口に
ずっと夢中なままなのでしょう
あなたをことこと見つめるうちに
私のよくばりが甘く煮詰まって
あなたを食べたくなるのでしょう
愛に飢えた獣のように
甘美に酔いしれるなんて
性に合わないのでしょう
それでも、食べてしまいたいわ
飲み干してしまいたいわ
溶かしてしまいたいわ
君と歩いた道
隣を歩いて良いのかわからないから
少し後ろを歩いてみるの
もうすこし、あとすこし
1歩先のあなたに追いつけない
手を伸ばしたら届くのに
小さな背中に怖気付く
おいていかないで、ふりむいて
てをとって、つれていって
私の手は
私の腕は
あなたをずっと待っているのに
私を置いて消えるあなたが
ちょぴり寂しいなんて言うのね
私を気にしていないようなあなたが
来るのが遅いって頬を膨らますのね
あぁなんて罪深い人かしら
わたし、あなたがわからないわ
あなたの背中ばかりを見ていて
何も楽しくないというのに
何かを期待させるあなたは
愛らしくて憎たらしい
わたし、あなたを嫌いになりそう
雨上がり
私が見据えた空は
泣いていた
無我夢中で飛び込み
空よ空よと共鳴す
ぼろぼろと溢れ出したそれは
次第にうごめく雷(いかずち)となりて
思考を溶かし、刃となる
おもいのままに我を忘れ
叫び全てを燃やせばいい
空の涙に消されるほどの
ちっぽけな熱など流されてしまえ
涙を拭っただけのまばらな
光に喧嘩をふっかけた
細くも強かな燦々たる光は
ただ一点に降り注ぎ
私の大きな不安を曝け出し
私の小さな背を照らした
隠れられるのならしてみろと
言わんばかりの空を睨み
燃やし続けた中心を
その空へと掲げて見せた
追い風
大きく手を広げ
瞳を閉じ
背中に翼があると信じ
瞳を開ける
大きく息を吐いて
髪を風に揺らし
すっと空に魅入られる
遠く果てしなく眩しいあの空が
欲しくて欲しくてたまらなかった
さぁ、飛べ
背中を押し上げる風に
身を任せ
空よ空よと
手を伸ばす
誰のものでもない空を
渇望するなど傲慢か
誰もの希望の光の空を
独り泳ぐのは無謀であるか
されど風は考えなしに
高く高く押し上げてゆく
どんどんどんどん
上がれよ上がれ
もう視界は青いというのに
もう世界は丸いというのに
空を掴めず空(くう)を切るこの手を
どう憎めば良いだろう