愛染

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1/7/2025, 12:48:43 PM

追い風

大きく手を広げ
瞳を閉じ
背中に翼があると信じ
瞳を開ける

大きく息を吐いて
髪を風に揺らし
すっと空に魅入られる

遠く果てしなく眩しいあの空が
欲しくて欲しくてたまらなかった

さぁ、飛べ

背中を押し上げる風に
身を任せ
空よ空よと
手を伸ばす

誰のものでもない空を
渇望するなど傲慢か
誰もの希望の光の空を
独り泳ぐのは無謀であるか

されど風は考えなしに
高く高く押し上げてゆく
どんどんどんどん
上がれよ上がれ

もう視界は青いというのに
もう世界は丸いというのに

空を掴めず空(くう)を切るこの手を
どう憎めば良いだろう


12/3/2024, 1:39:33 PM

さよならは言わないで

美しく濁った過去の世界を
強くて脆かった己の心臓を
溺れて求めた貴方の瞳を
掴んで囚われる思考の幻想を

何もかも忘れたいと
何度も切に願ったけれど

暗く透き通る未来の世界が
砕かれてなお輝く心臓が
もう少しと手を伸ばす君が
自由で無限の物語が

さよならなんて嫌だと叫び
子供のようにくっついて

色を深くに染み込ませては
戻れないことを告げるから

あぁ、お願いだから消えてくれよ


11/26/2024, 11:22:14 AM

微熱

あぁ、微熱だ
1年前からずっとずっと
下がることを知らぬ存ぜぬ
ぎゅぅっと私を苦しめる

熟れた林檎のような頬に
煮詰めた飴でおめかしを
震えて凍える小さな声に
蜂蜜れもんの大きな加護を

あぁ、わずらわしい、煩わしい

上がって上がって下りきらずに
とくとくじんわり
ひろがってゆく

もうそろそろ下がってなんて
これっぽっちも思わないから

綺麗に咲いた真紅の華に
そっと小さく口付けて

11/18/2024, 12:09:49 PM

たくさんの想い出

たくさんあると思っていた

灯のような琥珀
夜をうつす鉱石
星屑の結晶
散らばった月のカケラ

色も形も多種多様
それでもぜんぶがきらめいていた

ひとつ、ふたつ
みっつ、よっつ
見つけては日の光にかざし
大切に瞳にうつし
見つからないようにはにかんでは
そっと腕いっぱいに抱えていた

それなのに

そのはずなのに

小さなそれらは腕をすり抜け
音も立てずに消えていた


あの子も
あの場所も
あの気持ちも
あの何かも
ぜんぶぜんぶ
思い出せないでしょう?

11/17/2024, 3:38:09 PM

冬になったら

真っ白な世界の真ん中で
困り顔の雲に願いを告げる

“どうかひとときの間私の夢を現実に”


氷の湖の魔法に魅せられて
誰もが見惚れるような舞姫に

雪の積もる箱庭の香りに誘われて
甘くとろけるお茶会を

苺を纏うおじいさまに惑わされて
贈り物にお手紙を

真っ白に覆われた世界だからこそ
色めき立つそれらに
どうしようもなく恋焦がれ
叶わぬ想いを諦めきれず
ただただ体温を犠牲に
祈り続ける

私の瞳の中の純白な世界は
どうしようもなく鮮やかで美しい





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