雨上がり
私が見据えた空は
泣いていた
無我夢中で飛び込み
空よ空よと共鳴す
ぼろぼろと溢れ出したそれは
次第にうごめく雷(いかずち)となりて
思考を溶かし、刃となる
おもいのままに我を忘れ
叫び全てを燃やせばいい
空の涙に消されるほどの
ちっぽけな熱など流されてしまえ
涙を拭っただけのまばらな
光に喧嘩をふっかけた
細くも強かな燦々たる光は
ただ一点に降り注ぎ
私の大きな不安を曝け出し
私の小さな背を照らした
隠れられるのならしてみろと
言わんばかりの空を睨み
燃やし続けた中心を
その空へと掲げて見せた
追い風
大きく手を広げ
瞳を閉じ
背中に翼があると信じ
瞳を開ける
大きく息を吐いて
髪を風に揺らし
すっと空に魅入られる
遠く果てしなく眩しいあの空が
欲しくて欲しくてたまらなかった
さぁ、飛べ
背中を押し上げる風に
身を任せ
空よ空よと
手を伸ばす
誰のものでもない空を
渇望するなど傲慢か
誰もの希望の光の空を
独り泳ぐのは無謀であるか
されど風は考えなしに
高く高く押し上げてゆく
どんどんどんどん
上がれよ上がれ
もう視界は青いというのに
もう世界は丸いというのに
空を掴めず空(くう)を切るこの手を
どう憎めば良いだろう
さよならは言わないで
美しく濁った過去の世界を
強くて脆かった己の心臓を
溺れて求めた貴方の瞳を
掴んで囚われる思考の幻想を
何もかも忘れたいと
何度も切に願ったけれど
暗く透き通る未来の世界が
砕かれてなお輝く心臓が
もう少しと手を伸ばす君が
自由で無限の物語が
さよならなんて嫌だと叫び
子供のようにくっついて
色を深くに染み込ませては
戻れないことを告げるから
あぁ、お願いだから消えてくれよ
微熱
あぁ、微熱だ
1年前からずっとずっと
下がることを知らぬ存ぜぬ
ぎゅぅっと私を苦しめる
熟れた林檎のような頬に
煮詰めた飴でおめかしを
震えて凍える小さな声に
蜂蜜れもんの大きな加護を
あぁ、わずらわしい、煩わしい
上がって上がって下りきらずに
とくとくじんわり
ひろがってゆく
もうそろそろ下がってなんて
これっぽっちも思わないから
綺麗に咲いた真紅の華に
そっと小さく口付けて
たくさんの想い出
たくさんあると思っていた
灯のような琥珀
夜をうつす鉱石
星屑の結晶
散らばった月のカケラ
色も形も多種多様
それでもぜんぶがきらめいていた
ひとつ、ふたつ
みっつ、よっつ
見つけては日の光にかざし
大切に瞳にうつし
見つからないようにはにかんでは
そっと腕いっぱいに抱えていた
それなのに
そのはずなのに
小さなそれらは腕をすり抜け
音も立てずに消えていた
あの子も
あの場所も
あの気持ちも
あの何かも
ぜんぶぜんぶ
思い出せないでしょう?