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8/27/2023, 2:39:25 PM

それは人が作った石と言われている

誰もが人間らしい生活のできない時代に生まれても

立って、生きて、眠るのはその石の上とされている

ずさんに取り決められた持ち回りのように

いつかは海底にあった死の息吹さえ

やがて漠とした星々の間に逃れ去っていく

石は飲み込まれ、咀嚼され、吐き出される無限の輪を巡り

硬い硬い核への信仰を拾い集めている

これは強力な嘘なのだ

引力から成り立っている存在の脆さが

石の心地好い影を愛したのだ

含有された海が泣くとき

ぼくはその優しさのために泣く

閉じ込められたものが

閉じ込めたものを赦すように

永く濡れそぼつ星でぼくは

足元をみつめている

#雨に佇む

8/24/2023, 9:48:04 PM

小さな電球が
小さな部屋の
小さな魂のうえで

理屈も通らない
世界から省かれた
配線を隠していたけれど

わたしは獣みたいに
災いの穴に潜ったあとの
記憶がありません

#やるせない気持ち

8/18/2023, 6:31:23 AM

消えたい夏の

砂と泥のなかに

飲みこまれてしまった

釣り針のように

忘れてしまった

昇れないぼくの

守れなかったもの

あなたの影はまだ

太陽に逆らっていますか

#いつまでも捨てられないもの

8/16/2023, 8:40:46 PM

寄り集まっている種を守るために

その背を丸めている

胸の奥であなたは

太陽の世界に敵うしたたかさを欲して

ぐっとこらえている

たとえるならそう

手足のように伸びやかに

多くのものに触れるけれど

同時にあなたを孤独にする舞踊をはらんでいる

それを愛と呼ぼう

わたしはそれを間近にして

わかると言えば

嘘になり

背を丸めれば

しっかりと立つ姿を観る

まるで無限の鍵盤をさらけだし

感情のすべてと補い合い

円な螺旋をかけ上がり

花びらのひとつになる日に

あなたが待っていたものになれるように

わたしのなかにもあるもの

いまは、誰にもあげない

#誇らしさ

8/15/2023, 12:16:40 PM

誰にもしたことのない話をしよう

夢にも現れたことのない月のように

深いかなしみの底から光が差しこむ

裸体の渚で、わたしたちは会おう

幾夜も往復した痕を踏み鳴らし

灰混じりの砂浜にいのちを署名する

われた爪からほとばしる色の名まえが

からだ中をつたって丸い星を描く

「死ぬはずだったのよ」

多くのものが、とわたしは応える

「書かれなかったのよ」

あなたをつよく、わたしは抱きしめる

砕けた歯と青あざをとりこぼして

大洋の水面に弾け飛んだ伝承

「いのちは硝子でした」

焼かれ、身に宿し、無から産まれたことばも

綴じられたものは僅かに届かず

積み上げたことさえ忘れる

誰にも話したことがなく

誰も聞いたことがない

口が口を塞ぐとき

行き交う言葉を耳は知らない

「死ぬ前に──」

息を継いで、また

「死ぬ前に──」

繰り返している

書物机から遠ざかり

星あかりにもっとも近づいた縁を這う

八本脚の黒い影の喚きが

熱の詩になる

新月の前夜に滴る

あたらしい過去として

いつも此処になく

いつも此処にあることばとして

その腕をまわす

わたしたちの形になる


「ほんとうに多くのものがどこかに行ったんだ

聞いてくれるかい?」

#夜の海

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