ほんとうは
救われたい
望む力は
捨てきれないから
野が焼けて、鳥たちが湿地を目指して飛び立つとき
ほんとうは
報いのそばに居たい
小さくて、無様で、ひとりきりだから
なんとか
あたたかいほら穴を
狂わなくても
責められない夜を
欲しくて
過ごしたくて
#つまらないことでも
ゆっくりと走りだし
その痣に向かって
跳ぶ夜もある
落ちていく間に
めくるめく物語が
指先を弄びすり抜けていく
繋ぎ止めるために
栞を挿むような
得体の知れない祈りに
降参するような
深い森の仲間に
夢がまたひとつ加わり
ソーサーの上に置かれた
気配が凍りつく
スマホを落として
自分の身を守れなかったんだから、と
逃れられない理由を
言葉にしてみて
この世に味方を
もう探すことができないなら
目覚めている理由が
行為の音になる
ぼくは森をふく風のように
考えることをしないで
あなたと混ざりあう時
生まれてこなかったことにもなるように
ずっと
ずっと
ここにいる
冷たい手を、ぶら下げている
#だから、一人でいたい。
真白い昼光をはなつ
シーリングの上に
堪えられないものが
張り裂けて
端から端までを
見渡すことのできない
天を眺めながら
椅子に座って
あんまりな
生活を産んだ
海を産んだ
思いに耽るたびに
だれかの、胸の上で
踊るだけの水滴になりたい
埃みたいに払われても
一つの星でありたい
ぼくはぼくの
屋根のうえを駆けて
たださようならの
準備をしている
#カラフル
彼女は激突した。
星々が光るためにここで生まれた。
燃える頭を戴きながら川縁で息を吹き返した。
そして思った。
何者か。
ほんとうは声に出して問いたいことを。
きっかけがあればいのちは蒸発していくから。
夢の底をひきずる足あとが、永遠に画している。
欲望のかたち。
水晶のようにかなしそうな肌の色。
呼吸が濡れるまで炎をせきとめることはできない。
言葉ではきっと思い出せないかもしれない。
それでも、と。
彼女は激突した。
ぼくだけがそのことを知っている。
#何もいらない