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8/16/2023, 8:40:46 PM

寄り集まっている種を守るために

その背を丸めている

胸の奥であなたは

太陽の世界に敵うしたたかさを欲して

ぐっとこらえている

たとえるならそう

手足のように伸びやかに

多くのものに触れるけれど

同時にあなたを孤独にする舞踊をはらんでいる

それを愛と呼ぼう

わたしはそれを間近にして

わかると言えば

嘘になり

背を丸めれば

しっかりと立つ姿を観る

まるで無限の鍵盤をさらけだし

感情のすべてと補い合い

円な螺旋をかけ上がり

花びらのひとつになる日に

あなたが待っていたものになれるように

わたしのなかにもあるもの

いまは、誰にもあげない

#誇らしさ

8/15/2023, 12:16:40 PM

誰にもしたことのない話をしよう

夢にも現れたことのない月のように

深いかなしみの底から光が差しこむ

裸体の渚で、わたしたちは会おう

幾夜も往復した痕を踏み鳴らし

灰混じりの砂浜にいのちを署名する

われた爪からほとばしる色の名まえが

からだ中をつたって丸い星を描く

「死ぬはずだったのよ」

多くのものが、とわたしは応える

「書かれなかったのよ」

あなたをつよく、わたしは抱きしめる

砕けた歯と青あざをとりこぼして

大洋の水面に弾け飛んだ伝承

「いのちは硝子でした」

焼かれ、身に宿し、無から産まれたことばも

綴じられたものは僅かに届かず

積み上げたことさえ忘れる

誰にも話したことがなく

誰も聞いたことがない

口が口を塞ぐとき

行き交う言葉を耳は知らない

「死ぬ前に──」

息を継いで、また

「死ぬ前に──」

繰り返している

書物机から遠ざかり

星あかりにもっとも近づいた縁を這う

八本脚の黒い影の喚きが

熱の詩になる

新月の前夜に滴る

あたらしい過去として

いつも此処になく

いつも此処にあることばとして

その腕をまわす

わたしたちの形になる


「ほんとうに多くのものがどこかに行ったんだ

聞いてくれるかい?」

#夜の海

8/4/2023, 8:07:47 PM

ほんとうは
救われたい

望む力は
捨てきれないから

野が焼けて、鳥たちが湿地を目指して飛び立つとき

ほんとうは
報いのそばに居たい

小さくて、無様で、ひとりきりだから

なんとか
あたたかいほら穴を

狂わなくても
責められない夜を

欲しくて
過ごしたくて

#つまらないことでも

7/31/2023, 2:44:28 PM

ゆっくりと走りだし
その痣に向かって
跳ぶ夜もある

落ちていく間に
めくるめく物語が
指先を弄びすり抜けていく

繋ぎ止めるために
栞を挿むような
得体の知れない祈りに
降参するような

深い森の仲間に
夢がまたひとつ加わり
ソーサーの上に置かれた
気配が凍りつく

スマホを落として
自分の身を守れなかったんだから、と
逃れられない理由を
言葉にしてみて

この世に味方を
もう探すことができないなら
目覚めている理由が
行為の音になる

ぼくは森をふく風のように
考えることをしないで
あなたと混ざりあう時
生まれてこなかったことにもなるように

ずっと
ずっと
ここにいる

冷たい手を、ぶら下げている

#だから、一人でいたい。

5/1/2023, 2:27:24 PM

真白い昼光をはなつ
シーリングの上に
堪えられないものが
張り裂けて

端から端までを
見渡すことのできない
天を眺めながら
椅子に座って

あんまりな
生活を産んだ
海を産んだ
思いに耽るたびに

だれかの、胸の上で
踊るだけの水滴になりたい
埃みたいに払われても
一つの星でありたい

ぼくはぼくの
屋根のうえを駆けて
たださようならの
準備をしている

#カラフル

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