はじめ

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6/18/2024, 4:21:49 AM

【未来】

明日のこと、明後日のこと、なんなら五分先のこと。
何を考えても、不安と恐怖しかなくて、きらきらした『明るい未来』なんて信じてない。
目を閉じて、開くことがないように。

6/15/2024, 1:44:58 PM

【好きな本】

分厚く重い扉を開くと、そこには沢山の本が入った本棚が、壁一面に広がっている。
三階建てで、吹き抜けの作り。上の方まで背の高い本棚が埋まり、全ての棚には本がある。
(景観だ)
言葉の使い方はちょっと違うだろうけど、この光景が好きだという気持ちは、なんと表すのだろう。
中に入り、いつもの机に鞄を置いて。見慣れた背表紙を眺める。今日はどれを読もう。
「よお」
不意に、声がかかって、びくっと振り返ると、同じクラスの男子がいた。声を潜めて、
「なあ、本好き?俺課題で読む本決めてないんだよねー、お勧めない?」
高い背をこちらに合わせて屈め、早口に聞いてくる。確かに彼が読書のイメージはない。頷いて、やや分厚いが児童文学に近い、要は読みやすい本を見せる。彼は手に取り、パラパラとめくって、
「読みやすいかも。サンキュ」
ニッ、と笑って貸し出し窓口に去って行く。その背中は広い。
(あの本、返ってきたら読もう)
少し、胸がドキドキしてきた。

6/13/2024, 1:40:39 PM

【あじさい】

雨に濡れて、より一層鮮やかさを増す、花と葉。を見ながら、傘をさして帰り道を急ぐ。あまり早歩きだと転びそうだな、と思いつつ。
「綺麗だね」
隣を歩く同居人が、自分より頭一つ高い目線から、花を見ている。
「急ぐよ、忙しいんだから」
「分かってるけどね」
柔らかく、静かに微笑む。静かなのに、その鮮やかさ。
まるで。
「この時期、ゼリーとか和菓子とかであんな色合いのやつあるよね」
「食べ物ばっかり」
「だって好きだから」
「……本物の方、食べるなよ」
「何で?」
「毒があるからね」
言いながら歩く。
隣に、鮮やかに笑う花のような君。

6/11/2024, 1:59:23 AM

【やりたいこと】

「進路調査だってー」
「進路考えてる?」
「進学がいいような気もするが、勉強はイヤ」
「分かる」
「やりたいことって言われてもさ、全然思い付かないし」
「将来なんて、わからないよねー」
「あ、でもでも、やりたいことあった」
「何?」
「駅前のカレー屋の十辛カレー挑戦」
「……二辛で辛いって言ってるのに?」
「挑戦はしたいのっ」
「進路調査には書けないねー」
「それな」

6/9/2024, 11:29:11 AM

【朝日のぬくもり】

真っ暗な部屋の布団に入り、頭の先まで掛け布団を引き上げる。
体はそこそこ疲れているが、目を閉じても眠れそうにない。頭の中は、今日あったことを反芻してきて、嫌だったことばかり見せてくる。
無理矢理目を閉じたら、涙が流れてきた。

ふっ、と気付くと寝ていたようで、薄暗い部屋の、時計を見ると数時間は経っていた。
(薄暗い?)
カーテンの隙間から差し込む光が、夜の終わりと一日の始まりを告げてくる。起き上がりカーテンを開く。
一気に、窓ガラス越しにやってくる日の光。まだまだ登りきってない太陽から、確かに感じるぬくもり。
「……起きるか」
昨日の嫌な気持ちはまだ残っているけれど、それでも。
進むしか、ないようだ。

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