【世界の終わりに君と】
「明日だって」
「終わるみたいだね」
棒アイスを咥えてそんな話をするから、こっちもカップアイスを掬いながら頷く。
「何かしたいことある?」
と言われても、世界はもう終焉に向かって、そこらで祈る人泣く人、集団自殺や地球脱出方法を考える会とか、結構混乱してるんだが。
何か、したいこと?
「明日も、一緒にアイス食べるか」
「買いだめしたし、丁度明日まではあるし、それはいいね」
窓の外、嫌な位青い空を眺めながら、笑ってくれたので、こっちも笑顔になる。
どうせ終わるんだ。
その時も一緒に、アイスを食べよう。
【誰にも言えない秘密】
(あっ)
気付いて、走り出す。一緒にいた友人に、適当な言い訳を叫びながら、悪の波動が感じられる所まで。
「変身っぴー!」
邪気に包まれた怪物が暴れている現場につく。お供の謎な、わたあめみたいな生物からもたらされた、これまた謎にきらきらしてハートやリボンのついているアイテムを掲げて、
「変っ身!」
叫ぶと、自分の体が光に包まれ、薄いが体力守備力向上効果のある服に変わる。腕を前に出して、
「光の力で消えろ!」
また叫ぶ。と、手から光弾が出て、怪物は弾けとんだ。と、邪気も消えていく。
「お前っ…」
声に振り返ると、さっきまで一緒にいた友人が、驚きに満ちた顔でこっちを見ていた。ヤバい。
「お前…魔法少女だったのか?男なのに?」
「せめて男なので、魔法少年ってことで」
諦めた。目の前で見られては、秘密も何も無い。
「可愛い衣装で、結構ですねー似合う似合う」
「感想そこ?」
確かにピンクと水色と白の、リボンと膨らんだ袖と、ミニスカートですが。中身は男子ですが。
「だから、秘密にしたかったのにー!」
頭を抱えると、
「君も変身するっぴ?」
謎生物が、友人を見上げていた。やめろ。友人も男だ。
【失恋】
「髪切ったんだ?」
「うん、似合う?」
「似合う似合う。失恋?」
「君がそれ言う?みんなそれ言うの。失恋してないのに」
「だね」
「こんなに私達」
「ラブラブなのにねー」
「表現古っ」
【正直】
「昔話とかでさ、正直じいさんは得をして、いじわるじいさんは損をするってあるじゃん?」
「昔話あるあるだね」
「でも、あまりに正直過ぎるのも損じゃね?」
「例えば?」
「いつも服似合ってないですね、とか、頭悪いね、とか言っちゃう」
「正直ってか、空気読めてないのでは」
「正直っていうより、正義とかならまだ分かったかも。正しいことを貫く、正義のじいさん!」
「……いつもそんなことばかり考えてるから、お前テスト赤点なのでは」
「……正直じいさんめ」
「誰がじいさんだこら」
【梅雨】
だるくて。
じめじめしてて。
外も暗く湿っていて。
カビが生えそうな空気で。
ゆっくりと、目を閉じて、ただ微睡んでいられたら。
静かに、しとしと雨が降る音だけが響き渡る。