木蓮

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12/15/2023, 12:07:42 PM

去年の今日は雪が降っていた。隣にはあなたがいた。
今日は冷たい雨の中独り。愛していたはずなのに、愛し合っていたはずなのに。あなたの夢を応援しているから。愛してる。最初で最後の愛なのに。

12/14/2023, 10:31:10 AM

12月になると街はイルミネーションで輝き出す。何故かいつもよりカップルが目に付く。寄り添う2人は幸せそうで、独りぼっちの私は場違いだ。昨年、イルミネーションの下で別れを告げたのは私だった。君はもう誰かの隣で見ているのか。それとも。

12/13/2023, 12:00:31 PM

彼女は嫌だを言わない。食べたいものも見たい映画も行きたい場所も、俺が誘ったものは断らない。聞いたところによると友達に対してもそうらしい。
彼女の部屋に泊まり、隣で眠りについたある日。ふと夜中に目が開くと、彼女のすすり泣く声が聞こえた。
「……大丈夫?」
「あっ、起こしちゃった……?」
わざとらしいくらい明るい声。
「……ごめん、ちょっと、嫌な夢見て」
鼻をすする。親に殴られ、なじられ、なんとか愛してもらおうと耐えて耐えて笑い続ける子どもの夢。初めて、彼女の弱いところに初めて触れた気がした。
「俺は、好きだよ。君の好きなものも嫌いなものも、知りたい」
上手く言葉にならなくて抱きしめる。

「夜ご飯どうする?ラーメン行かない?」
「ん……今日は、パスタな気分」

12/12/2023, 12:31:59 PM

「私ね、本当は魔女なの」
二人で布団に入ると恋人は時々可愛い嘘を付いた。
「じゃあ紫色の毒スープ混ぜたりするの?」
「ふふ、ナイショ」

「私超能力が使えるの」

「本当は300歳なの」

「……私ね、結婚するの。好きな人が他にいるの」
「は?……え?」
唐突な言葉に思考停止した。おやすみと言ったきり何も答えてはくれず、知らぬ間に俺も眠りに落ちた。朝目が覚めたときにはもう彼女はいなかった。酷いやつだと連絡もしなかった。
しばらくして、彼女は結婚したと聞いた。今どき流行らない政略結婚。ほとんど話したこともないような男と結婚させられたと。見せられた写真にはかつての明るさの欠片もない疲れた女性が写っていた。
最後の嘘に、気付けていたら。体は隣りにいたはずなのに。

12/11/2023, 11:15:32 AM

私は完璧でなければならない。院長の娘として、弱みなど見せてはならない。グループ初の女性院長の母の跡を継ぐべく、医者になるのは当然、何だろうと勝つこと以外は許されない。
「お、久しぶりだな」
一人で通学電車に乗っているとふと幼馴染に声をかけられた。
「おはよう」
完璧な笑顔で挨拶をする。
「……なんか疲れてる?」
「ん?」
そんなわけないと否定する自信はなく、答えを保留する。
「ったく……ほら、行くぞ」
高校の最寄り駅より少し前、手を引かれて電車を降りる。あぁ、やっぱりこの人だけは、私を連れ出してくれる。気付いてくれる。

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