木蓮

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「私ね、本当は魔女なの」
二人で布団に入ると恋人は時々可愛い嘘を付いた。
「じゃあ紫色の毒スープ混ぜたりするの?」
「ふふ、ナイショ」

「私超能力が使えるの」

「本当は300歳なの」

「……私ね、結婚するの。好きな人が他にいるの」
「は?……え?」
唐突な言葉に思考停止した。おやすみと言ったきり何も答えてはくれず、知らぬ間に俺も眠りに落ちた。朝目が覚めたときにはもう彼女はいなかった。酷いやつだと連絡もしなかった。
しばらくして、彼女は結婚したと聞いた。今どき流行らない政略結婚。ほとんど話したこともないような男と結婚させられたと。見せられた写真にはかつての明るさの欠片もない疲れた女性が写っていた。
最後の嘘に、気付けていたら。体は隣りにいたはずなのに。

12/12/2023, 12:31:59 PM