木蓮

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私は完璧でなければならない。院長の娘として、弱みなど見せてはならない。グループ初の女性院長の母の跡を継ぐべく、医者になるのは当然、何だろうと勝つこと以外は許されない。
「お、久しぶりだな」
一人で通学電車に乗っているとふと幼馴染に声をかけられた。
「おはよう」
完璧な笑顔で挨拶をする。
「……なんか疲れてる?」
「ん?」
そんなわけないと否定する自信はなく、答えを保留する。
「ったく……ほら、行くぞ」
高校の最寄り駅より少し前、手を引かれて電車を降りる。あぁ、やっぱりこの人だけは、私を連れ出してくれる。気付いてくれる。

12/11/2023, 11:15:32 AM