「ところにより雨 好きじゃないのに(枠逃したので二つのお題で一つ)」のお題書きました。
一日二つ書くの難しそうで気力のある時だけになってしまいますが、二つ書くときは「今日のお題+前の書いてないお題」になります。
頑張ります。
お題:1つだけ
大切なもの
ごめんなさい。明日絶対書きます。
お題:エイプリルフール
幸せに
ーけーたいー(何気ないふり)
「おかえりなさい」
懐かしい声が、俺を出迎えた。
「うん」
少し気恥ずかしくて、そっけなくなってしまう返事。
母は何ともなさそうに、
「お父さんにも挨拶して来て」
落ち着いた声でそう言った。
少しだけ長い廊下を進んだ正面に、父の部屋がある。
湿気を含んだ空気と軋む床が、年季を感じさせた。
リフォームなんか当然のようにしていないこの家は、どこもかしこも腐っていた。
いつか下敷きになりそうだと、母に話すのはあまりにも忍びなく。
また、凹んだ床や壁にある傷に思い出があるのだと、
ここに来るたびしみじみ思う。
父の部屋だって、思い出の一つだ。
そこで何度父に叱られたことだろう。
体を泥だらけにして、クラスメイトと喧嘩して。
母はその度に、帰ってきた俺の服から困ったように泥をはらい、
そんな母を見て、父はますます憤慨していた。
あぁ、楽しかったな。
あの頃は。
父の部屋は、当時とまるで変わっていなかった。
しかし確実に埃にまみれてきている。
そして母は、あまり俺がこの部屋を出入りすることを良い目で見ていない。
思うにきっと、あの頃の空気や父の存在を、残そうとしているのではないだろうか。
そろそろ出ようとした時。
ふと目に入った銀色のガラケー。
父のものだった。
―――――
なぜだか持ち出してしまったガラケーを、落とさないように手のひらの中で転がした。
思ったより重い。
DSを見た時のようなわくわく感があった。
母にバレたらどうなるだろうか。
それから自分の部屋に行くと言って、二階に上がった。
意外にも、そのままだった自分の部屋。
片付けるのがめんどくさかったのかもしれない。
とにかく手当たり次第に充電器を探すことにした。
―――――
「これ……」
探し始めてから約一時間後、ようやく見つけ出した。
充電を終わらせ、やっと中を見られるとうきうきして開いたが、
どうやら父はパスワードをかけていたらしい。
誰かに見られることにも無頓着な父だから、パスワードの変更もしていないだろう。
そうたかをくくって、メーカーの初期設定番号を入力したものの、見事に予想は外れていた。
母や父、自分の誕生日や何かの記念日。
思いつく限りのものは入れたのに、いつまでも開かない。
案外適当な4桁だったりして。
俺は父の事をあまり理解していなかったのかもしれないな。
ピロンッ
スマホが鳴った。
会社からの業務用連絡。
そういえば、初めてのスマホは父からだった気がする。
「大事にしろよ」
って、柄にもなく嬉しそうに笑ってて。
連絡先は交換できなかったから、
「俺がそれに乗り換えるまで壊すなよ」
とか言ってたな。
……いや、まさかな。
0401 4月1日
入学祝いで買ってもらったんだ。
だけど当然のように開かない。
見当違いか?
2013 2013年
高校に入った年だった。
確かこれ。
決定ボタンを押すと、数秒の沈黙の後、待受画面が表示された。
ボタンをポチポチと動かす。
写真には案外いろんなものが残っていた。
赤ちゃんだった俺もいる。
ただそれ以外は特に何もない。
そろそろ止めようと思った時に、メールを見ていないことに気がついた。
少々気が引けたが、誘惑に負ける。
メールを開き、受信一覧を眺めた。
「受信」「送信」「未送信」と並ぶ項目の中に、
未送信が一件だけ残っていた。
一瞬、息が詰まった。
それは父から俺に向けてのものだった。
―――――
「じゃあ、また来るから」
「気をつけてね」
見送られて家から出る。
お母さんの笑顔が、胸に刺さった。
――――――――――――――――――
あなたはガラケー世代でしたか?
おやすみなさい。
※ホラー注意
ー誰のせい?ー(ハッピーエンド)
部活の合宿で事件は起こった。
貸し出された小屋の中。
「嘘…」
そう溢したシズク先輩は、僕たちの方へ振り返って、
「閉じ込められてる」
そう言った。
「はぁ!?マジすか!!」
大袈裟に反応したナカムラが、シズク先輩を押しのけドアノブを回す。
しかしそれは、ガチャガチャと鳴るだけだ。
「確かこのドア押して開けるんだったわよね。先輩とナカムラが引いてるだけだったりして」
鼻で笑うハヤミに、ナカムラは少しムッとして反論した。
「そんなバカみたいな勘違いするわけねぇだろ。なら自分で確認してみろよ!」
「はぁ!?なくはないでしょ?万が一を心配してあげたのよ!」
「お前なんかに言われなくても、みんな分かってんの!」
「………鍵が壊れてるとか」
「それくらいみんな思ったから!」
「そんなの分かんないでしょ!」
睨み合うナカムラとハヤミ。
「まぁまぁ。そこらへんにしような」
牽制をかけたのは部長のサカイ先輩。
響く低い声は、結構威圧感がある。
二人は納得いかない顔で、サカイ先輩を見た。
「うーん。ここ、鍵はないはずなのよね」
シズク先輩が言った突然の言葉に、二年生のタチズが一人静かに頷いた。
「そうなんですよね。だから、閉じ込められるなんて…」
閉じ込められるなんて、変だ。
タチズの言葉に、シズク先輩は何やら考えるように顔を伏せて、
「外に重いものが置いてあるとか?」
言って、パッと顔をあげた。
「あー!!盲点!!」
またもやナカムラが大袈裟に反応する。
それを見たハヤミは「ふんっ」と鼻を鳴らした。
「それくらい私だって思いついてたんだけど?」
「へーそうですか。先輩を立ててあげたってなんで分からないかね」
「は、はぁ!?分かってたけど!?分かった上で言ったんだけど!?」
「お前らちょっと黙れ」
サカイ先輩がまたもや牽制。
そんな三人なんか眼中にないかのように、シズク先輩とタチズはなにやら話し合っている。
「外、どうにかして見れないですかね?」
「うーん。窓はあるけど……位置的に厳しそうだよね」
「ですね。スマホ…はみんな置いてきちゃったし…」
「人が来るのを待つしかないかも」
「こんなところに?」
そう。
合宿で借りたこの小屋は、だいぶ山に近いところにある。
人と話すには、声が届かないといけない。
でもここは、何キロも坂を登らないと来られない場所だ。
徒歩で来る人なんて、まずいない。
つまり、人を待つのは現実的ではないのだ。
シズク先輩とタチズはお互い顔を見合わせた。
と、サカイ先輩から一声。
「とりあえず、押してみるのはどうだ?全員ですればなんとかなるかも知れないし」
「まぁ。そうするしかないかも」
「いいっスね。それ!」
「俺も賛成です」
「よーし!!頑張りましょ!」
という事で、みんなで押す事になった。
場所について言い争っているから、押すまでまだかかりそうだ。
ふと、ドアの向こうに意識が向いた。
気がつけば、ドアを通り抜けている。
穏やかな風が、葉を揺らしていた。
ドアの前には、シズク先輩の言った通り何かの荷物が置いてあった。
これ、持てるか?
なかなかに重そうだが。
部屋の中に戻ると、もう開始していた。
一生懸命押しているが、五人の力だけではびくともしない。
どうしようかと見守っていると、ナカムラが「もしかして…」と口を開いた。
「この前の……亡くなった先輩の祟りだったりして」
「はぁ?やめてよ」
「いやいや!ありえなくはないじゃん」
「ないだろ」
サカイ先輩がすぐ否定したのを見て、ナカムラは眉をひそめた。
「…だって。俺ら」
「辞めて」
シズク先輩が遮る。
ナカムラは口をつぐんだ。
それから少し、誰も口を開かなかった。
「……謝ってみる?」
小さく、一人言みたいにハヤミが言った一言を、ナカムラが拾う。
「いいんじゃね。ねぇ、部長」
サカイ先輩は不機嫌そうに眉を寄せた。
「減るもんじゃないしね」
言ったのはタチズだった。
そこからなし崩し的に謝る流れになる。
全員、横一列に並んで、同じ場所を見つめた。
そこにはなにもなかったけど。
誰かが小声で言った「せーの」を合図に、バラバラな謝罪が部屋に響いた。
「ごめんなさい」
「ごめん」
「すんません!」
その瞬間ー
ーなんか今なら行ける気がするな。
また、意識が引き寄せられる。
思った通り、普段なら掴めない物体をスムーズに掴むことができた。
みんなは最後もう一度だけドアを押して、
ダメなら人が来るまでに待つことにしたらしい。
さっきと同じ並びになって、全員勢いよくドアを押した。
ドサドサッ
鈍い音が響く。
「いった」
「あ、開いた」
「どきなさいよ!!」
一拍置いて、緊張の解けた音がした。
みんな喋り始める。
「やっぱ、謝ったからっスかね!!」
「もう。やめてよ」
「にしてもなんで荷物がドアの前に……?」
「俺らを恨んでいる人がいるのかもな」
「え、?…それは」
「タチズくん。本気で言ってる?」
「そ、そんなことより!もしもこの荷物がドアを開けるのを阻止してたとしたら、なんでいきなりどいたのかってのが大事でしょ!!」
「通りかかった人が退けてくれたとか」
「いやいやいや。一声かけてくれてもいいでしょ!あんなに騒いでたんだから、出れなくなってたの察しただろうし!これはやっぱ謝ったのが効いたんじゃ?」
「何言ってんのよ」
「……ねぇ、これさ、声、外に漏れると思う?」
「漏れるでしょ。急にどうしたんですか?タチズ先輩」
「いや。それにしては壁厚くない?そういうの詳しくないけど、意図的に俺たちを…殺そうとしてたなら…」
「………うーん。ここを貸してくれた人はやさしそうだったけどね」
「…これ、通行人に俺たちの存在を分からせないようにして…」
「いやいや!妄想だよ!妄想!!」
「は?…分かるでしょ。ここ、“あいつ”の故郷ですよ?」
「あっ、そっか」
「もしかしたら今も、監視されてるかも。ほら、あぁいう木と木の間から」
――――――――――――――――――
怖かったですか? ちょっと、コメディっぽいなって思いながら書いてたのですが…。
おやすみなさい。
ー怪しい薬ー(見つめられると)
「いやー。ごめんね?悪いとは思ってるんだけどさ〜」
男は、小指ほどの小瓶を指先で転がしながら、笑った。
それは心底不快になる意地の悪い笑いだった。
軽い態度の裏側に感じた、粘ついた愉悦。
「僕もお金がないと困るから……。でも、いいじゃん。どうせ、死にたかったんでしょ?」
「良かったね」と笑う男は、いつからか床に座り込んでいた私を
見下ろしながらそう言った。
私は、いつからここにいたのだろう。
たった数分前のことしか、分からなかった。
知らなかった。
まるで数分前に生まれてきたみたいに。
どうして、私の体はこんなに熱いんだ?
答えられはしない。
体の内側から、じわじわと焼かれているみたいだった。
「ねぇ」
短い呼びかけ。
その一言に、嘲笑が含まれていた。
「お前が僕と「付き合いたい」って言った時の理由は確か…」
男は、私に目線を合わせるように、静かにしゃがんだ。
私はこの男と、どんな関係なのか?
知らないのに、身体は男を拒んでいた。
嫌悪感だけが、私の身体を駆けていく。
それでも耳を塞げなかった。
「確か、僕の目に一目惚れしたんじゃなかったか?」
視界に映った「目」と目が合った。
知らない目だった。
私はこれが好きだったのか。
瞬間。
視界が、焼けた。
目の奥から、ぐちゃぐちゃに崩れていく。
皮膚が、溶けている気がした。
瞼を閉じられない。
閉じているのかどうかも分からなかった。
ただ、“見られている感覚”だけが消えない。
とっさに瞼を指でなぞった。
ぐちゅ。
そんな音が、小さく鳴った。
どんどん垂れてくる、形の保てなくなったそれ。
いつしか、体中の感覚がなくなっていた。
どこからが体で、どこからが床なのか。
判別できなくなっていた。
「思ったより、柔らかくなるなぁ」
どれくらい経ったのか分からなくなっていた時、男の声が落ちてきた。
「副作用は出るみたいだけど、結構いい出来だと思わない?」
何を言っているのか。
理解できなかったけど、別にいいのかもしれない。
「そろそろ溶かしきっちゃうね」
考えても、なにも変わらないんだから。
――――――――――――――――――
おやすみなさい。