※ホラー注意
ー誰のせい?ー(ハッピーエンド)
部活の合宿で事件は起こった。
貸し出された小屋の中。
「嘘…」
そう溢したシズク先輩は、僕たちの方へ振り返って、
「閉じ込められてる」
そう言った。
「はぁ!?マジすか!!」
大袈裟に反応したナカムラが、シズク先輩を押しのけドアノブを回す。
しかしそれは、ガチャガチャと鳴るだけだ。
「確かこのドア押して開けるんだったわよね。先輩とナカムラが引いてるだけだったりして」
鼻で笑うハヤミに、ナカムラは少しムッとして反論した。
「そんなバカみたいな勘違いするわけねぇだろ。なら自分で確認してみろよ!」
「はぁ!?なくはないでしょ?万が一を心配してあげたのよ!」
「お前なんかに言われなくても、みんな分かってんの!」
「………鍵が壊れてるとか」
「それくらいみんな思ったから!」
「そんなの分かんないでしょ!」
睨み合うナカムラとハヤミ。
「まぁまぁ。そこらへんにしような」
牽制をかけたのは部長のサカイ先輩。
響く低い声は、結構威圧感がある。
二人は納得いかない顔で、サカイ先輩を見た。
「うーん。ここ、鍵はないはずなのよね」
シズク先輩が言った突然の言葉に、二年生のタチズが一人静かに頷いた。
「そうなんですよね。だから、閉じ込められるなんて…」
閉じ込められるなんて、変だ。
タチズの言葉に、シズク先輩は何やら考えるように顔を伏せて、
「外に重いものが置いてあるとか?」
言って、パッと顔をあげた。
「あー!!盲点!!」
またもやナカムラが大袈裟に反応する。
それを見たハヤミは「ふんっ」と鼻を鳴らした。
「それくらい私だって思いついてたんだけど?」
「へーそうですか。先輩を立ててあげたってなんで分からないかね」
「は、はぁ!?分かってたけど!?分かった上で言ったんだけど!?」
「お前らちょっと黙れ」
サカイ先輩がまたもや牽制。
そんな三人なんか眼中にないかのように、シズク先輩とタチズはなにやら話し合っている。
「外、どうにかして見れないですかね?」
「うーん。窓はあるけど……位置的に厳しそうだよね」
「ですね。スマホ…はみんな置いてきちゃったし…」
「人が来るのを待つしかないかも」
「こんなところに?」
そう。
合宿で借りたこの小屋は、だいぶ山に近いところにある。
人と話すには、声が届かないといけない。
でもここは、何キロも坂を登らないと来られない場所だ。
徒歩で来る人なんて、まずいない。
つまり、人を待つのは現実的ではないのだ。
シズク先輩とタチズはお互い顔を見合わせた。
と、サカイ先輩から一声。
「とりあえず、押してみるのはどうだ?全員ですればなんとかなるかも知れないし」
「まぁ。そうするしかないかも」
「いいっスね。それ!」
「俺も賛成です」
「よーし!!頑張りましょ!」
という事で、みんなで押す事になった。
場所について言い争っているから、押すまでまだかかりそうだ。
ふと、ドアの向こうに意識が向いた。
気がつけば、ドアを通り抜けている。
穏やかな風が、葉を揺らしていた。
ドアの前には、シズク先輩の言った通り何かの荷物が置いてあった。
これ、持てるか?
なかなかに重そうだが。
部屋の中に戻ると、もう開始していた。
一生懸命押しているが、五人の力だけではびくともしない。
どうしようかと見守っていると、ナカムラが「もしかして…」と口を開いた。
「この前の……亡くなった先輩の祟りだったりして」
「はぁ?やめてよ」
「いやいや!ありえなくはないじゃん」
「ないだろ」
サカイ先輩がすぐ否定したのを見て、ナカムラは眉をひそめた。
「…だって。俺ら」
「辞めて」
シズク先輩が遮る。
ナカムラは口をつぐんだ。
それから少し、誰も口を開かなかった。
「……謝ってみる?」
小さく、一人言みたいにハヤミが言った一言を、ナカムラが拾う。
「いいんじゃね。ねぇ、部長」
サカイ先輩は不機嫌そうに眉を寄せた。
「減るもんじゃないしね」
言ったのはタチズだった。
そこからなし崩し的に謝る流れになる。
全員、横一列に並んで、同じ場所を見つめた。
そこにはなにもなかったけど。
誰かが小声で言った「せーの」を合図に、バラバラな謝罪が部屋に響いた。
「ごめんなさい」
「ごめん」
「すんません!」
その瞬間ー
ーなんか今なら行ける気がするな。
また、意識が引き寄せられる。
思った通り、普段なら掴めない物体をスムーズに掴むことができた。
みんなは最後もう一度だけドアを押して、
ダメなら人が来るまでに待つことにしたらしい。
さっきと同じ並びになって、全員勢いよくドアを押した。
ドサドサッ
鈍い音が響く。
「いった」
「あ、開いた」
「どきなさいよ!!」
一拍置いて、緊張の解けた音がした。
みんな喋り始める。
「やっぱ、謝ったからっスかね!!」
「もう。やめてよ」
「にしてもなんで荷物がドアの前に……?」
「俺らを恨んでいる人がいるのかもな」
「え、?…それは」
「タチズくん。本気で言ってる?」
「そ、そんなことより!もしもこの荷物がドアを開けるのを阻止してたとしたら、なんでいきなりどいたのかってのが大事でしょ!!」
「通りかかった人が退けてくれたとか」
「いやいやいや。一声かけてくれてもいいでしょ!あんなに騒いでたんだから、出れなくなってたの察しただろうし!これはやっぱ謝ったのが効いたんじゃ?」
「何言ってんのよ」
「……ねぇ、これさ、声、外に漏れると思う?」
「漏れるでしょ。急にどうしたんですか?タチズ先輩」
「いや。それにしては壁厚くない?そういうの詳しくないけど、意図的に俺たちを…殺そうとしてたなら…」
「………うーん。ここを貸してくれた人はやさしそうだったけどね」
「…これ、通行人に俺たちの存在を分からせないようにして…」
「いやいや!妄想だよ!妄想!!」
「は?…分かるでしょ。ここ、“あいつ”の故郷ですよ?」
「あっ、そっか」
「もしかしたら今も、監視されてるかも。ほら、あぁいう木と木の間から」
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怖かったですか? ちょっと、コメディっぽいなって思いながら書いてたのですが…。
おやすみなさい。
3/29/2026, 11:23:09 AM