骨折れたのでしばらく休みます
お題:sweet memories
ーなまあたたかいー(風に身をまかせ)
どうにかなってしまいそうだった。
冷たい手が、私の輪郭をなぞる。
身体が震え、呼吸は浅く。
汚れ一つ無さそうなのに、
「あぁこの人も、こういう欲があるのか」
とかいうリアルが、大っ嫌い。
人間だからしょうがないけど。
どうしても、理想と合わせてしまうから。
貴方が興奮してるとこ
とても気持ち悪いけど、それ以外は好きだから。
私は今、こんな素敵な人と付き合ってるんだぞっていう、
少し濁った幸福感。
でもだからこそきっと、私には追い風が吹いている。
人生の絶頂期。
まだ、大丈夫。
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とても眠いです。
おやすみなさい。
ーあの子ー(一年後)
どうなってるだろう。
一年後。
一緒に笑い合ったこと、あの子は忘れているだろうか。
胸が苦しいんだ。
時間なんて止まればいい。
記憶なんて、更新されなければ。
忘れたくないよ。
忘れられたくないよ。
自分だけが覚えてる。
あの子の言う、
「そんなことあった?」
が胸にくる。
覚えてないの?
あんなに笑ってたくせに。
チョコ作るのだって、手伝ってあげたじゃん。
私のこと好きだって、言ってくれたじゃん。
嘘付き。
大嫌い。
もう嫌。
…でも。
中途半端に優しくしないで。
どうせ私が離れたって追ってきてくれないくせに。
思わせぶりな態度とらないでよ。
知ってるんだから。
彼が別に好きな人いること。
だから、だからあの子を悲しませることだって、
できるんだから…。
ねぇ。
もっと気にかけてよ。
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おやすみなさい。21:13
ーともだちー(子供のままで)
「やば」
傷んだ畳の上で、胡座をかいた君がTVに映ったニュースに向かってそう言った。
「え?」
「…なんでもない」
彼はそんな一言で俺を拒絶する。
知れない君の感情を、全部分かってあげたいのに。
「……例えば本当に、みんな死んじゃったらどうする?」
「なんの話?」
突然出される意味の良く分からない問いに、俺は眉を下げる。
彼はおかしいのだ。
「……別に」
「そっか」
また拒絶された。
説明してくれれば良いのに。
体勢を少し直すと、床が小さく音をたてた。
「今日はもう解散しない?」
彼が言った。
「どうして?」
「いや……というかさ、別に毎日こなくていいよ」
「なんで」
「楽しくないでしょ。僕と話してても」
「楽しくなかったらこないけど」
「だって、話ぜんぜん合わないし」
「うーん。でも楽しいし」
「正直しんどいっていうか…。学校行ってないから親切で来てくれてるのは分かってるけど」
「確かに最初はそうだったけど、今は友達だと思ってるから」
「………言っちゃうけど、結局僕と接してるから凄いって周りに言われたいだけなんじゃないの?」
「は?何言ってんの?」
「ごめん。でも、そう思っちゃうから。耐えられない。帰って」
「…分かったよ」
なんだよ。
あいつ。
友達だと思ってたのに。
そういうところだぞ。
ほんとに。
……。
「おっ。今帰宅中?」
「帰宅中」
「今日も寄ったの?あいつの家」
「そう。喧嘩しちゃったけど」
「お前『凄いな』。まぁ…いろいろと。頑張れ」
『凄い』。
だよなー。
優しいよな。
俺。
「明日仲直りしないと」
「明日も行くの!?……友達として教えとくけど、お前影で」
明日、なに持ってこうかな。
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おやすみなさい。20:15
ーばかー(愛を叫ぶ。)
多分、知っていた。
たぶん。
私が嫌われる理由を。
それでも、嫌がられるほど近づいてしまうのだ。
……。
じめじめとした空気が、
体にまとわりつく。
汗が額に、前髪を貼り付けた。
湿度をもったそれは、襲いかかってくる。
捕まったら最後。
汗ばんだ体で、私を締め上げるのだ。
鼻息を荒くし迫るそれを、私は拒めない。
……。
クラスの人間が嫌い。
家族といたい。
知らない人と関わりたくない。
……。
「あんたって子は!!」
衝撃が走って、視界が揺れた。
頬がびりびりと痛い。
「何にもできないじゃない!部屋に戻ってなさい!!」
怒号が響く。
頬の痛みが頭蓋骨に穴を開けて、私の脳ミソを引きずり出した。
でろでろと穴から漏れている。
「……お母さんなんか、死んじゃえばいいんだ!」
次に走った衝撃が、頭蓋骨を越えて、脳ミソを潰した。
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おやすみなさい。20:21