ー自分へー(泣かないよ)
泣かないよ。
強くなるからね。
いっぱい、頑張るから。
泣かないよ。
誇れるようになるからね。
いっぱい、自慢してよ。
泣かないよ。
泣けないよ。
自分に言い聞かせなきゃいけないんだ。
泣かないよ。
手で覆って隠してあげる。
だからね、安心して泣いていいよ。
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おやすみなさい。21:23
ーけいさつはー(怖がり)
大変なものに遭ってしまった!
いや、あっちは僕のことを視認していなかったようだし、遭ったってのは変か?
とにかく!
黙って聞いてくれ、怖くて眠れそうにないんだよ!
あぁ、分かってくれるか…。
やっぱりお前は友達だよ。
他の奴らなんて鼻で笑って………。
どうせ“自分が怖い思いしたくないだけ”だろ?
ん?
あー、ごめんごめん。
話それたな。
それで実はさっき……人を引きずる影を見たんだよ。
こう、硬いコンクリートの上を、
……ズル……ズルって。
赤い液体が生々しく電柱の光に照らされてて。
……驚かないんだな。
信じてないのか。
冗談じゃないんだぞ。
警察に通報した方がいいと思うか?
………え?
……うーん…。
まぁ確かに、引きずってたのが人じゃなかったら迷惑か…。
いやでも、万が一があるし、「人じゃなかったごめんなさい」より「殺人鬼捕まえられて良かった」のほうが良くないか?
え、ごめん。
お前の意見聞くつもりがなかったわけじゃなくて…。
まさかそう言う意見が出てくるなんて思ってなかったんだ。
ごめんな。
特徴?
ってなに、そいつの特徴?
普通かな。
良くわかんなかったけど、お前みたいな感じ。
薄着だったから見えたけど、手首の辺りに切り傷?リスカの跡みたいなのがあって…。
ん?
視力良いんだよ。
視力検査Aだったの、お前に言ったじゃん。
あれ?
な、何その顔。
怖いんだけど。
……え?
…………あーあ!
よけいに怖くなったわ、話さなきゃ良かった。
俺帰るわ。
早く寝ないと明日起きれなくなるし。
なっ、なんだよ離せよ!
行かねぇよ警察なんて!
寝るつってんだろ!
おまっ、マジでやめろって、洒落にならんから!!!
いき、できなっ。
ちょ、ふざ、けんなおまえ。
いかなっ、いかねぇよっ!
けいさついかないからっ!!
は。
ゴホっ、ごほごほっ。
ん゙ん゙、げほっ゙。
はー、はー、はー……。
………俺帰るから。
……お前も気をつけろよ。
………なぁ、最近友達学校来てないけどさ。
…あれって。
…あー、なんでもない。
おやすみ。
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😐おやすみなさい。21:05
ー屋上にー(星が溢れる)
屋上。
初めて入った屋上に、自分しかいないと気がついた。
胸が躍った。
風が優しく自分を撫でる。
その日は一点の曇りもなく、溢れんばかりの星が顔を出していた。
空を見上げれば視界に入る星々。
なんて綺麗なんだろう。
ありきたりの言葉しか浮かんでこない。
もともと、あってないような語彙力が、景色に全て取り上げられてしまったようだ。
冷たい夜の空気が、寂しさと同時に入り込んでくる。
なんてことだ。
泣きそうになり、口の中をギュッと噛んだ。
最後に見るのがこれで良かった。
冷たくなった、転落防止用の柵を掴む。
それを飛び越えた時、
強い風が、髪や服を大袈裟に揺らした。
寂しさが恐怖へと変わる。
浅くしか吸えない空気を、必死に吸った。
全身が震える。
下に走る車。
駄目だ、無理なんだ。
情けない自分。
慎重に柵を掴んで、体勢を変え、車たちに背を向ける。
気が抜けた。
ふっと、安堵の息をついた。
これからはこんな馬鹿なことを、考えないようにしよう。
戻ろうと、柵に足をかけた。
その時だった。
横から突風が吹いた。
一瞬、音が聞こえなくなった。
体が不安定な時だったせいで、容易に体勢が崩れた。
ひんやりしたなにかが、体の中を駆け抜けた。
汗が出る。
体勢を立て直そうと、柵に手をかけた。
が、手汗のせいで、柵が手から逃げるように離れた。
これ、駄目なやつだ。
瞬間、浮遊感が身体を包んだ。
星が嘲笑うように、自分を取り囲んだ気がした。
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🙂おやすみなさい。20:00
ー生まれた時からー(安らかな瞳)
綺麗な目だった。
みんなと同じ黒色のはずのに、惹き込まれる魅力があった。
私が彼女を見つけたのは、中学生だった。
一人静かに過ごす彼女を見つけた時、えもいわれぬ複雑な感覚が全身を巡ったのだ。
私は彼女に話しかけるようになった。
だんだん、冗談を言える仲にもなった。
最後の冬。
中学校卒業が近づいていたある日、私は決心した。
(愛の)告白しよう。
それに混じっているのは、恋愛感情ではなかったけれど、恋人になった方が楽だと思った。
別々の高校に行くことを知っていた私は、そうでもしないと話せなくなると感じていた。
卒業式の日。
放課後に話をするつもりだった。
しかしよりにもよって彼女に、悲劇が起きた。
交通事故だと聞かされた。
朝。
引かれたのだと。
彼女の母親は、私を見つけて目の前で泣き崩れた。
「あの日娘は、今日は、特別な日だから、あなたのためにおめかしをして行くと言って」
言うべきか迷ったと言いながら、「彼女が私に恋心を抱いていた」と告げてきた。
「あなたのために、おめかしをして出ていったあの子は、いつもより遅い時間だったために、車に引かれてしまったの」
それは、私のせいだと言うことですか?
そんな言葉がよぎった。
おめかしをしたのは彼女自身だし、それで遅くなってしまったのも彼女の責任だ。
たまたま荒い運転をしていた運転手が、信号無視をして彼女に激突。
…あえて自分の罪をあげるのなら、彼女と仲良くなってしまったこと。
それは、理不尽と言うものではないか。
母親は、彼女と同じ目をしていた。
葬儀が行われた。
クラス全員参加することになった。
招待されたのだ。
青白く、血の巡りを感じられない肌は、気持ちが悪かった。
正直に、怖いと思った。
しかし彼女の目だけは、依然美しかった。
こんなに綺麗に感じたのは、初めて彼女を見たその日以来だった。
長い睫毛の向こうに、目蓋の裏側に、美しい球体が埋まっている。
花を置くとき、一瞬触れた肌は、氷のように冷たく。
私はそれでやっと、正気を取り戻した。
葬儀は滞りなく進み、ご馳走が振る舞われた。
人が亡くなったことなど忘れたように、楽しそうな空気が広がった。
心底気持ち悪い。
手を見つめていると、視線を感じ、彼女の母親と目があった。
その瞳は、彼女よりも、いや、比べるのもおこがましいくらいに。
体が震え、息がつまり、思わず唾を飲み込んだ。
どうして今まで気付けなかったのか。
視線を外すタイミングを見失った私は、暫く固まっていた。
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ごめんなさい。時間が…。
おやすみなさい。21:02
ー知らないー(ずっと隣で)
幼馴染みが、誰かと駆け落ちした。
大人たちは混乱していて、俺になにか知らなかったかと、何度も聞いてきた。
知らなかったとは言えなかった。
でも、首を横に振った。
言いたくなかった。
これは、幼馴染みのためじゃなくて、
多分、いつも威張ってる大人への仕返し。
けど、
「俺は本当は知ってるのに、お前らの日頃の行いのせいで、俺は言いたくないんだ」
って、大人たちが知らないせいで、そこまで面白くなかった。
俺は、駆け落ちすることを知っていた。
それはそう。
でも、日付は教えてもらっていなかった。
忽然といなくなった幼馴染み。
腹が立つ。
駆け落ちのための計画まで手伝ったのに、
感謝もない。
結局蚊帳の外だ。
腹が立つ。
そうだ、全てバラしてしまえば、報復になるんじゃないか?
ざまぁみろ。
連れ戻されてしまえ。
ふと、どこに向かうのかは知らないことを思い出した。
そういえば、車とか、どこから抜け出せばいいとか、そういうのばっかりで、肝心の場所は知らない。
…もしかして、俺が裏切るかもしれないって思ってたから。
いや、多分分かってたんだろう。
幼馴染みの顔が浮かぶ。
俺がこういう性格だって。
なんて奴だ。
最低最悪。
ふざけるなよ。
これじゃあ、バラすにもバラしようがないじゃないか。
それどころか、俺まで叱られる。
幼馴染みだからこそ、
相手のことを何でも分かってて信頼してるからこそ、
秘密は共有しあうものだろ?
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😐13:34 九時ちょうどにまた