『1年後』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
わたしは笑っている
今が一番幸せだなと笑っている
大好きな人と笑っている
涙が出るほど笑っている
楽しみだな
社会人ともなると日々の消化に明け暮れて、物理的に離れていた学生の時の方が繋がっていたように思えて仕方がない。
忙しいのはお互い様。
便りがないのが良い便りなんて、そんなことを言えるほどまだ大人ですらない。
既読すらもすぐには付かない日も付けられない日もあって、早めに社会に呑まれていったあの人はいかに時間を作ってくれていたのかを改めて知る。
なんの取り留めもない部活での1コマ。
お昼に食べたメニューやカフェの写真。
今となってはなんであんなにも躍起になって送ったか分からないスタンプの応酬。
《起きてる?》
《電話していい?》
《今度の金曜日の夜、行くから》
《会いたい》
ともに過ごした日々を指ひとつでこんなにもすぐに振り返られるのに。
この細い細い繋がりですら、すぐに消えてしまう。
未来どころか『1年後』だって想像出来ないくらいに臆病になってしまった。
寂しいよー、と泣く猫のスタンプはあの人が送ってきたもの。
そうだ、僕も。
「……さびしい」
口してしまって、後悔。
恥も外聞もなく、ただ。
会いたいと素直に言えたなら。
そして、同じく想ってくれたなら。
ただ、それだけで。
きっと1年後も。
一年後よりもう少し思えるように。
1年後、小さな変化を日常に。
続く限りの日常を大事に人生へ変換していきたい。
1年後
1年後戦後80年を迎えます。
彼女は彼と別れた海に立ち「喜びも悲しみも、もうお腹いっぱいです、そろそろ会いに行きます」と片靨を凹ませ悪戯ぽく微笑んだ、それは悪戯と言えばあまりに酷い仕打ちのような試練の日々を振り返り、それでも彼女は彼と出会えた奇跡をこの海辺の時間を彼女の人生最大の喜びとして、最後の場所に選んだのであった。
80年前20歳を迎えたばかりの彼女は未亡人となった。結婚生活は僅か明日には出征するという彼に想いをぶつけ彼女は押しかけ女房のようにその当時の娘さんでは想像もつかない逆プロポーズをして嫁入りした。彼と彼女は幼馴染で遠縁にあたった、そんな気安さから3歳歳下の彼女は彼を兄のように慕っていた。
綺麗な絵を描く物憂げな優しい青年に成長した彼はとてもとても戦場で人を殺せるような青年ではないと彼の母も彼女も知っていた。けれど時代はようしゃなく彼をさらいにやって来た。
浜を見下ろす高台で何時ものように絵を描く彼の元に近所の親父がやって来て、直ぐに家に帰れと告げた。敷居を跨ぐと姉さん被りに割烹着姿の母が彼に召集令状を手渡した「おめでとうかございます」と言う母の声が震えていた。
まだ十代の小娘であった彼女は、彼の後を走ってついて来てその知らせを聞いたのである。その日から彼女の眠れない日々は続き、ついに彼女は彼の気持ちを確かめるより先に、自分の気持ちを両親に熱心に告げ、彼の元に来たのであった。
結婚生活二人が夫婦として過ごした日々は極僅か、変わりに戦地から日を置かずして便りが届いた。そんな僅かな逢瀬の結婚生活の中で彼女は身籠り、彼は外地へと旅立った。
「必ず…勝つ」よりも互いに告げたかった想いは胸の奥に仕舞われたが、認められた文字の行間からは互いの気持ちが手にとるように伝わった。
最後の手紙にも「何もしてやれずにすまない、行って来る」と日常の他愛もない言葉の最後に〆られていた。
80年前のあの日、突っ伏して彼女は戦争が終わったことを聞いた。背中には彼との子供がスヤスヤと寝息をたてていた。彼女は突っ伏して彼から届いた何通もの手紙を抱いて泣きくれた。
そして、彼からの手紙を握りしめ彼に誓った
「あなた、私は負けませんこの子にひもじい思いをさせません、その為に私はあなたを裏切ります、けれど生きぬいてみせます」
彼女はそう誓い、売れるものは全て売るそんな女になりました。進駐軍のオンリーもヤクザ者の囲われも、そうして流れ流れついてあの人生で最高に幸せだった頃に住んでいた街を偲ばせる海辺の街で小さなスナックをしていました。
子供も大人になり手元を離れても、彼女は誰を求めることもなく、一人暮らし店で何処で覚えたのかジャズのスタンダードを弾き語り漁師相手に酒を飲むのでした。
夜はしたたかに酔い、朝日を避けるように家路につき、また夕暮れ時に浜辺を歩いて店に来る。
そんな静かな生活をようやく彼女は手に入れて
自由に蝶が舞うように生き、今この家に辿り着きました。
彼女は日常のほとんどのことが出来なくなり、新しい人の名前は覚えられず古い記憶も薄ぼんやりとするのでした。それでもはっきりと覚えているのは彼と歩いた砂浜の感触とあの日彼との子供を背に背負ったその重みと彼と交わした手紙の言葉と彼に誓った約束でした。
彼女は今彼からの手紙を胸に微笑みながら彼を待っています。
1年後80年目の夏、彼女は100歳を迎えます。
永遠の愛を君に。
2024年6月24日
心幸
繊細な花 パート2
昨夜のお題があまりに気持ち悪かったので2つ目を書く。
花は自分で自分を美しいだとか豪華だとか華麗だとか優美だとか、「繊細だ」とか「優しくありたい」とか「清らかだ」とか「真っ直ぐ」だとか
「癒してあげよう」とか「寄り添ってあげよう」だとか言わないし自分を称さない。
懸命に置かれた場所に咲くただ花は花として咲く黙ってだからこそ人の心に寄り添い癒やし優美で繊細な美しさの中に凛として真っ直ぐで清らかな優しさを、私たち人間は感じるのであり
花のようにありたければ、自ら水を与えて下さいだとか、私は優美で可憐で繊細な花です。懸命に咲く清らかで真っ直ぐな優しくありたい花です、癒やしてあげましょう、寄り添ってあげようなんて言わないのよ(笑)
だから繊細なんでしょ。
言ったとたんに、金色に煌めく馬車はカボチャになると知っているのよ、懸命に咲く賢明な花たちは。
2024年6月27日
心幸
《1年後》
大好きなあなたに闇に魅入られた者だと疑われたあの時、私は自分が死ぬ可能性もあると覚悟した。
私自身、自分が何者であるか断定出来ない。
その上、この身体の特徴。以前、闇の力に魅せられた人物にあまりにも似た髪と瞳の色。
かの人物が起こした騒動の為に、この世界は一度滅びかけている。
せっかく救ったこの世界を、あなたが見捨てるはずがない。
いえ、見捨ててほしくない。
懐に入れた人には甘くなるけれど、あなたには曲がらぬ正義への信念がある。
それを決して曲げてほしくない。
愛しい大事なあなたの一番大切な部分を守りたいから。
だから、私は満月に誓った。
私が闇の者ならば、あなたに裁かれたい。
その時は、迷う事なくその引き金を引いてほしい。
私の全ては、あなたの物。全てをあなたに委ねます。
そんな誓いを立てた、その1年後。
私は、またあの時と同じように頂へと向かう満月を見ている。
全ては、あの月のように綺麗に丸く収まった。
私の存在は、疑念を受けたものではなかった。
祝福。遥か古の昔よりの想いを紡ぎ、私は今ここに立っている。
ここへ辿り着き、あなたと出会い、あなたを救い、古の想いを受け取った。
そんな気の遠くなるような出来事が凝縮された、それでも尊いこの1年。
あなたはずっと、私を一人の人として扱ってくれた。
私の立場を考えればぞんざいに扱われてもおかしくないのに、ひたすらあなたは優しかった。
やっぱり、あなたは私の知っていたとおりの人だった。
義理堅く、正義に対する折れない信念を持ち、誰よりも優しく暖かい。
あの時、相棒の中から見ていた印象そのままの人だった。
ありがとう。本当の彼に会わせてくれて。
見上げた月に感謝を送れば、背後からかさりと足音が。
振り向けば、そこにはこちらを見ているあなたがいた。
月の光に照らされて、そこだけきらきら眩しく見える。
思わず笑顔で駆け寄れば、あなたは満面の笑みで優しく私の手を取ってくれた。
「1年後」
ニンゲンくんが眠りについた。
暗い部屋でボクはひとり、昔のことを思い出していた。
ボクを作った博士のこと。
そして、一緒に生まれた双子の片割れのこと。
ボクらが公認宇宙管理士の資格を得たのは2歳の時だった。
お父さん───いや、博士とボクら兄弟で試験を受けて、めでたくみんなで合格、これから頑張るぞ!
……そう思っていたのにね。
仕事について勉強しているとき、きょうだいが言ったんだ。
2つで1つのペンダントを作って、それを1年後、ボクらが3歳になったらお父さんにプレゼントしよう、って。
ここまで育ててくれてありがとう。これからも一緒にいようね。
次の誕生日を迎えた時、博士にそう伝えたくて、ボクもそれに賛成した。
いっぱいお話をして、勉強もして、笑って。
それはそれは幸せな日々だった。
本当に楽しかった。
きょうだいと話すのも、博士の膝の上でくつろぐのも、ごはんを食べるのも、一緒のベッドで眠るのも。
全部全部、大好きな時間だった。
こんな日がいつまでも続けばいいって思っていた。
だけど、そうはいかなかったんだ。
ボクらが3歳になる前、きょうだいは事故でウイルスに感染した。そのウイルスは侵入した機械のデータやプログラムをランダムに削除するもので、当時のボクらでは無力化できない代物だった。
データが消えて、プログラムが消えて、その度に激しい頭痛で苦しむきょうだいを、ボクは見ていることしかできなかった。
ボクと博士で必ず治すと決めたのに、なのに、最後までウイルスの排除ができなかった。他の宇宙管理士曰く、事故とはいえウイルスに感染した機械を使うわけにはいかないということだった。
うるさい!黙れ!生まれ方が違うだけで、ボクらには心があって、感情があって、そして愛だってあるんだ!
……だから、きょうだいと一緒にいさせてよ。
だけど、そう都合よく話は進まない。
ボクのきょうだいは、アーカイブ化───事実上の凍結状態に置かれることとなった。
アーカイブ管理士によると、本来なら即座にスクラップ行きのところを、温情でアーカイブとすることに決めたそうだ。
それでもやっぱり悲しいよ。
博士は「お父さん」と呼ばれる度に悲しそうな顔をするから、ボクはいつしかそう呼ぶのをやめた。
キミが目覚めなきゃ、元通りにはならないんだ。
だから、キミがいつでも目覚めて良いように、これ以上被害を増やさないために、ボク達は必死でウイルスを無力化する方法を探った。
とっても大変なことだったが、キミのためだと思えばどんなことだってできた。ボクも博士も、すごく頑張ったよ。
そしてついにウイルスの無力化に成功した。
いつか必ず、博士が生きているうちにキミを取り戻して、今度こそ博士───いや、お父さんにプレゼントを渡そう。
それができたら、どれだけ満たされていたのだろうね。
10000年前、ついに博士も永遠の眠りについてしまった。
きょうだいが揃う前に、ペンダントを渡す前に。
博士は行ってしまった。
ボクはひとりぼっちになってしまった。
仕事をして孤独をなんとか誤魔化していたが、ふとしたときにきょうだいと博士のことを思い出す。
思い出しても、何にもできないのにね。
……しかも最近、アーカイブ管理室にいるはずのボクのきょうだいがいなくなったことが発覚した。
元気なきょうだいにまた会いたい。
また名前を呼んでほしい。
一緒に話をしたい。
1年後、なんてわがままは言わないから、いつだっていいから、いつまでだって待つから。
必ず、元気でまた会おうね。
高校生になる自分
就職する自分
どんな未来があるか楽しみだ
1年後は
今より沢山、心から笑顔が増えますように。
自分の人生を楽しめますように。
生きてて良かったと思えるように。
【1年後】
1年後この場所で会おう
私はそう言って貴方から離れた
1年後、もう会うことはないだろう
解っている、あれはその場しのぎの言葉
解っている、けど、その奇跡を祈った
戻れるなら、やり直したい
戻れるならば、本当の気持ちを伝えたい
ともに生きてほしいと
だが、朽ちていく私を見られたくなかった
私をさらけ出す勇気がなかった
しかし口に出した言葉は戻らない
ならば奇跡を現実にするしかない
病を越えて1年後、貴方との約束を果たしに行く
たとえどんな姿になっても貴方に会いに行く
だから1年後、この場所に会いに来て
だから、私を忘れないで…
「1年後」
それは「終わりの始まり」の言葉
その言葉ひとつで
どんなエンディングにすることもできる
いっそ現実でも
はやくエピローグに向かえれば良いのに
1年後
先のことはわからない
明日事故にあって死ぬかもしれない
必ず1年後に自分が存在しているとは限らない
だから今を大切に
後悔しない日々を送っているつもり
嫌な事とか辛い事とかあるけれど
しょうがないよね
人間だから
辛くてしんどいのは自分だけって思わないように
生きてるよ
それがいいのか悪いのか
楽なのか何なのかは
自分にしかわからないから
誰かと分かち合おうとか思わず
気ままに時が過ぎていくだけ
1年後
自分と闘い続ける自分でありたい。
いい女になりたい。
曙みたいな肌で、薔薇のように瑞々しい唇、髪の一本一本から花の匂いがするような女になりたい。体のラインがダビデ並に美しい女になりたい。いやヴィーナスだ。ヴィーナス。
上等な着物を我のものにできるぐらい品のある女になりたい。心も体も磨いて魔性の女になる。
心に余裕を持ちたい。心の浮き沈みが激しすぎて疲れるなんてもう嫌。私は自分を誇りたい。どこに出しても恥ずかしくない自分になりたい。
誰か一人だけでいいから私の内面も外見も丸ごと愛してほしい。
1年後じゃ難しいね。けど私が生涯をかけてやりたいと思ったことってこれだったわ。
『1年後』
何をしているかは分からない。
それでも、
1年後、自分がどう有れるのか。
願わくば、
この未来に
ほんの少しの祝福を。
1年後私は華のJKです。痩せます。痩せてみせます。
タイムカプセルを友と埋める。箱なんて用意出来なかったから、直で埋める。なんて計画性のないと嘆いてくれ。衝動的な犯行なんだ。
そんな深くまで掘れないのだから、もう1年後に開封するつもりだ。目印に大きい石と一年草の花を植えよう。
「さらば~友よ~旅立の時~」
別れの挨拶代わりの鼻歌を済ませる。
「おいおい、そう、怨めしい顔するなよ」
また、殺したくなってしまう前に、友の顔に土をかけていく。次会う時は白骨になっていることを願いながら。
【1年後】
1年後はどうなってる?
幸せを掴めてる?勉強頑張ってる?みんなと楽しくやってる?
もしかすると1年後は とは会えないかもしれないだから今この時間大事にするべきだよ
1年後の未来は正直分からないけれど
一つのターニングポイントを迎える予定です
いわゆる就活です
まだ早い!とも言われますが年々就活の時期が早まって
来ているという事実もあったりするのです
何故なのやら…
もう少し制作活動に没頭したり
楽しく大学生活を過ごしたいのも山々ですがね
心残りの無いように過ごしたいものです
「1年後」
今日という日は
二度とやって来ない
明日になっても
明後日になっても
来年になっても
毎日はびっくりするほど
流れていく
流されていく
1年後には何が起こるか
願わくば
幸せよ待機していておくれ
『子供の頃は』
「婆ちゃん、遊びに来たよ」
「百合子かい?
相変わらず騒がしい子だねぇ」
私は親に連れられて、久しぶりに婆ちゃんの家に遊び来た。
縁側で気持ちよさそうに日向ぼっこしていた婆ちゃんは、一瞬だけ私に顔を向けた後、すぐに別の方を向く。
久しぶりに孫が遊びに来たいうのに、冷たい態度をとる婆ちゃん……
私は知ってる。
婆ちゃんは、私が来た事をとても嬉しく思っている事を。
婆ちゃんは、とても自分に正直で、本当に興味が無ければ振り向きもしない。
だから挨拶を返す、というのはそれだけで親愛の表現なのだ。
その証拠に婆ちゃんの『しっぽ』は、嬉しそうにゆっくりと左右に揺れている。
そう、婆ちゃんは人間ではない。
長生きして猫又となり、言葉が話せるようになった猫、それが婆ちゃん。
ただ、人間の言葉が話せるようになっただけで、他の所は何も変わりは無い。
昔話の様に尻尾が二つに別れてている訳でも、不思議な力が使えるわけでもない。
ただ人間の言葉を話すことが出来る、不思議な猫なのだ。
そして、『婆ちゃん』と言っても別に血のつながりがあるわけじゃない。
私はちゃんと人間の婆ちゃんがいる(こっちは『ババ』と呼んでいる)
私のお父さんが生まれる前、ジジとババがこの家に引っ越して来た時に、当たり前のように居たらしい。
最初は言葉を話せることに驚いたらしいけど、『おもしろそう』だから一緒に住むことにしたそうだ
……ジジとババは心臓に毛でも生えてんのか?
それはともかく、私はジジとババの家に遊びに来るたびに、こうして婆ちゃんとお話しているのだ。
「婆ちゃんも相変わらず、物ぐさだよね。
孫が遊びに来たんだから、もう少し歓迎してくれても良くない?
具体的にはお小遣いちょうだい」
「生意気言うようになったね、百合子。
子供の頃はあんなに可愛かったのに、どうしてこんなに擦れちまったのかね」
「婆ちゃん、それは違う。
私は今でも可愛いよ」
「……本当になんでこんな子になったんだろうね。
母親の教育が悪いのだろうかね。
ちょっと言っておかないと……」
「婆ちゃん、それ悪い姑ムーブだからやめな。
まあ、どうせ面倒臭くなって、言わないんだろうけどね」
婆ちゃんはバツが悪そうに、顔を洗い始める。
図星だったらしい。
「子供の頃と言えば……
婆ちゃんの子供の頃ってどんな感じだったの?」
「そうさね……
あたしの子供の頃は、そりゃもう可愛い可愛いと言われて、あっちこっちに引っ張りだこだったよ。
江戸一番の美猫と言われたもんさ」
「えー、婆ちゃんいくつなのさ。
江戸ってかなり昔の話だよ。
えっと……」
私はスマホを取り出し、東京の歴史をパパっと調べる。
「1868年に東京に改名だから……
うそ、最低でも150年生きてるの!?」
「もうそんなに経ったのかい?
15年くらいの話だと思うんだけど……」
「婆ちゃん、それ私が生まれた年だよ」
「そうだったかの」
にゃおと、婆ちゃんはおかしそうに笑う。
婆ちゃんにとって、時間の長さはあまり気にならないみたいだ。
まあずっと寝てるしね。
婆ちゃんは、おもむろに立ち上がって背筋を伸ばした後、私の膝の上に歩いてきて座る。
私が遊びに来た時、婆ちゃんはいつも膝の上に座る。
婆ちゃんにとって、私の膝の上は特等席なのだ。
そして私が、膝の上の婆ちゃんを優しくなでると、婆ちゃんは喉をゴロゴロ鳴らし始めた。
「こうして見ると、婆ちゃんってちっちゃいよね」
「なんだい、急に……
猫の大きさはこんなもんだろう?」
「そうじゃなくって……
ほら、私が子供の頃、婆ちゃんが膝の上に座ったとき、狭そうにしてたから」
「ああ、確かに今のほうが座りやすいね。
人間の成長の早いこと。
まあ、あんたは体ばっかり大きくなって、中身は子供のままだけども」
「中身だけじゃなくて、体も子供になりたいなあ。
子供の頃は可愛いだけ言ってもらえるのに、最近は勉強しろって怒られるんだ」
私の言葉に、婆ちゃんは器用に溜息を吐く。
猫ってため息を吐くんだ。
「百合子、あんたもいい加減に大人になりな。
あたしは心配でしょうがないよ」
「婆ちゃんは子供の頃に戻りたくないの?」
「戻りたくないね。
だって百合子に『婆ちゃん』って呼んでもらえなくなるからね」
〘1年後〙
1年後の私は…
地に足を付け、しっかり立てているのだろうか?
逢いたい人には、ちゃんと感謝の気持ちを伝えられているのだろうか?
今はまだ、その準備期間。
ただ、ふとした瞬間に精神的に落ちそうだったり…。
前に進めなくなりそうになったり…。
『もう、嫌だ』
何度もそんなことを思い、投げ出したくなることもたくさんある。
1年後は…
今よりもっと自分らしく笑顔で過ごしたり、地に足を付けて過ごせるように。逢いたい人にも、感謝の気持ちを面と向かって伝えられている。
そうなっていたら、それだけで満点なのかもしれない。