『1つだけ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
目の前の人物は言った。
「人生に悔いはあるか」
悔い、か。
悔いなら一つだけならある。
「あるって言ったら生き返らせてくれるのか」
目の前の人物は淡々と言った。
「いいや、一度死んだ者を生き返らせる能力は私には無い」
「じゃあなんで聞くんだよ。この質問に何の意味がある?」
ふっ、と笑って
「意味など無い。ただの個人的な質問だ。人間はどんな後悔を持って死んだか興味があるだけだ。持ってない人間もたまにいるがな」
答えを聞いて、目の前の人物が人型を模したただの物体のように思えてきた。
「そーかよ」
「それでどんな悔いを持っているんだ?」
「…あるとは言ってない」
「そうか、ならば行け。そこの扉の向こうにお前の望むものがある」
示された扉のドアノブに手を掛ける。
「……中学生のとき仲が良かった奴がいじめられて、自分までいじめられたくなくていじめに加担していたんだ。自分を守るためで自分は悪くないと思ってた。でもある日そいつは自殺した。自殺したそいつの墓参りに一度も行かなかったことが俺の一つだけの悔いだ」
ガチャリとドアを開けた。
『死んだその後』
どうしてこんな目に合わなくちゃならんのか
どうしてこんな苦しみを抱えなくちゃならんのだ
どうしてこんなふうに生まれてしまったのか
どうしてこんな
優しい家族に面倒かけなければ
俺は生きていかれんのだ
どうしてこんな有様で
俺はまだ生きている?
どうしてこんな生だと云うのに
俺は“生きる”ことにしがみつく
どうして
どうして
どうして
どうしたら此処から抜け出せる
どうしたら痛みに喘ぎ怯えなくて済む
どうしたら汗みずくで飛び起きる夜が無くなる
どうしたら家族は“お荷物”を抱えなくて済む
どうしたら俺は家族へ縋ることを辞められる!
俺は弱い
生きることがこんなにも苦しい癖に
死ぬことすら出来ぬ
こんなにも恵まれているのに
みっともなく喚くばかりだ
未練を捨てられない
情を捨てられない
希望を捨てられない!!
恨めしい
恨めしいよ
この世も、病も、弱い身体も、弱い心も
なにより、其れを良しとするもう一人の俺が
布団で背を丸めて
頭だけが動いている
俺は業突く張りだから
あれもこれも全部欲しいし
幾ら諭されたって
愚かな真似を辞められない
けれど、けれども
一番欲しいものは
もしもひとつだけ、
それをお前にやろうと言われたのなら
あの優しい人達を
どうか幸せにして欲しいと
他力本願に願うんだろう
そう願う己に酔いながら
「1つだけ」
もし、1つだけ願いが叶うなら
急に私の傍からいなくなった君に
もう一度会いたい
1つだけと言われると困ってしまう。
悩んで悩んで、1つを選べることもあるけど、0を選ぶこともままある。
悩むことに疲れて、選択肢を与えられたこと自体をなくしてしまいたくなる。何もなかったことにする。
端から見ると損な性分だけれど、自分では最適解だと思っている。悩みごとだって最初からない方が幸せだから。
「夢って見ます?」
いつもと同じ声のトーンで突然の問い
「僕はあまり見ないですね、よく見るんですか」
「私もあんまり見ないですけど、昨日は何だか変な夢を見て...」
彼女は少し俯いて、耳にかけていた髪の束がサラリと頬を撫でた
「変な夢、ですか」
「そうなんです...、笑わないでくださいよ?
...1つだけ願いが叶いますって書かれた葉書が届く夢で、
その余白に願い事を書いて返信すれば叶うって」
真っ直ぐな瞳で僕を見る
「へえ、面白い夢ですね。それで何と書いて送ったんですか」
「それが、夢の中の私ったら、───」
、────
ピピ...ピ...
目覚ましの音が聞こえた
まだ瞼の裏に夢の中の彼女の残像が見える
夢か......
何を願い事にしたのか分からずじまいだな...
1つだけ願いが叶う葉書か...それなら僕は、
【1つだけ】
「この中で1つだけ人生を選べ。」
そう言われて私はこの世に生を受けたのであろうか。
私は日頃から運命はすでに決まっている説を唱えている。
ついぞ芦田愛菜ちゃんも同様のことを語っており、私の考えは随分と“高尚”なのだなと感じたほどであった。
つまり決まりきった人生を私は歩んでいる。
明日何をしようかなど私の意思が存在しているようで、それはすでに決まった一手なのである。
私が今にもこうして“私は生きている価値があるのだろうか”と悲壮の意に煩悶としていることすらも、既に決められていることなのだ。
ただひたすらに生を享受しているが、何の考えもなくダラダラと日々を消費している私は、なぜ今の人生を選んだのだろう。
もっと愉快で、快活で、世の中の価値そのものである生き方を選ぶべきだったのに。
ある一定の時間を越すと、この考えは打ち消される。
人とは何とも間抜けである。
ただぐるぐると同じ思考を反芻することに意味はないが、私はこの無意味な脳の運動に踊らされている。
「はぁ、苦しみのないところに行きたいな。」と呟くも、苦しみのないところは脳の機能が停止した先、つまりは死を意味する。
死にたくはないので瞑想を試みるが、脳は快活にマイナス思考を呼び起こす。
私の脳は賢くないのにどうやら心配性であるようだ。
瞑想でこの脳の運動を止めることができればどれほど幸福だろう。
脳みそごと誰かと取り替えてやりたい具合である。
くどくどと書き記したが、私は私であり、馬鹿みたいな劣等感すらも抱えて生きねばならぬのだ。
自分のことだけを考えて生きていられない今時分であるから、己の自己中心さにあきれ、他人への関心のなさに辟易とする。
それでも生きていられるのだから、有り難く生を全うでもする次第である。
「一つだけ」
もし一つだけ願いが叶うのなら、何を願うだろう。
欲望、嫉妬、、、。それを叶うためなら何でもする。そういう人は沢山いると思う。自分もその1人だと思う。けど、もし叶ったら、その後自分に残るものはなんだろう。
何を願うのが正解なんだろう。
「1つだけ」
神様 1つだけ願いが叶うとしたら
私に多大なる富をください
大好きなあの子を幸せにできるほどの
たくさんのお金をください
神様 1つだけ願いが叶うとしたら
私を素敵な容姿にしてください
あの子がときめくほどの
素敵な美貌をください
神様 1つだけ願いが叶うとしたら
私になにか才をください
誰にも負けないような
確固たる才をください
皆の願いに触れていくたび
自分が望むものがわからなくなる
何を望めば
何が手に入れば
あの子は私に振り向いてくれるのだろうか
あの子を幸せにできるのだろうか
私の、大切な物は1つ友情よ
友情とは、生涯3番目に必要なものであるから
2024 4/3(水)
黒い記憶を忘れるような薔薇色の幸せを
ひとつだけでいいから頂戴
#5 1つだけ
一番を決めないずるさ 雨の夜 舌のかたちにへこむ指さき
[1つだけ]
まだ名前を決められない。
だけれどここでは、それを強要されない。
アバターがどうとか言われることもない。
書き込みに対して攻撃されることもない。
年も性別もなくリアルではとても書けない文章。
短歌が好きだから、下手だけどお題で一つ作りたいと思ってる。
読んでくれてありがとう。
欲張った
本能のままに動いた
だけど結局手放した
イラナイモノバカリダッタ
それもそのはず
その場だけだった
惨めだよな
だけど今はさ
一つだけ残してる
大切な人という一輪の花を
食事に誘う
楽しそうな君
映画に誘う
満足そうな笑顔
そんな一つだけを大切にしてる
ボクはたくさんの友達がいる
みんなみんな大切だ
もし誰か1人と遊ぶならと
聞かれたら答えられない
けれどボクの体はひとつだけだ
そんなボクはキミが好きだ
ボクが向けるこの愛をどうか受け取って欲しい
1つだけ
あと1つだけ
何度目か
つい手が伸びる
お高めのチョコ
お題☆1つだけ
❋1つだけ❋
1つだけ願いが叶うなら 貴方が蘇る事を願うよ
貴方と やりたかった事が沢山あるから
貴方と やれなかった事が沢山あるから
バッドエンドをハッピーエンドに変えたいから
「何か1つだけあげる」って貴方に言われたら。
私は迷いなく言うよ。
「あなたが欲しい」
好きを一つだけ選んでって言われたら絶対選べない。友愛恋愛家族愛…種類は問わないけど好きな人だっているし、好きな食べ物も好きな趣味もある。好きな場所もある。好きな番組とかコンテンツがあって、好きな推しもいるし。皆んなそうやってたくさんの好きをエネルギーにして生きてるんだね。偉いね。
わたしが誕生日を迎えた日には、必ず一人で遠足に行くことにしている。場所はどこでもいい――近場の山でも、車で二時間ほど向かった先にある神秘的な沼でも。お気に入りの水筒と、一つだけ選んだ百円以下の菓子を鞄に入れて、ぼぅっと自然を眺めながら歩くのだ。
今日は二十七回目の誕生日。四月十八日。
わたしは車で三十分ほどの人気のない湖に行き、堤防に腰掛けて七十二円のドーナツを口にする。
心に沁みるような青空。足元から響く波の音。舌に広がる甘いチョコレートのドーナツ。首元を撫でる優しい風。水筒の蓋を開けようと、だらしなく食べかけのドーナツを口にくわえた瞬間だった。
ドーナツが落ちて、ぽちゃん、と音をたてて水の中に沈んでしまった。しまった、落としてしまった――。
思わず「あぁ」と情けない声が漏れる。まだ半分しか食べていなかったのに、と恨めしく水面を睨んでいると、急に足元から「う、美味い!」と男の子の声が聞こえた。
ぎょっとして堤防から離れようとした瞬間、誰かがわたしの足首を掴んだ。力強く冷たい手に、ぐん、と身体が水面に引っ張られる。
落ちる!
1つだけ、願いを聞いてほしいの。
私とこれからも一緒にいてほしいの。
なんて言えたらいいのに。
一つだけ
僕は“死にたい”と思い、ビルから飛び降りた
この高さなら間違いなく死ねると思っていた
でも結局、死ねなかった
「奇跡だ」「なんでこんなことをしたの」
重度の骨折で終わった僕を見下ろして、
両親と医者から言葉という名の酸性雨が浴びせられる
それらは僕の心の傷を悪化させるだけだった
喜ばないで、問い詰めないで、慰めないで…
僕は“死にたい”というよりも
“消えたい”のかもしれない
僕を知る全ての人の記憶から
おとぎ話の世界のように、魔神というものがいて
願いを叶えてくれるのだとしたら
僕は間違いなくこう答えるだろう
「ただ一つでいい、消えさせてくれ」と